« 2018年10月 | トップページ

2018年11月26日 (月)

『十字架の道行き』から考察する「Shadow of the Tomb Raider」

 【注意】この記事には大量のネタバレが含まれています!

「Shadow of the Tomb Raider」で個人的に非常に気に入っているのが、ストーリーの後半で待ち受けている
サンフアン教会の地下に広がる『十字架の道行き』をモチーフにした大掛かりな仕掛けです。
ただ、キリスト教に馴染みのない多くの日本人プレイヤーがこの仕掛けを理解するのに苦しんでいた様子。

今回はこの『十字架の道行き』を解説してから、ストーリーとの関連についての考察を書いていこうと思います。
すでにクリアしてしまった人でもそれなりにおもしろく読めると思うので、ぜひお付き合いください。


Via Crucis

『十字架の道行き』とは、キリストの受難を順番に描いた一連の絵画やレリーフのことを言います。

かつては実際にその道行きを巡礼していたそうですが、絵画やレリーフが各地の教会内に展示されるようになり
それらの前で受難に思いを寄せ、黙想する、言わば簡易的な巡礼として利用されるようになったそうです。
サンフアン教会の地下ではこの『道行き』を行動で追体験していくことになります。

『十字架の道行き』のひとつひとつの行程を『留』と呼びます。
16世紀以前の『十字架の道行き』は7つの『留』で構成されていました(ララいわく「1600年以前は7つ」)。

T・セラーノの日誌によると、アンドレス・ロペスら宣教師の一行がパイティティにたどり着いたのは1603年11月。
翌年12月18日、パイティティの西に教会が完成。続いて図書館(書庫)の建設に着手します。
厳密に言えば17世紀に踏み込んでいますが、このころはまだ新たな様式へ移行していなかったのでしょう。

17世紀以降は『留』が14まで増え、これが一般的なものとして現在まで伝わっています。

余談ですが、アンドレス・ロペスはローマのイエズス会の資料にも名前が残っている実在した人物です。
パイティティに関する報告書を残しており、これをもとに調査がおこなわれたこともあったのだとか。
イエズス会には陰謀論などオカルトめいた噂がいくつもあるそうで、そのあたりの知識を踏まえてプレイすると
「Shadow of the Tomb Raider」をより楽しめそうな気がします。



 ※各『留』に併記しているのはスペイン語表記。ジョナがくれたパンフレットからの引用。

【第1留】 イエスは十字架を引き受けた(Jesus carge con la cruz)

Sottr20

書庫の奥に描かれたキリストの壁画の裏に、17世紀ごろに作られたと見られる大きな十字架が隠されている。
十字架をかけることで地下への扉が開く。この動作を含めて第1留であると解釈できる。

この壁画はララの手で取り除かれてしまうため、興味がある人は作業をはじめる前にじっくり観察しておこう。
よく見ると壁画のキリストの頭上には『INRI』と書かれている。
『INRI』とは、「Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum(ユダヤ人の王、ナザレのイエス)」の略である。



【第2留】 イエス、初めて倒れる(Jesus cae por primera ves)

Sottr21

地下に降りた際、思わずころんでしまうジョナ。通る者を跪かせることで第2留を成立させていると思われる。
降り注ぐ光には十字の影。ララが十字架を背負って倒れているように見える。

ここでジョナが読み上げる碑文、「Ambulate dum lucem habetis(光のあるうちに歩め)」はラテン語。
続けてララが「暗闇に追いつかれないよう、光のあるうちに歩め」と付け加える。
どちらもヨハネによる福音書12章35節からの引用。サンフアン教会のサンフアン(San Juan)とは聖ヨハネのこと。
ひょっとしてジョナという名前もヨハネが由来だったりするのだろうか?



