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2018年11月 9日 (金)

ゲーマー視点で見る「トゥームレイダー ファースト・ミッション」

 【注意】この記事には大量のネタバレが含まれています!

Mss_trfm

先日、Xbox Oneの映画配信サービスで「トゥームレイダー ファースト・ミッション」を見ました。

いつか見よう見ようとは思っていたものの、なかなか踏ん切りがつかず。
まず、どの映像配信サービスで見ようか?というところでだいぶ悩みましたからね…良し悪しがわからなくて。
結局一番信頼できるというか、お金を落としてあげたいところを選んだ感じになりました(笑)

有料の映像配信サービスというものを利用すること自体初めてで、実際に視聴するまで戸惑うことばかりでした。
一番不安だったのは、英語版で日本語字幕がきちんと表示されるかどうか。

Xbox Oneの映像配信サービスには無料で視聴できる、おためし映像的なものが用意されていません。
なので字幕がきちんと表示されるかどうかは支払いを済ませ、再生してみないことにはわからなかったのです。
半ば人柱的に確認してみたところ、特に本体の設定などをイジらなくても日本語字幕が表示されました。
最初は画質が低く見えて不安でしたが、バッファが済んでからはきちんとHD画質で再生してくれました。


肝心の「ファースト・ミッション」の感想、レビューなんですけども…なかなかおもしろかったですね。

2013年発売の新生トゥームレイダーシリーズの第1作目「TOMB RAIDER」を原作とした映画という話でしたが
2作目の「Rise of the Tomb Raider」や3作目の「Shadow of the Tomb Raider」の要素もいくつか採用されており
新生シリーズの映像化として、3つのゲームと並行して楽しむことができる内容になっていました。

大筋は「TOMB RAIDER」のままで、ドラゴントライアングルにあるという邪馬台国を探すアレです(笑)
原作では『間違った日本』表現の応酬で、日本人目線では笑わずにプレイできない感じの内容になってましたが
「ファースト・ミッション」では日本風な表現はかなりひかえめになっています。
原作のほうに慣れてしまうとちょっと寂しさを覚えるくらい、『間違った日本』は影を潜めています。

原作は航海の途中からスタートしましたが、映画ではその準備段階がかなりゆったりと描かれています。
ララ・クロフトがロンドンでどんな生活をしていたか、冒険で役に立った技術をどのようにして身に付けたのかなど
(本編約110分のうち)冒頭40分もの尺を割いて説明しているのは良い意味で意外でした。


人間関係はだいぶ整理されていて、名前がついてて話に絡む人物は片手で数えて足りる程度になっています。
エンジュランス号の乗員は割愛。代わりに映画オリジナルの登場人物、ルー・レンが出てきます。

原作のエンジュランス号の船長で、ララに銃の扱い方を教えたコンラッド・ロスも存在しないことになってるので
「ファースト・ミッション」のララ・クロフトは銃を撃つことができません。
銃は撃てませんが、子供のころから弓の練習をしていたという設定が新たに付加されています。

冷静に考えると、原作のララがいきなり弓を扱えるのって謎なんですよね。なんの説明もなく使いこなせてしまう。
そのへんをきっちり理詰めにしているというか、現実的なアレンジをいろんな場面で見ることができます。

たとえば物語のひとつのカギである卑弥呼の力。映画ではオカルト要素は完全に排除されています。

島からの脱出を阻む嵐は存在しないし、新たな肉体へ魂を移すという秘儀もありません。
卑弥呼が絶海の孤島に移り住んだのは自身の身体に宿った強力な疫病、病原体の拡散を防ぐためであって
トリニティはその疫病を兵器転用するため動いていた…という、無理のない話に変更されています。
しかし、オカルト要素がなさすぎて寂しい感じもしますね。オカルトは新生シリーズの大事な要素でしたし。


原作プレイヤーにとってもっとも大胆と思えるアレンジは、ララの父・リチャードが生きていることです。
7年ものあいだ絶海の孤島でひとり抵抗活動を続けていて、終盤ではララとともに遺跡の探索までします(!)

