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2021年7月23日 (金)

2021年 夏アニメ寸感

関東甲信は例年より梅雨入りが遅く、梅雨明けが早い、つまり梅雨の短い年となりました。
東京オリンピックの開催数日前~当日というタイミングで本稿を執筆しているのですが、本当に開催されるのか
実感が湧かないままで奇妙な感じがしています。毎日のように新たな問題が明るみに出ていますし…。
やるべきかやめるべきか、敵味方で見られる気がして避けたい話題ではありますが。まあ時事ネタとしてね。


夏アニメがはじまって早くも3週間が経とうとしています。新作はほぼ出揃ったと言ってよいでしょう。

今期はコロナ禍と五輪対応の番組編成が重なるせいもあってか、再放送が多めな印象があります。
TOKYO MXの月・火は新作が2日合計で2枠しかないし、TBSの木曜深夜枠は「まちカドまぞく」の再放送のみ。
テレ東金曜深夜は「八月のシンデレラナイン2021」と銘打って2度目の再放送をやっているほど。

一番驚いたのは、MXで放送されていた「IDOLY PRIDE」の再放送がテレ東の夕方枠ではじまったこと。
これまで大手民放で放送したものをMXに輸入というパターンはいくつか見られましたが、輸出は初めてかも。
テレ東の夕方枠を取れるマネーパワーがあるということでしょうか…ソシャゲがそこそこ人気みたいですし。
売るものがあるアニメは浅い時間の枠を取れる。そのうち夕方がソシャゲアニメだらけになったりして?


さて…今期の新作ですが、正直どの作品をピックアップするかでだいぶ悩みました。
ハッキリとした手応えに欠けるというか、新作として紹介するには条件が微妙だったりとか…まあ始めますか。


今期の作品で、初回でもっとも衝撃を受けたのは中国製のアニメ「天官賜福」です。
原作は前期まで放送されていた「魔道祖師」と同じ墨香銅臭(モーシャントンシウ)で、「魔道祖師」と同じく
日本国内の地上波初放送という扱いになるので、正確に言えば今期の新作ではありません。

本作も舞台は中国の古代で、霊力や呪術といったファンタジー的な要素が共通しています。
しかし「魔道祖師」よりはわかりやすく、物語の導入も(日本人目線では)馴染みやすいものになっています。
初回は「FGO」のCMくらいのクオリティの映像が30分間続き、まさに目を奪われるような体験でした。
「魔道祖師」で感じた「中国のアニメってここまで来てるんだなぁ…」という感心のさらに上をいった感じ。

ただ、文化的・デザイン的な側面で日本人への訴求力に欠けるのがひとつのウィークポイントだと思います。
決定的に異なるのはやはり主人公の服装で、清廉潔白な白装束は主役の服装としてはやはり地味です。
その服を最初のエピソードで早々に捨てさせ、女装した(笑)のは画面が華やいでよかったかもしれません。

それにしても、中国の作品は伝統的に主役に女装させる文化でもあるんですかね…ほら、「少林寺」とか。

話が初回の範囲を超えてしまいますが、最初のエピソードで感じられた設定の厚みにも触れておきたいところ。
寺社に祀られている神格やその謂れなど、それだけで独立した作品を書けそうな説得力があります。


続いて紹介しておかねばならないのが「小林さんちのメイドラゴンS」。京アニのテレビアニメ復帰作です。
続きモノなのでこちらも新作とは言いがたいのですが、その境遇ゆえに触れずにはいられません。
初回が始まった瞬間に「あぁ…これは京アニのアニメだ」と感じられる、間違いのない京アニの作品。

初回でメイド喫茶を焼き払うだの物騒な話が出てきますが(笑)むしろ、これを京アニ自身がやってくれないと
他のスタジオが火災のシーンを安心して扱えないと思うし、ある種の配慮だったのかも?
ルコアさんの時点で規格外のバストサイズだったのにさらに大きな子が出てくるわ、小林さんがTSさせられるわ
初回から性癖てんこ盛りのかなりぶっ飛んだ内容。それでもなんだか安心感しかないアニメです。

原作のクール教信者は今期ほかに2作品もアニメ化されており、何気にヒットメーカーなのかもしれません。


個人的に「魔法科高校の劣等生」が大好きなので「魔法科高校の優等生」にも期待を寄せています。
「優等生」は「劣等生」のスピンオフとして、公式に生み出された二次創作とでも思えばいいのでしょうか。
本家「劣等生」とは絵柄など異なる部分はあるものの、本家の奇妙な特徴は継承されている感じで。
妙に記憶に残るBGMや深雪や七草会長の尖った部分など、さらに強調されておもしろおかしく描かれています。