【第3留】 イエス、母に会う(Jesus encuentra a su madre)

Sottr22

文字どおり、マリア像が建てられている部屋。
長年堆積したホコリによってマリア像の光背(鏡)が曇ってしまっている。
続く第4留の内容からすると、この光背を拭わせるところまで意図して設計された可能性がある。

第3留へ来る途中、ジョナが「十字架の向こうに頭を飛ばされたくない」という意味ありげな発言をするのだが
調査不足か、いまのところ真意はよくわかっていない。洗礼者ヨハネとサロメの逸話だろうか…?



【第4留】 ベロニカ、イエスの顔を拭う(Veronica enjuga el rosto de Jesus)

Sottr23

聖ヴェロニカ(ベロニカ)は聖顔布のエピソードで知られるカトリックの聖人。
キリストの顔を拭いた際、その顔が布に写し取られたという。驚異のクレンジング能力をもった布である(不敬)。

外典においてヴェロニカは、12年ものあいだ不治の病に苦しみ続ける女性として描かれている。
新生三部作のララは9歳で母を亡くし、初めての冒険(邪馬台国の一件)のときは21歳だった。
その間12年。癒えることのない心の闇に苛まれ続けたララの境遇はヴェロニカとやや重なるところがある。

4枚あるフレスコ画のうち、女性(ベロニカ)が描かれているものが正解。光を照らして先へ進む。
最初にララが触れた場所と遺体が刺さっている場所はあらかじめ除くことができるので、選択肢は実質2つ。
正解を選んだ時点でララが「こうね」とつぶやくので、ヒントがなくても突破できてしまう。



【第5留】 イエス、ふたたび倒れる(Jesus cae por segunda ves)

Sottr24

第2留に続き、ふたたびころんでしまうジョナ。今回は2度目ということもあってかララも一緒にころぶ。
正面に見える光が十字をかたどっており、サンフアン教会のなかでも印象的な場面となっている。

ここでは特に書くことがないので少し脱線するが、書庫以降のチャプターのタイトルは「道と真理」となっており
英語版ではここだけ英語ではなく、「Via Veritas」とラテン語で表記されている。
これはヨハネによる福音書14章6節からの引用で、本来は「Via Veritas Vita」と3つの単語で構成される。
「道と真理と人生」を意味するこのフレーズは教育機関や政府のモットーとしてしばしば使われる。



【第6留】 イエス、十字架にかけられる(Jesus es clavado en la cruz)

Sottr25

広い礼拝堂にミイラを用いた模型が左右に3つずつ、合計6つ飾られている。
この部屋全体で第6留なので、十字架にかけられる様子を再現しているものを左右から1つずつ選ぼう。
(「6つの模型から第6留と第7留を選ぶ」と勘違いするプレイヤーが結構多い)

この部屋でジョナが「肉体は殺せても、魂を殺すことのできない者を恐れてはならない」とつぶやく。
(英語版では先に「that inscription」と言っており、これも碑文を読み上げていることがわかる)
マタイによる福音書10章28節からの引用で、「魂を殺すことのできない者」とは使徒を弾圧する人々のこと。
くじけない信念をもつふたりにふさわしい表現だと思う。本当に恐れるべきは魂をも滅ぼすことのできる存在だ。
(続けて「俺たちのことか?」と聞いているが、英語版の「is that meant for us?」の訳として適切か?)

ちなみにイージーだと、ローマ兵が釘を打ち付けている様子であるという説明をララから聞くことができる。



【第7留】 イエス、埋葬される(Jesus es dejado en un sepulcro)

Sottr26

すべての仕掛けを突破した先にアンドレス・ロペスの遺体が埋葬されている。
ロペスは最後に自分自身を埋葬することで、残りの第7留を完成させたことになる。

ロペスの遺体の背後に書かれている「Tantum manus accipiat Fatum Iustum meus ab」はラテン語。
「正しき者の手のみが、我が手から定めを手にすることができる」とララが読み上げる。
(英語版は「Only the hands of the Righteous One may seize destiny from mine」)
これもなにかの引用かと思って調べたが、該当しそうな文章が見つからなかった。