ぶっちゃけ、これはねえだろ…って思いながら見てました。そこは原作改変しちゃいかんだろう、と。

しかもララとの再会がメチャクチャ安っぽい。原作の展開に思い入れがあればあるほどガッカリするはずです。
ララとの別れも含めて、あえてリチャードという人物にやらせる必要はなかったのでは?
リチャードにああいう役割を与えて消費してほしくはなかったなぁ…なんとかならなかったんですかねホント。


逆に、個人的に非常に気に入っているのがアナのアレンジです。1作目なのにもうアナがいるんです。
原作プレイヤーにしてみればアナの正体はバレバレなわけですが、映画ではバレバレなのを承知のうえでの
異なる役割を与えられており、これは上手いなぁと思わされるところなんです。
事実上の後妻ではなく、クロフト家が経営する一大ホールディングスの幹部としてクロフト親子のそばにいて
リチャードの遺産管理や経営権にまで関われる立場にいるという。不自然さがないんですよね。

このへん続編への布石にもなってるんですけど、続編が作られなくても問題ないように作られているというか
一本の映画として余韻を残しつつうまいこと締めくくってあるなぁと感心させられました。
しかもアナを演じるクリスティン・スコット・トーマスの雰囲気がいかにもアナっぽくてホントに素晴らしい。

いやもう…ホント、原作プレイヤーにはアナだけでも見てほしい。アナだけでだいぶ満足できるはず(笑)


原作で敵の親玉として登場したマサイアスも、名前はそのまま悪役として映画に登場します。
しかし味付けはだいぶ変わっていて、狂気のレベルはだいぶ落ち着いてマイルドな味付けになっています。

マイルドなのに劇中では狂気の人物として扱われているのが個人的にはちょっと不満でした。
孤島で長年生活し続けていた影響で精神に異常を来しているという設定のわりに身なりも言動もキレイなので
『仕事の成果が出なくてちょっと焦っている上司』くらいにしか見えないんですよね。
あと、武装した兵士を従えているのにマサイアスの拳銃が一番命中率が高いというのもアレでした(笑)


主演の評価が一番最後になってしまいました…新生ララ・クロフトについても話しておかなければ。

アンジェリーナ・ジョリーに代わり、新たなララを務めることになったアリシア・ヴィキャンデル。
身長168cmのわりに画面のなかではとにかく小柄に見えるし、実年齢(30歳)よりだいぶ幼く感じられます。
だけど背中やおなかにはしっかり筋肉がついている。でもやっぱり小さく見える。不思議な体格です。

固定されたララ・クロフトのパブリックイメージからはかけ離れているけど、冒頭のロンドンでの生活を見ていると
訳あって貧乏暮らしをしている気の強い子ギツネというイメージにはしっくり来ます。

ただ、小柄に見えるせいで戦闘シーンなどではどうしても格好がつかないというか。アンバランスなのかな?
特に弓を入手して敵陣に潜入する場面では、弓という武器のせいもあって変な笑いがこみ上げてきます。
ゲームだとすんなり受け入れられた絵が実写化によって奇妙に見えてくるという。
撮り方がよくなかった可能性もありますね。真っ昼間だし、敵の監視も全然なくて緊張感ゼロでしたし。

アクションに関しては申し分ありません。原作で見たことのあるアクションをしっかり再現してくれています。
原作の人間離れしたアクションを生身でかなり再現しているというだけでも評価できるのではないかと。


原作では大卒でしたが映画では大学に行かなかったことになっており、考古学の要素もほぼ出てきません。
したがって遺跡の内部で知識を披露することもなく、パズルは純粋にパズルとして解いていきます。
このへん賛否が分かれるところだと思うんですけど、変にセリフを増やしてツッコみどころを作ってしまうよりは
がっつり削ってアクションやパズルに集中してもらったほうが(映画として)良いという判断なのかも。

それより個人的に気になったのは髪型の解釈ですね。
原作の新生ララは原則として前髪があるのですが、映画のララはいわゆる旧来のララの髪型なのです。
幼年期の子役も、孤島から帰還して銃を購入するときも前髪なしの編み上げになっています。

質屋で購入した銃がH&Kの二挺拳銃なあたりからも察することができますが、この「ファースト・ミッション」は
アンジェリーナ・ジョリー版につながる過去を描いた映画という位置付けなのかもしれません。


映画全体をまとめると、やはり理詰めで現実的という表現がピッタリだと思います。
インディ・ジョーンズやハムナプトラシリーズのようなオカルトやファンタジーはなく、2018年の現代という視点で
失踪した父の痕跡をたどり、遺跡の探索をする。極端な非現実的描写がないアクション映画。
一本のアクション映画として見れば退屈することのない、じゅうぶんに及第点を与えられる作品だと思います。

