2021年 春アニメ総括
気が付けばもう7月。今期はなんだかあっという間に過ぎた感じがします。6月も終わりか…と。
体感時間が加速した一番の原因は「Fortnite」だと思いますが、「Fortnite」に大量の時間を割く理由になった
過剰なストレスも無視できません。なので、あまり前向きな話でもないんですよね。
言わば「Fortnite」依存。…そこまで後ろ向きに表現しなくてもいいか(笑)楽しく続けているわけですし。
春アニメの感想をお伝えする前に、予定よりも掲載が遅れてしまったことをまずはお詫びいたします。
というのも、「シャドーハウス」と「蜘蛛ですが、なにか?」の最終回が7月にはみ出してしまったのが原因で
特に「シャドーハウス」を完走せずに掲載するのはよろしくないという判断からの延期でした。
蜘蛛子さんのほうは春アニメでは唯一になるのか、『制作上の都合』で遅れたので責任を負えませんな!
今期の新作寸感でピックアップした5作品には多かれ少なかれ不満を覚える部分がありました。
そのなかで、限りなく不満が少なかったのが寸感で筆頭として挙げた「セブンナイツ レボリューション」です。
自分がアニメにおいてもっとも重視するストーリーと、総合芸術たるアニメに欠かせない優れた音楽。
その音楽に意識的に乗せたアニメーション、見応えのある戦闘シーン。別れるのは惜しいと感じるキャラクター。
そして1クールというパッケージングにおける完成度と、どれも非常に満足のいくものでした。
ただ唯一、設定面のわかりづらさで全体の理解度に難があったと感じています。
本作のキーアイテムである時の書や銀の砂時計など、それがどういうものなのか把握できるほどの説明がなくて
毎回の出来事をメモを取りつつ見ていた自分ですら「たぶんこんな感じ?」程度の理解に留まりました。
そのへんがもう少しわかりやすく伝わっていれば視聴後の感想はもっと前のめりになっていたかもしれません。
学園内という狭い範囲で物語が展開していた印象はありましたが、1クールできちんとまとめることを考えれば
かえってよかったのではないかと。そのなかで友情あり恋愛あり、記憶に残る喪失もあり…。
英雄の遺志を引き継いで戦うことがクライマックスに向けて別の意味を帯びてくるところにも感心しました。
客観的には目立ちにくい作品ではありましたが、個人的にはホントに傑作の部類でしたよ。
各種配信サイトで見れるようなので、もし興味を持たれたならいまからでも初回だけでも見てほしいですね。
次いでピックアップ作品から「MARS RED」「バクテン!!」「ましろのおと」の感想を書いていきます。
朗読劇からの初アニメ化という異色の作品であった「MARS RED」は、原作の舞台劇『らしさ』を失うことなく
画面の構成自体を観客席からの観劇のように見せるシーンがいくつもあったのが印象的。
人間と吸血鬼、住む世界と命運を表す光と影の領域、その違いを悲哀を込めて巧みに描いていました。
終幕の際には思わず拍手したくなるほど。これを逆に舞台に戻して、演劇として見てみたくなりましたね。
セリフの言葉選びやちょっとした小道具の描写など、随所に独特の美学を感じられた本作。
あらためて振り返ると減点したポイントがほとんどない。こちらを筆頭に挙げてもよかったかもしれません。
マイナースポーツを題材にしたアニメのなかで「バクテン!!」は突出した完成度だったと思います。
競技の描写がとにかく美しく、心理描写の演出として多用される水や鳥の動きも非常に緻密。
アニメによくある尖ったキャラ付けも本作においては飾りにならず、掘り下げにきちんと活かされていました。
終盤のアクシデントは先生の過去編と絡めるうえで必要だったと弁護は可能なものの、印象は芳しくなく。
できれば描写として、多少なりともケガが競技に影響する様子を描いておいてほしかったなぁ…と。
直前まで体調不良だったのにライブシーンでは笑顔で活き活き歌ってた某・アイドルアニメみたいで(笑)
ケガをした手首が一瞬クローズアップされるとか、それだけでも緊張感は全然違っていたのでは。
テレビ版できちんと品質の保証をしたあと劇場版の制作を発表をする、という流れは好印象でした。
「ましろのおと」は楽器一本の演奏でありながら、方向性の違いが素人耳にも伝わってくるのがとにかくすごい。
セリフによる説明に頼ることなく、音だけで違いを実感できることに毎回感心しながら見ていました。
勝った理由、負けた理由も視聴者の納得に足りるだけの解説がきちんと織り込まれていたのがよかったです。
1クールのパッケージングに難があるのが本作のウィークポイントで、スッキリ見終えられなかったんですよね。
簡単にはたどり着けない答えを追い求める物語なだけに仕方のないところではあるのですが…。
継続枠からは「憂国のモリアーティ」後半1クールを挙げたい。とにかくバツグンにおもしろかったです。
単純にモリアーティとホームズの衝突と見てもおもしろいし、同時代のイギリスにおける歴史の『if』を描く作品
としても大興奮を保証できる、アサクリシリーズなどが好きな人には全力でオススメしたい内容でした。
女性向けという側面もあるにはあるのですが、(あくまで私見ですが)最終回までは鳴りを潜めていた…かな?