みずからをアンヘル・デ・ラ・クルス(十字架の天使)と呼び始めたロペス。
アンヘル・デ・ラ・クルスという名前はスペインではさほど珍しくないようだが、この名前を自称するあたりに
ロペスの高揚や倒錯、独善的な側面がうかがえる…ような気がする。間違った解釈かもしれない。

第7留は英語では「Jesus is laid in the Tomb」と表記される。キリストはトゥームにレイドされたのだ。



で…ここからが本題なんですけど(前置きが長すぎる)、「Shadow of the Tomb Raider」のメインストーリーって
この『十字架の道行き』をなぞって書かれたものなのでは?と、調べていて思ったんですよね。


Sottr27

ストーリーで起きた出来事を『留』として考えると、以下のように分けられます。

 ①鍵の短剣を手に入れ、浄罪がはじまる
 ②鍵の短剣をドミンゲス博士に奪われる
 ③過去の回想(亡き母・アメリアの思い出)
 ④アビーやウヌラトゥと出会い、助力を得る
 ⑤銀の箱をドミンゲス博士に奪われる
 ⑥ウヌラトゥの代役として、みずから生贄となる
 ⑦トゥームで最後(最期?)を迎える

ちょっと強引なところもありますが、それほど無理のある解釈でもないと思います。
罪をみずから背負い、女性の支援があり、2回のつまずきを経て、己を犠牲とする定めを受け入れる。
16世紀以前の7つの『留』にピッタリ当てはまるんですよね。

実際のところはスタッフにでも確認しないとわかりませんが、ひとつの考察としてはおもしろいのではないかと。
というか、そういうふうに捉えてプレイしたほうがストーリーに深みを感じられてよいと思います。



【オマケ】 サンフアン教会の書庫に隠されている壁画の解説

Sottr28

「太陽は暗くなり、月は光を放たず」
マルコによる福音書13章24節からの引用。壁画では前後がやや切れている。ラテン語の全文は以下のとおり。
「sed in illis diebus post tribulationem illam sol contenebrabitur et luna non dabit splendorem suum」


Sottr29

「その翼の下にかばってくださる」
詩篇91章4節からの引用。壁画には一部しか記されていない。ラテン語の全文は以下のとおり。
「Scapulis suis obumbrabit tibi, et sub pennis ejus sperabis. in decacordo psalterio cum cantico in cithara」

このふたつの引用をもって『サギと日食』を表している。
ちなみにサギには「雨を呼ぶ鳥」という言い伝えがあり、イシュ・チェルやチャク・チェルの特徴とも結びつく。



「Shadow of the Tomb Raider」には前作のようなチャプターリプレイモードがなく、サンフアン教会の部分だけを
ふたたびプレイするというようなことができないため、今回の記事のためにもう1周しました(笑)
都合4周くらいしてる計算になるんじゃないかな…確実に定価を取り戻せるくらいはプレイしていると思います。

しかし、何周してもメインストーリーはアレですね。問題点が随所にあって気になって仕方がない。
今回のララ・クロフトは水に落ちすぎ。この記事で紹介した『十字架の道行き』の最後でも水に落ちますしね。


移動経路として水場や水中が多いのは、マヤ文明とセノーテの密接な関係から来ていると考えられます。

セノーテとは、陥没した大穴に水が溜まり泉となったもの。隣接する鍾乳洞にも水が流れ込み、水没しています。
巡礼や崇拝の対象、供物を捧げる場所とされているものもあるのだとか。

今回の冒険でララとジョナが最初に訪れるメキシコのコスメル島は、セノーテの存在で知られる観光地でもあり
コスメルという地名もマヤ語が由来であるなど、本作の冒頭を飾るにふさわしい土地だったのです。
コスメル島はイシュ・チェルの聖地でもありまして、このへんも調べるとおもしろい情報がたくさん出てきます。

| | コメント (0)

2018年11月19日 (月)