問題はララ・クロフトのパブリックイメージと、原作ファンの視点。比較がともなうとどう変わるのか。
なので比較ばっかりの感想になってしまいましたが(笑)新生シリーズの実写版としてはなかなかという感じ。
続編が作られるなら見たいですね。シベリアの描写とか見たくないわけがないじゃないですか。



原作との比較をたっぷり話したあとですが、紹介できなかった原作との共通点や相違点を列挙しておきます。
レンタル当日に2回連続で見て、2回目は一旦停止してメモを取りつつの視聴でした。


[原作との共通点]
・ララはロンドンのアパートで独り暮らしをしている
・ララは自転車を愛用している(「Rise of~」で所有している描写がある)
・翡翠のアミュレットが登場する(映画ではお守りというバックボーンが付加されている)
・ララの私服はパーカーの上にレザージャケット(「Rise of~」のロンドンでの描写に似ている)
・リチャードは音声の記録にテープレコーダーを使っている
・船の名前がエンジュランス号(忍耐力)
・ララがロープを引くシーンがある(ただし探索とは関係ない)
・ララが懸垂で移動するシーンがある
・ロープアセンダーが登場する
・ジャングルをTPS視点で走るシーンがある(短いが原作の視点をかなり意識していると思われる)
・水中に落ちるシーンが繰り返し出てくる(ゲームの悪癖か?)
・墜落した日本軍の飛行機が登場する(九六式陸攻?)
・崩壊する飛行機からの脱出にパラシュートを利用する(カタカナでパラシュートって書いてある)
・腹部に突起物が刺さる(ただし原作とケガの原因が異なり、パラシュートで着地した際に木片?が刺さる)
・ララが初めて人を殺すシーンが描かれている(ただし銃殺ではなく扼殺)
・ララが首を絞められて、鈍器で反撃するシーンがある(「Rise of~」のクロフト邸内での描写に似ている)
・薄暗い森の中でリチャードの影を追うシーンがある(「Rise of~」のDLCより)
・岸壁を登るシーンがある(クライミングアックスを使わず素手で登る!)
・理由はよくわからないけどロープがグルグル巻きになってるオブジェクトが登場する(笑)
・ララは自己治癒能力がない(自己治癒できるようになるのは「Rise of~」以降)
・オレンジ色のケミカルライトが出てくる(「Rise of~」に登場)
・灯りとして発煙筒が出てくる(「Rise of~」に登場)
・円盤状の回転する扉が登場する(「Shadow of~」に登場)
・疫病に感染すると周囲の人を襲う(「Rise of~」以降の毒矢の効果に似ている)
・クライミングアックスが2本登場する(原作どおり使うのは1本だけで、原作とは入手法が異なる)
・最後は遺跡が崩壊する(でもララが壊したわけじゃないよ?)

[相違点]
・ララか総合格闘技のトレーニングを受けている
・ララは大学に通っておらず、自転車でバイク便のバイトをしている(原作ではUCL卒)
・リチャードの研究室はクロフト邸内ではなく離れの墓所の地下
・マサイアスには2人の娘がいる
・マサイアスは遭難者たちを遺跡発掘に従事させている
・ジェリカンが赤くない(なぜ黄色なのか…)
・マサイアスがトリニティの指示で動いている(原作では関係は示唆されていない)
・弓は即席ではなく、リチャードの所有物
・パトナ社(トリニティ)はクロフトホールディングス傘下の企業である

[補足事項]
・現在は2018年(7年前の2011年にリチャードが失踪しているので、現在は2018年で間違いない)
・ララは21歳(原作と同じ設定だが、劇中で年齢を確認できるようなセリフはない)
・アメリアは名前しか出てこない(墓標をよく見ないとわからない程度)
・リチャードは1963年生まれ、アメリアは1964年生まれで1996年死去
(ララが生まれて間もなく亡くなっていればギリギリ辻褄が合う? ちなみに96年は初代の発売年である)
・質屋のカウンターの後方にゲームソフトらしきものが並べてある
・孤島はルソン島の東あたりにあるらしい(出航前のシーンの地図で確認できる)
・ララが「マジで?」という妙に若者めいた言葉遣いをする(字幕版)
・盗んだ衛星電話って結局使わなかったね…
・卑弥呼の遺体が身体を起こした仕掛けって結局なんだったの?
・金的攻撃はやめてほしかった(原作には性差を意識させるようなシーンはない)
・サウンドトラックが微妙に原作のテーマをなぞっている感じがする(おそらく意識的に近付けてある)

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