それにしても火事の描写が多いアニメだったなぁ。炎の中から生まれて炎の中に消えていくような、紅い物語。
序盤こそ印象のよくなかった「BLUE REFLECTION RAY/澪」は、個人的にはこの1クールで化けましたね。
どういうお話なのか伝わりづらい問題は1クール経っても変わらないものの、わかればおもしろい。
たとえるならハイティーン向けのプリキュアというか。一時期流行った魔法少女モノの系譜なのかも。
悪しき記憶も自分の一部として受け入れるか、否定して消し去ることで安定を手に入れるか。二大派閥の衝突。
作画の不安定さはあいかわらずですが、話をおもしろく感じてくると気にならなくなるもので。
しかし、ここぞという戦闘シーンでも絵的に盛り上がらないのは残念ですね。そのへんの弱さは否定できません。
個人的には後半1クールを見るのにじゅうぶんな期待ができたので、今後も楽しみに追い続けていきます。
世間的には「ゴジラ S.P」で大盛り上がりだったようで。たしかにおもしろい作品ではあったと思います。
今期ほかの作品でもテーマになっていたシンギュラリティなる現象をゴジラで描くとしたらどうなるのか。
…という怪獣モノとしての部分はあくまで建前で、本作の核はSFと謎解きの部分だったのではないかと。
悪意のある言い方をすれば、ゴジラな部分は視聴者を集めるための釣り餌でしかなかったみたいな?
ゴジラという看板がなかったとしてもSFとしてのおもしろさ、謎解きのおもしろさは保たれると思ったので。
そう感じたのはおそらく、自分はそれほど怪獣映画ファンではないからかもしれません。
見た瞬間にどの作品のオマージュかわかるくらいゴジラに傾倒している人とは魅力を感じる部分も違うと思うし
ゴジラを冠するわりにゴジラ出てるシーンそんなに多くねえな?と率直に思ったというのもあり(笑)
今期の話題作のなかから選ぶなら、個人的には「シャドーハウス」。こちらも謎解きのおもしろさがありました。
その謎が視聴者にわかりやすいカタチで1クールの終わりまでにきちんと明かされていくのも好感。
原作未完のアニメ化だとそのへんはぐらかされたまま終わる作品もあるので、ここはしっかり評価したいところ。
それと、エミリコというキャラクターの魅力に大いに引っ張られたところはあると思います。
そんなわけで、今期の話題に乗っかりたいのであればまずは「ゴジラ S.P」と「シャドーハウス」を。
当ブログを信頼していただけるなら「セブンナイツ」と「MARS RED」、「憂国のモリアーティ」を推薦します。
今期ほかに好印象だったのは「やくならマグカップも」「恋と呼ぶには気持ち悪い」「ドラゴン、家を買う。」
あたりが挙げられます。見終えたあと心に良いものが残る、結果としてそんな選抜になりました。
続きモノでは「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀3」と「NOMAD メガロボクス2」が期待どおりの出来。
中国原作の「魔道祖師」は続く3期を日本国内で見られることを祈りつつ…「TBF」同様、全然完結してないし!