ゲームレビュー 「Shadow of the Tomb Raider」 シーズンパス編

[シーズンパス構成] ※11月13日時点
・シーズンパス特典コスチューム「Tunic of the Exiled Fox(ローンフォックスのチュニック)」
・シーズンパス特典武器「Exiled Fox's Bow(ローンフォックスの弓)」
・DLC第1弾「The Forge(運命の鍛冶場)」
 →追加サイドミッション、追加スキル「グレネーダー」
・コスチューム/武器パック「Spectre Gear(亡霊の装備)」
 →コスチューム「Brocken(ブロッケン)」、アサルトライフル「Umbrage 3-80」

チャレンジトゥーム7種、コスチューム/武器/スキル各7種、複数サイドミッションの追加が予定されている。



■DLC第1弾「The Forge」

Sottr16

[クリアまでにかかった時間]
新規追加のトゥームと墓所を含めたサイドミッション全体で約1時間。

[ゲーム難易度]
本編のトゥームと比べて若干難しい。大型で時間制限のある仕掛けがいくつも登場する。

[実績・トロフィー難易度]
スコアアタック、タイムアタックの実績もあるがブロンズ評価でも解除されるのでそれほど難しくはない。
多くのウィスプを集めようとしなくても、ノーデスで普通にルートをたどれば50万は固い。


Sottr17

[良いところ]
・本編のトゥームにはないダイナミックな仕掛け。噴き出すガスを爆発させて頂上へと進め。
・最適解を発見するおもしろさ。思わぬところからガスに着火し、大幅なショートカットが可能かもしれない…?
・「もっと女の子らしくしなさい」と叱られる、女の子らしくない姿のララとアビー。

[悪いところ]
・予定より1か月遅れての配信。発売から2か月後に武器が増えたところで、いまさら使い道はない。
・全体で95Gという半端な実績構成。

[どちらとも言えない]
・取って付けたようなサイドミッションのストーリー。知らなくてもよかったアビーの血筋と祖先の秘密。
・協力プレイ要素。マッチングシステムも導入されているが、需要はあるのだろうか?



以降DLCが配信され次第、順次追記を予定。



[スコアアタックのヒント]
・緑のウィスプは青のウィスプと比べて、取ったあとのコンボ猶予が長い。
・赤のランタンは最後にまとめて取ると高得点に期待できる。
・すべてのウィスプを取ってから、残ったランタンを撃ち落とせば理論上の最高スコアとなる。

[タイムアタックのヒント]
・ダッシュするより、ジャンプ着地受け身や回避動作を連発したほうが速く移動できる。

| | コメント (0)

2018年11月 9日 (金)

ゲーマー視点で見る「トゥームレイダー ファースト・ミッション」

 【注意】この記事には大量のネタバレが含まれています!

Mss_trfm

先日、Xbox Oneの映画配信サービスで「トゥームレイダー ファースト・ミッション」を見ました。

いつか見よう見ようとは思っていたものの、なかなか踏ん切りがつかず。
まず、どの映像配信サービスで見ようか?というところでだいぶ悩みましたからね…良し悪しがわからなくて。
結局一番信頼できるというか、お金を落としてあげたいところを選んだ感じになりました(笑)

有料の映像配信サービスというものを利用すること自体初めてで、実際に視聴するまで戸惑うことばかりでした。
一番不安だったのは、英語版で日本語字幕がきちんと表示されるかどうか。

Xbox Oneの映像配信サービスには無料で視聴できる、おためし映像的なものが用意されていません。
なので字幕がきちんと表示されるかどうかは支払いを済ませ、再生してみないことにはわからなかったのです。
半ば人柱的に確認してみたところ、特に本体の設定などをイジらなくても日本語字幕が表示されました。
最初は画質が低く見えて不安でしたが、バッファが済んでからはきちんとHD画質で再生してくれました。


肝心の「ファースト・ミッション」の感想、レビューなんですけども…なかなかおもしろかったですね。

2013年発売の新生トゥームレイダーシリーズの第1作目「TOMB RAIDER」を原作とした映画という話でしたが
2作目の「Rise of the Tomb Raider」や3作目の「Shadow of the Tomb Raider」の要素もいくつか採用されており
新生シリーズの映像化として、3つのゲームと並行して楽しむことができる内容になっていました。

