2020年 冬アニメ新作寸感
タイトルを書いてるとき「2020年のアニメか…」とちょっと感慨深いものがありました。
遠い未来のそれこそアニメの中の時代だったはずが、現実に来ているのに我々はあいかわらずアニメを見ていて
まあこんなものなのかなと思ったり思わなかったり。というわけで冬アニメの寸評をお送りします。
今期、初回でもっとも印象がよかった作品は、サテライトの新作「ソマリと森の神様」でした。
初回の冒頭数分でわかるパワー。文化や情報量、それらを表現する色使い。そして森山直太朗が歌う主題歌。
始まったばかりのお話なのに、既に終わりが見えているかのような危機感と悲壮感。だからこそ生まれる暖かみ。
1話を単品で見たときのパッケージングのよさも好印象につながりました。
気になるのはこの品質を今後どれだけ維持できるかですね。サテライトはちょっと"そういうところ"があるので。
8年くらい前から当ブログでは『サテライト枠』として紹介し、個人的に応援し続けてきたサテライトの作品を
もっとも印象がよかった作品として紹介できることを大変うれしく思っています。
次点は同じ木曜24時台の「宝石商リチャード氏の謎鑑定」になるでしょうか。というよりオススメしたい。
余韻の見せ方やキャラクターのこまかい芝居の付け方など、映像作品として、ドラマとしての丁寧な作りが好感。
宝石にまつわるドラマというふうにテーマが絞られるはずなので、今後どんな話が見られるか期待してます。
同率で「ID: INVADED」も結構気に入ってるんですよね。1・2話はとても見応えのあるものでした。
なんの説明もないところからいきなり始まりますが、断片的な説明できちんと理解できるよう作られているので
一定の速度で頭を回転させつつお話の続きを見ることができるのが気持ちよかったです。
ゲーム的という表現が褒め言葉なるかはわかりませんが、普段ゲームをやる人は一層楽しく見れると思います。
まあ…「あの作品に似てるんじゃ?」みたいな言われ方をされる可能性はあるかもしれません。
現状ではそういった部分がマイナスにつながることはなく、本作の要素として受け入れることができています。
それにしても、津田健次郎は昨年後半からお仕事がメチャクチャ多い気が。主役級も多数。
以降、初回で気になった作品を列挙していきますが、今期は選択の傾向が我ながらハッキリしています。
落ち着いた作品、優しい作品を見たいと思っているみたいで。やや偏りのあるチョイス。
今期の新作第1号だった「恋する小惑星」は動画工房の最新作。久し振りな気がするきらら原作アニメ。
あまりにも安定の布陣すぎて言うことがないというか、この作品から今期が始まったことに安心感がありました。
シリーズ構成を担当する山田由香、プリキュアシリーズなどで「今回のお話よかったな」と思うときに見かける
お名前だったので、そういう意味でも個人的に期待している作品です。
「群れなせ!シートン学園」は最近のブームになりつつある動物ものアニメ。本作はだいぶギャグ寄りです。
特徴的な声の声優さんが珍獣(笑)を熱演しており、耳の楽しさを求める人にはオススメ。
恐竜が教職員を担当してるんですけど、生徒たちへの指導が脅しとも取れるもので笑えるけどちょっと怖いです。
しかしなんなんでしょうねこのブーム…「けものフレンズ」がああいうことになってしまった結果と考えるなら
後釜の争奪戦と言えなくもないのですが、そう何度も爆発的に売れたりしないでしょうよ。
これも動物ものと捉えていいのやら…「織田シナモン信長」は戦国武将が現代のペット、イヌに転成したという
異色の設定で織り成すコメディで、キャスティングの暴力によっておもしろさに拍車がかかっております。
深夜アニメという括りで話題に出てくることはまずないでしょうけど、変わり種としてひとつ。
これまでアニメの枠で原作のCMが流れ続けていた「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」は
ようやくアニメの放送が開始。とにかく優しい内容で、見ていてストレスを感じません。
本作はよくある異世界ものではなく、あくまでMMOの体験記として書かれているのも目新しく映りました。
「アニメでまでストレスを溜めたくない」という人にはオススメできる作品になりそうです。
Eテレで放送が始まった10分アニメ「ブレーカーズ」は、目立ちはしないものの意欲的であると感じました。
アニメという媒体ではタブー視されがちな、しかしパラスポーツを題材にするからには避けられない人体欠損の
描写への取り組み方や、Gペンで引いたような生っぽい線など、注目すべきところがあります。
Netflixで先行放送されていた「ケンガンアシュラ」は3DCGをふんだんに用いた地下格闘もの。
ステゴロ格闘の頂点と、対照的な冴えない会社員の組み合わせが本作の妙。単純に殴り合いだけでもおもしろい。
「虚構推理」はタイトルから想像したものと全然違っていました。まあ…推理もあるといえばあるかな?