「美少年探偵団」も忘れてはいけませんね。ニガテだった西尾維新原作アニメで初の完走作品となりました。
西尾節の濃さ、小説原作にありがちな文量の多さは本作でも変わらず。それでも話は比較的わかりやすいほうで
加えて探偵という要素があったおかげで興味を維持し続けられたのかもしれません。
とはいえそんなに探偵要素ないんですけどね(笑)探偵ではなく少年探偵団なので、そこは履き違えないように。
最後のD坂のエピソードはそのサブタイトルも含め、個人的には要求に合う楽しみ方ができました。
さて…寸感で話題作として挙げた「Vivy」と「86」ですが、個人的にはビミョーな感じ。
「Vivy」はクオリティに関しては認めます。WIT STDIO制作なのでそこは間違いありません。
しかし個人的な『SF観』とのズレというか、話数を重ねるたびに埋めようのない亀裂が広がってしまいまして。
半世紀先の未来、そこから10年後、20年後、さらには100年先の…と、段階的に刻んでいく本作の未来の描写は
その経年を感じさせるものにはまったくなっていなくて、1年後と言われても信じられる程度のものでした。
一番の違和感は主人公・ヴィヴィ自体で、彼女は100年ものあいだ稼働し続けてるんですよね。
ドッグイヤーと言われるITの世界でハードウェア的な変更もないまま、新型と遜色ない働きをしている。
まあそもそもの話、時代をさかのぼってプログラムを送信するってところから説明はつかんわけですが。
AIの反乱を描く作品として視聴者の想像を超えるものにならず、非常に前時代的なSFというふうに映りました。
それと結末かな。あの結末だけ取り上げても賛否両論、首をひねる人のほうが多かったのでは。
長月達平×梅原英司のダブルネームに期待しすぎてしまったところはあるかもしれません。
「86」は2期を残しているので今期の分の評価とします。本作はまず、戦争モノとして見てはいけない気が。
どうして戦争が始まって、いまも続いているか。そういった基本的な設定は重視されていないと思うのです。
どちらかといえば局所的な、二国間の戦闘で消費される被差別民族のほうが大事で。
彼らの生き方や考えていること、虚しく死んでいくこと。そのエモさを長く楽しんでもらうための戦争というか。
防衛戦を続けている側の共和国の国民は戦争に無関心で、攻め込んでくる帝国側にも侵攻の目的が見えなくて。
ひょっとすると戦隊が向かう先に帝国という国はもう存在しなくて、レギオンとの戦闘だけが続いているのでは。
国としての意思の見えなさ、描写の不透明さに視聴中そんなふうに思うこともありました。
戦争と呼ぶには極めておかしな印象であることが、逆に言えば「86」独特の個性なのかもしれません。
ただ、アニメ版を見ている限りではそこまで前向きに捉えるのは難しかったですね。
加えて本作を見ていて気になったのは、欧米風の文化圏であるにもかかわらず日本風の描写が多かったこと。
春には桜を楽しみ、夏にはセミの声と花火、そして彼岸花…みたいな。ものすごい違和感がありました。
戦隊が侵攻中に見つけたゴーストタウンも極めて日本的な風景だったことが気になっています。
(帝国と呼ばれる国が第二次大戦に勝利した日本で、ユーラシア大陸へ侵攻した形跡では?という見方もあり)
まあ、それでも「転スラ日記」ほどのジャパナイズではなかったので(笑)アレはもうほぼ日本ですよ。
日本を舞台にした日常系アニメのフォーマットに異世界モノを投げ込むとああなるんだなぁ…。
でもキライではなかったです。「転スラ」はやっぱりこの時期がおもしろかったとあらためて実感できました。
寸感ではピックアップ作品としていた「スーパーカブ」はいろいろあって評価は下げ止まりに。
免許取り立ての小熊ちゃんが二人乗りをしている描写への賛否両論が思わぬ広がりを見せていました。
「アニメの出来事だから」云々ではなく、彼女のキャラクター造形のうえで問題があると個人的には思いました。
本作には『車体の説明書を読みながら丁寧にオイル交換を繰り返す』という描写が事前に出てきます。
免許取り立てで几帳面にルールを順守する。経済面でも厳格なところを見せる小熊ちゃん。
そんな性格を見せてきた小熊ちゃんがはたして二人乗りなどするだろうか?という疑問があったんですよね。