大筋は「TOMB RAIDER」のままで、ドラゴントライアングルにあるという邪馬台国を探すアレです(笑)
原作では『間違った日本』表現の応酬で、日本人目線では笑わずにプレイできない感じの内容になってましたが
「ファースト・ミッション」では日本風な表現はかなりひかえめになっています。
原作のほうに慣れてしまうとちょっと寂しさを覚えるくらい、『間違った日本』は影を潜めています。

原作は航海の途中からスタートしましたが、映画ではその準備段階がかなりゆったりと描かれています。
ララ・クロフトがロンドンでどんな生活をしていたか、冒険で役に立った技術をどのようにして身に付けたのかなど
(本編約110分のうち)冒頭40分もの尺を割いて説明しているのは良い意味で意外でした。


人間関係はだいぶ整理されていて、名前がついてて話に絡む人物は片手で数えて足りる程度になっています。
エンジュランス号の乗員は割愛。代わりに映画オリジナルの味方として、ルー・レンが出てきます。

原作のエンジュランス号の船長で、ララに銃の扱い方を教えたコンラッド・ロスも存在しないことになってるので
「ファースト・ミッション」のララ・クロフトは銃を撃つことができません。
銃は撃てませんが、子供のころから弓の練習をしていたという設定が新たに付加されています。

冷静に考えると、原作のララがいきなり弓を扱えるのって謎なんですよね。なんの説明もなく使いこなせてしまう。
そのへんをきっちり理詰めにしているというか、ほかにもいろんな場面で現実的なアレンジが見られます。

たとえば物語のひとつのカギである卑弥呼の力。映画ではオカルト要素は完全に排除されています。

島からの脱出を阻む嵐は存在しないし、新たな肉体へ魂を移すという秘儀もありません。
卑弥呼が絶海の孤島に移り住んだのは自身の身体に宿った凶悪な疫病、病原体の拡散を防ぐためであって
トリニティはその疫病を兵器転用するため動いていた…という、無理のない話に変更されています。
しかし、オカルト要素がなさすぎて寂しい感じもしますね。オカルトは新生シリーズの大事な要素でしたし。


原作プレイヤーにとってもっとも大胆と思えるアレンジは、ララの父・リチャードが生きていることです。
7年ものあいだ絶海の孤島でひとり抵抗活動を続けていて、終盤ではララとともに遺跡の探索までします(!)

ぶっちゃけ、これはねえだろ…って思いながら見てました。そこは原作改変しちゃいかんだろう、と。

しかもララとの再会がメチャクチャ安っぽい。原作の展開に思い入れがあればあるほどガッカリするはずです。
ララとの別れも含めて、あえてリチャードという人物にやらせる必要はなかったのでは?
リチャードにああいう役割を与えて消費してほしくはなかったなぁ…なんとかならなかったんですかねホント。


逆に、個人的に非常に気に入っているのがアナのアレンジです。1作目なのにもうアナがいるんです。
原作プレイヤーにしてみればアナの正体はバレバレなわけですが、映画ではバレバレなのを承知のうえでの
原作とは異なる役割を与えられており、これは上手いなぁと思わされるところなんです。
事実上の後妻ではなく、クロフト家が経営する一大ホールディングスの幹部としてクロフト親子のそばにいて
リチャードの遺産管理や経営権にまで関われる立場にいるという。不自然さがないんですよね。

このへん続編への布石にもなってるんですけど、続編が作られなくても問題ないように作られているというか
一本の映画として余韻を残しつつうまいこと締めくくってあるなぁと感心させられました。
しかもアナを演じるクリスティン・スコット・トーマスの雰囲気がいかにもアナっぽくてホントに素晴らしい。

いやもう…ホント、原作プレイヤーにはアナだけでも見てほしい。アナだけでだいぶ満足できるはず(笑)