まさかこのタイトルから和風かつ妖怪退治が始まるとはなかなか思えないじゃないですか。
初回の印象はむしろよかったものの、そのタイトルから来るギャップの大きさのほうが強く記憶に残りました。
今期の木曜はホントに地獄のような番組編成になっておりまして…実写「ゆるキャン△」も入れると新作10本。
22時台の「ねこパラ」から26時台の「地縛少年花子くん」まで4時間半、休憩なし。
1クール分に等しい量のアニメが毎週ぶっ続けで放送されるわけで、オンタイムで見る人は大変でしょうね。
先述の「ソマリ」「リチャード」以外では「推し武道」と「花子」をピックアップしたいと思います。
原作の存在は以前から知っていた「推しが武道館いってくれたら死ぬ」は地下アイドルとそのファンのお話。
原作もアニメも周囲の評判は非常に良く、特に現役でアイドルファンをやってる人たちから注目されている様子。
初回はタイトル回収にいたる紹介に終始しており、中身までは判断しかねる状態。作画は良いです。
「地縛少年花子くん」は動くWebコミックみたいな、アニメというよりゲームのイベントシーンみたいな作りで
派手な動きこそないものの、その個性的かつビビッドな絵は一見の価値あり。
放送開始前からもっとも気にしていた作品、「22/7」はまずまずの滑り出し。
「ただのアイドルものではない」という空気は事前に情報を入れていなかった人にもじゅうぶん伝わったはず。
作品自体のクオリティはさることながら、プロモーションにもかなりの本気度が窺えます。
商業的に成功するかはさておき、一本のアニメとしておもしろいものになってくれたらなぁと期待しています。
予想どおりというか…声の演技についての指摘が殺到していますが、『叩きやすい箇所』でしかないですね。
物語を追ううえでは些細な問題。本作にはもっと注目すべき部分がいくつもありましたから。
チラッと映ったライブシーンのCGの仕上がりが、過去のMVとくらべてちょっと不安な出来なのが気掛かり。
男性4人組ユニット・ARPを題材にした「ARP Backstage Pass」は異色な作りのアニメでした。
アイドルやアーティストのドキュメンタリー映画みたいな雰囲気で、結成や活動の背景を描いていく様子。
しかし、そういうドキュメンタリーってファンアイテムだと思うんですよね。不特定多数に向けたものではない。
いかにエピソードを盛り込んでテレビアニメとしておもしろいものにできるか。そこにかかっていると思います。
ネット上ではかなり『ダイナみ(「ダイナミックコード」っぽさ)』が強いと言われてますね(笑)
あれほどではないものの、かなり独特の雰囲気をもつ作品であることは否定できません。
「A3! SEASON SPRING & SUMMER」は既に多くのファンを獲得している男性中心の舞台演劇もの。
初回はよくある女性向け作品っぽい導入で、取り壊し寸前の劇場の立て直しという"廃校アニメ"的な目標があり
わかりやすく見ていけるんじゃないかと。悪く言えば、目新しさは現状ありません。
新しいとは言えない原作のアニメ化が今期はいくつかあります。抜粋して紹介。
「バビロン」の放送枠で新たに始まった「pet」は、ツインエンジン系列の作品で雰囲気は「バビロン」に近く
こちらも視聴者の心理を揺さぶる作りとなっております。どこまでが幻でどこからが現実なのか…。
約20年ぶりの再アニメ化となる「魔術師オーフェンはぐれ旅」は、言わば正しい意味でのレトロアニメ。
最新の技術をもって『あの時代のアニメ』を再現しているかのような、エミュレーション技術に感心するものの
やはり時代を感じさせるというか…令和の時代にこのデザインはないなと思わされます。
いま二十歳ぐらいの人たちにはこれがどう映るのでしょうか。そもそも見ないかな…わからんだろうし。
かく言う自分もじつは「オーフェン」って通過してない作品なんですよ。今回が初見。
なので『あの時代のアニメ』な表現には懐かしさを感じますが、「オーフェン」自体には懐かしさを感じません。
タイトルだけは昔から知っていた「ドロヘドロ」、アニメ化でようやくどういう作品か知ることができました。
日本のアニメがジャパニメーションと呼ばれていた時代を彷彿とさせる緻密で猥雑な絵が魅力的。
どこからが3DCGなのか一見してわからず、画面の中でなんかすごいことが起きてるな!という驚きがいっぱい。
残酷な描写を許容できる人であれば一度は見ておいたほうがよいかと。とにかく血が出ます。
「7SEEDS」は昨年Netflixで配信された作品で、今期が地上波初放送。制作はGONZO。
原作はおもしろいらしいのですが、その評判を信じられそうな部分が初回にはまったく見つかりませんでした。
実写映画の撮影も進行中の「映像研には手を出すな!」は一応今期の注目どころなのでしょうか。
初回を見た限りでは話のおもしろさよりも、アラフォー&アラフィフ世代のアニメオタクが過ごした学生時代の
ノスタルジーを前面に押し出している感じで、お話としては少々物足りなさを感じました。
『男性の趣味を女学生にやらせてみた』みたいな作品はたくさんあり、そう見られても仕方ないかなぁと。