人間にはいろんな側面があるとはいえ、そのシーンにいたるまでの人物描写と比べればやはり違和感があります。
終盤で恵庭ちゃんが事故った際に救急車を呼ばず、自宅へ運んで入浴させたのも疑問といえば疑問で。
その対処に恵庭ちゃんの両親が感謝していたのもなんか違和感がありまして…奇妙な世界だなぁと。
原作の小熊ちゃんはもっとやべー性格でアニメではだいぶマイルドになってるそうな。原作が垣間見えてるのか。
小熊ちゃんといえば、彼女のテーマとして有名なクラシック曲が複数使われていたことも気になりました。
クラシック曲を使うこと自体はいいんですけど、どうにもシーンに合わない選曲ばかりで。
なんというか…著作権フリーのBGMとして流してるだけみたいな、意図のない使い方をしていると感じたのです。
音楽制作が複数人クレジットされている本作で、あえてクラシック曲を採用する理由も謎でしたし。
ここぞという場面でクラシック曲を起用した「MARS RED」があっただけに、どうしても見劣りを感じます。
えーと…長くなってしまったので(いつものことですが)春アニメの総括はここまでとします。
視聴中に書き留めたメモから他にも話したいことがいくつかあったので、また別の記事にまとめようと思います。
おそらくそれほど時間はかからず。夏アニメの寸感までには確実に公開できるでしょう。
で、もうひとつ忘れてはいけないのが6月末にようやく放送された「ワンダーエッグ・プライオリティ」特別編。
1時間の放送枠のうち前半は比較的わかりやすい解説のついた総集編で、新着分は後半30分のみという構成。
結末から先に触れると、大半の視聴者はこれで完結したとは感じなかったと思うんですよ。
でも、本作を通じて伝えたかったことはすべて描き切っていて、それをもって完結と見ることもできそうな気が。
おそらく本作において、友人を生き返らせることや敵を倒すことはそれほど重要ではないんじゃないかと。
人間はフィジカルではなく、メンタルとメンタルのあいだに生まれるものこそ本質なのかもしれません。
たとえ相手が何者であったとしても、人格やその人との思い出は嘘ではないはず。
本当の意味で友人とふたたび出会うには生き返る前に、失う前に会いに行かなければならない。
決して手放してはいけない。そんな、誰かの後悔から生まれた警告みたいな…という解釈で合ってるかどうか。
ひとつ気になっているのは、アイがふたたびワンダーを救うための戦いへと向かったこと。
自殺者でなければワンダーにはなれないわけで、探し求める相手が既にこの世にはいないと悟っていたのか…?
いまだ不透明な部分が多いし、これが正解というひとつの答えはないのかも。興味深い作品ではありました。
当ブログのアニメレビューは難しい言い方をすれば『体系的な批評』に類するものなのかもしれません。
自分はアニメを見るときも感想を書くときも、なにかしら過去の作品との比較がともなってしまいます。
各作品を個別に評価できてるとは言いがたく、100点満点と言えるような作品が滅多に出ないのもそのせいかと。
100点満点ではないということは、なにかしらの減点ポイントがあるわけで。
当ブログでは減点するなりの理由も必ず書くようにしていますが、そもそもそういう部分を読みたくないという
「好きな作品のことは全部褒めてほしい!」タイプの人にはまったく届かないレビューなんですよね。
現在のアニメシーンを語るのに必要な作品の良いところだけ知りたい、いわゆる時短重視な人だとなおさら。
ただ、いまネット上で求められてるのはむしろそっちの文章なんだと思います。
好きな作品をとにかく熱烈にオススメする紹介文か、もしくは「これだけ見ておけば」というリスト化した記事。
現代人はとにかく時間がないしストレスを抱えている。フォローとミュートで情報を取捨選択している。
読んでもらえる文章を書いてお金をもらっている人たちはホントに大変でしょうね。
自分は『誰かが読みたい文章』ではなく『自分が言いたいこと』を書いて載せてるだけなので気楽なもんですが。
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