原作で敵の親玉として登場したマサイアスも、名前はそのまま悪役として映画に登場します。
しかし雰囲気はだいぶ変わっていて、狂気のレベルはだいぶ落ち着いてマイルドな味付けになっています。

マイルドなのに劇中では狂気の人物として扱われているのが個人的にはちょっと不満でした。
孤島で長年生活し続けていた影響で精神に異常を来しているという設定のわりに身なりも言動もキレイなので
『仕事の成果が出なくてちょっと焦っている上司』くらいにしか見えないんですよね。
あと、武装した兵士を従えているのにマサイアスの拳銃が一番命中率が高いというのもアレでした(笑)


主演の評価が一番最後になってしまいました…新生ララ・クロフトについても話しておかなければ。

アンジェリーナ・ジョリーに代わり、新たなララを務めることになったアリシア・ヴィキャンデル。
身長168cmのわりに画面のなかではとにかく小柄に見えるし、実年齢(30歳)よりだいぶ幼く感じられます。
だけど背中やおなかにはしっかり筋肉がついている。でもやっぱり小さく見える。不思議な体格です。

固定されたララ・クロフトのパブリックイメージからはかけ離れているけど、冒頭のロンドンでの生活を見ていると
訳あって貧乏暮らしをしている気の強い子ギツネというイメージにはしっくり来ます。

ただ、小柄に見えるせいで戦闘シーンなどではどうしても格好がつかないというか。アンバランスなのかな?
特に弓を入手して敵陣に潜入する場面では、弓という武器のせいもあって変な笑いがこみ上げてきます。
ゲームだとすんなり受け入れられた絵が実写化によって奇妙に見えてしまいました。
撮り方がよくなかった可能性もありますね。真っ昼間だし、敵の監視も全然なくて緊張感ゼロでしたし。

アクションに関しては申し分ありません。原作で見たことのあるアクションをしっかり再現してくれています。
原作の人間離れしたアクションを生身でかなり再現しているというだけでも評価できるのではないかと。


原作では大卒でしたが映画では大学に行かなかったことになっており、考古学の要素もほぼ出てきません。
したがって遺跡の内部で知識を披露することもなく、パズルは純粋にパズルとして解いていきます。
このへん賛否が分かれるところだと思うんですけど、変にセリフを増やしてツッコみどころを作ってしまうよりは
がっつり削ってアクションやパズルに集中してもらったほうが(映画として)良いという判断なのかも。

それより個人的に気になったのは髪型の解釈ですね。
原作の新生ララは原則として前髪があるのですが、映画のララはいわゆる旧来のララの髪型なのです。
幼年期の子役も、孤島から帰還して銃を購入するときも前髪なしの編み上げになっています。

質屋で購入した銃がH&Kの二挺拳銃なあたりからも察することができますが、この「ファースト・ミッション」は
アンジェリーナ・ジョリー版につながる過去を描いた映画という位置付けなのかもしれません。


映画全体をまとめると、やはり理詰めで現実的という表現がピッタリだと思います。
インディ・ジョーンズやハムナプトラシリーズのようなオカルトやファンタジーはなく、2018年の現代という視点で
失踪した父の痕跡をたどり、遺跡の探索をする。極端な非現実的描写がないアクション映画。
一本のアクション映画として見れば退屈することのない、じゅうぶんに及第点を与えられる作品だと思います。

問題はララ・クロフトのパブリックイメージと、原作ファンの視点。比較がともなうとどう変わるのか。
なので比較ばっかりの感想になってしまいましたが、新生シリーズの実写版としてはなかなかという感じ。
続編が作られるなら見たいですね。シベリアの描写とか見たくないわけがないじゃないですか。



原作との比較をたっぷり話したあとですが、紹介できなかった原作との共通点や相違点を列挙しておきます。
レンタル当日にぶっ続けで2周、2回目は随所で一旦停止してメモを取りつつ見ました。