ただ、そのように感じてしまうのには原作者に対する個人的な心情もかなり影響していると自覚しています。
原作の大童澄瞳という方は『クソバカ』なる言葉を好んで使うようですが、未来の読者になるかもしれない人を
『クソバカ』呼ばわりするような方の作品を偏見なしに評価するのはちょっと難しいなと思ってまして…。
日曜深夜という混雑する放送枠の都合もあり、早い段階で視聴できなくなってしまうかもしれません。
今期のある意味最大にして最低の話題作「異種族レビュアーズ」は、地上波で放送できてることが奇跡みたいで
いつ放送が打ち切られてもおかしくないと思うので(笑)気になる人は早めに見るか買ったほうがいいです。
エロの濃度があまりにも高く、嫌悪感を抱くと同時に頭の中で錆びついたフタが開いた感じがしました。
しかし、どんな雰囲気で収録してるんでしょうね。むしろ男性声優陣のほうが気まずいんじゃないかと。
「異種族」と銘打つわりに、どの種族もヒト型の哺乳類をベースに描いていることが少々気になりました。
初回はわかりやすい表現に留めていて、甲殻類や昆虫みたいなのは後々登場するのかもしれませんが。
現時点で危険水域にいるのは「ダーウィンズゲーム」と「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」の2作品。
「ダーウィンズゲーム」は現段階では使い古されたデスゲームという印象しかなく、新規性はゼロ。
被害者たちを誘い込むのがスマートフォンのゲームアプリ、それもソシャゲっぽいものとして描いているという
現代風のアレンジはあるものの、やってることはまあ何番煎じだこれ?という話ですよ。
これから異能力バトルに転じていくのだとか…どちらにせよ新しいものを見られる気はしません。
「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」はキャラクターデザインとキャストにだいぶ救われています。
前期の「厨病激発ボーイ」はあれでもおもしろく描けていたんだなぁと、妙な意味で再評価しております。
今期は続きものはそんなに多くありません。大きいところでは「超電磁砲T」や「ハイキュー!!」4期。
小粒なところでは「八十亀ちゃんかんさつにっき」2期と「異世界カルテット2」がある程度。
前期から引き続き放送されているのは「PSO2」「FGO」「歌舞伎町シャーロック」あたりとなります。
いやはや…今期も本数多いですね。寸感もこれでかなり割愛したほうなんです(当初は1.5倍くらいありました)
最後に実写版「ゆるキャン△」の感想を。原作からアニメ版を通しての実写化として、再現度がすごい。
特にアニメ版を参考にしていると思しき部分が多く、ほぼそのまま実写に落とし込まれてる感じがしました。
それっぽいBGMとか。演者さんたちもアニメ版の声質や演技をかなり意識されているような。
前評判の高い志摩リンはさておき、なでしこの豚野郎っぽさ。大垣の圧倒的な大垣感には笑ってしまうほど。
アニメ版との比較で気になったのは夜のシーンのリアルな暗さで、ガチの夜にしなくてもよかった気がしました。
日中に撮ってフィルターで暗くするとか、色味が鮮やかになるような方法を選ぶべきだったかなと。
テレビアニメでやっていいこと、規制の幅が急激にゆるくなってきているのかな?と「異種族レビュアーズ」や
「ドロヘドロ」を見ていると思うのですが、実際のところどうなんでしょうね。
そして気付くのは、そういう過激な表現を見たいわけではなかった、むしろ見たくないと感じる自分がいること。
どんなに出来がよくても、それを見て楽しいとは思えていない。ストレスを感じていました。
どちらもネット上の評価は非常に高く、その評価に納得もできるんですよ。客観的には。
それでも主観的には『好きなアニメ』として見ていけないな…と。娯楽でストレスを溜めたくはないので。
見たくないと思ったものは見なくて済む。それがテレビ番組のいいところです。
自分がやっているのは『好きなアニメ』探しなので。自分がやるべきことを今後も続けていきたいと思います。
余談ですが…見たくない番組は見なくて済むけど、見たい番組の合間に流れる『キライなCM』は避けられなくて
そういうCMによって見たい番組の放送が支えられていると思うと複雑な心境になります。
[1/24 追記]
今期最後発となった「BanG Dream!」3期の初回の感想を付け加えておきます。
1期がああいう内容だったことから当シリーズは期待せずに見ることに決めていましたが、3期初回の冒頭でまた
新たにその決意を固めることになりましたね…武道館発言はアニメの話だとしてもさすがにひどい。
特に今期は「推し武道」という作品が放送されていることもあって、心情的に許しがたいものがありました。
スタッフの名前を読ませる気がないオープニング、3期のための書き下ろしではない主題歌もつらいところ。
蔵に堂々と不法侵入してくるパレオはまあ…いいや。チュチュ様も期待どおりのムーブでスカウトしてくれたし。
ポピパぶっ潰す発言で逆にロックにぶっ潰される可能性に彼女はまだ気付いていない…。
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