[原作との共通点]
・ララはロンドンのアパートで独り暮らしをしている
・ララは自転車を愛用している(「Rise of~」で所有している描写がある)
・翡翠のアミュレットが登場する(映画ではお守りというバックボーンが付加されている)
・ララの私服はパーカーの上にレザージャケット(「Rise of~」のロンドンでの描写に似ている)
・リチャードは音声の記録にテープレコーダーを使っている
・船の名前がエンジュランス号(忍耐力)
・ララがロープを引くシーンがある(ただし探索とは関係ない)
・ララが懸垂で移動するシーンがある
・ロープアセンダーが登場する
・ジャングルをTPS視点で走るシーンがある(短いが原作の視点をかなり意識していると思われる)
・水中に落ちるシーンが繰り返し出てくる(ゲームの悪癖か?)
・墜落した日本軍の飛行機が登場する(九六式陸攻?)
・崩壊する飛行機からの脱出にパラシュートを利用する(カタカナでパラシュートって書いてある)
・腹部に突起物が刺さる(ただし原作とケガの原因が異なり、パラシュートで着地した際に木片?が刺さる)
・ララが初めて人を殺すシーンが描かれている(ただし銃殺ではなく扼殺)
・ララが首を絞められて、鈍器で反撃するシーンがある(「Rise of~」のクロフト邸内での描写に似ている)
・薄暗い森の中でリチャードの影を追うシーンがある(「Rise of~」のDLCより)
・岸壁を登るシーンがある(クライミングアックスを使わず素手で登る!)
・理由はよくわからないけどロープがグルグル巻きになってるオブジェクトが登場する(笑)
・ララは自己治癒能力がない(自己治癒できるようになるのは「Rise of~」以降)
・オレンジ色のケミカルライトが出てくる(「Rise of~」に登場)
・灯りとして発煙筒が出てくる(「Rise of~」に登場)
・円盤状の回転する扉が登場する(「Shadow of~」に登場)
・疫病に感染すると周囲の人を襲う(「Rise of~」以降の毒矢の効果に似ている)
・クライミングアックスが2本登場する(使うのは原作どおり1本だけで、原作とは入手法が異なる)
・最後は遺跡が崩壊する(でもララが壊したわけじゃないよ?)

[相違点]
・ララか総合格闘技のトレーニングを受けている
・ララは大学に通っておらず、自転車でバイク便のバイトをしている(原作ではUCL卒)
・リチャードの研究室はクロフト邸内ではなく離れの墓所の地下
・マサイアスには2人の娘がいる
・マサイアスは遭難者たちを遺跡発掘に従事させている
・ジェリカンが赤くない(なぜ黄色なのか…)
・マサイアスがトリニティの指示で動いている(原作では関係は示唆されていない)
・弓は即席ではなく、リチャードの所有物
・パトナ社(トリニティ)はクロフトホールディングス傘下の企業である

[補足事項]
・現在は2018年(7年前の2011年にリチャードが失踪しているので、現在は2018年で間違いない)
・ララは21歳(原作と同じ設定だが、劇中で年齢を確認できるようなセリフはない)
・アメリアは名前しか出てこない(墓標をよく見ないとわからない程度)
・リチャードは1963年生まれ、アメリアは1964年生まれで1996年死去
(ララが生まれて間もなく亡くなっていればギリギリ辻褄が合う? ちなみに96年は初代の発売年である)
・質屋のカウンターの後方にゲームソフトらしきものが並べてある
・孤島はルソン島の東あたりにあるらしい(出航前のシーンの地図で確認できる)
・ララが「マジで?」という妙に若者めいた言葉遣いをする(字幕版)
・盗んだ衛星電話って結局使わなかったね…
・卑弥呼の遺体が身体を起こした仕掛けって結局なんだったの?
・金的攻撃はやめてほしかった(原作には性差を意識させるようなシーンはない)
・サウンドトラックが微妙に原作のテーマをなぞっている感じがする(おそらく意識的に近付けてある)

| | コメント (0)

« 2018年10月 | トップページ