本家のエピソードを別の視点から見るおもしろさ、二次創作的な解釈の一致のおもしろさなど魅力はさまざま。
「優等生」というタイトルが指すのが深雪だけではないのも本作の視点の興味深いところではないかと。
たぶん「劣等生」が好きな人は「優等生」も好きになれる。自分はそう思っています。

唯一気になるのはお兄様こと達也が絵柄の変化によってだいぶ印象が異なって見えることですね。
本家のキャラクターデザインって絶妙なバランスで成り立っていたのだなぁと、本作を見て初めて実感しました。


そろそろきちんとした今期の新作も挙げたいのですが、強いて言えば…という程度に留まってしまいます。
初回で目に留まったのは「白い砂のアクアトープ」と+Ultra枠の新作「NIGHT HEAD 2041」。

P.A.WORKSの新作「白い砂のアクアトープ」は沖縄を舞台にした、ふたりのヒロインの再生物語。
かたや寂れた水族館の若き館長、かたや東京から逃げるようにやってきた元アイドル。ふたりが偶然に出会って
水族館の立て直しと新しい生き方を探していく、広い意味で言えばガールミーツガールな作品です。
画面の精細さはいかにもP.A.WORKSといったところで、あとはどれくらいお話がついてくるか。

「NIGHT HEAD 2041」は30年前に人気を博したドラマから派生した新作で、白組制作の3DCGアニメ。
超能力者が弾圧される世の中で抗いながら生き続ける兄弟、というベースの部分は本作でも変わらず。
初回の近未来の背景描写に惹きつけられ、そのまま飽きることなく30分間見続けられました。
フジテレビ的には「PSYCHO-PASS」の次につながるような位置付けで本作を捉えていそうな気がします。
劇中で提示される情報をもとにきちんと考えて見る、オトナ向けに作られたアニメとして信頼できそうな予感。

放送直前の特番でやたらとドラマ版をフィーチャーしていたので、ドラマを見ていないと楽しめないのでは?と
始まるまではちょっと不安だったのですが、散りばめられた小ネタに気付かない程度で支障なさそうです。

今期のピックアップ5本はとりあえずこんな感じで。次いで比較的好感触だったものを挙げていきます。


「ヴァニタスの手記(カルテ)」は毎シーズン一本は必ずある感じの吸血鬼モノ。
原作は「PandraHearts」の望月淳。女性向けっぽい印象はありますが決してBLではないようです。
吸血鬼がそれぞれもつ真名。それを歪められて『禍つ名』に転じ、理性を失ってしまった吸血鬼を魔導書の力で
治療していくという設定に新しいものを感じ、興味深く見させてもらっています。

今期はこの「ヴァニタス」をはじめとして花江夏樹が主演を務める作品が多いですね…あと、鬼頭明里助演も。
鬼滅効果なのかそれとも以前からなのか、キャスティングにある種のブームが来ているのは間違いなさそう。

吸血鬼ものといえばもう一本、あの押井守の最新作「ぶらどらぶ」がいよいよ放送開始となりました。
本作はなんといいますか…『古くて若い』みたいな、少なくとも令和のものではない独特のセンスに満ちていて
自主制作アニメの延長線上にあるような、実験的な匂いのするドタバタしたアニメという印象。

急に実写映像が挿入されたり脈絡もなく爆発したり、ちょっと普通じゃないので(笑)見て判断してほしいです。

TBSの金曜深夜枠の最後尾ではじまった「カノジョも彼女」は「アホガール」のヒロユキ原作のラブコメ。
いや、広義で言えばラブコメなんですけどコメのパワーが強すぎてラブはあんまり感じません。ほぼコメディ。
初回冒頭から怒涛の勢いでたたみかける常軌を逸した判断と、対する激しいツッコみ。
主要3人のどれもが変人で、そのなかでも本作の核は咲が…というより演じる佐倉綾音が握っています。

同枠でラブコメというと性的に生々しい作品が集まる傾向があって、本作も見始めるまでは不安だったのですが
そのアホさ加減と軽快なツッコみによりカラッとした味わいになっていて安心して見れます。

アニメシリーズとしては17年振りの新作となる「ゲッターロボ アーク」は、ストーリー上のつながりこそもう
わからなくなってしまっているものの、その『らしさ』に見ていてニヤニヤさせられます。
あの当時の空気感や勢いを現代の技術で忠実に再現している、シリーズファンに向けた作品と言えるでしょう。
個人的に妙に好きなのがOP冒頭、3人のパイロットがドタドタ走ってズバッと座るシーンです。


ほかに続きモノとしては「マギアレコード」2期、「アイドリッシュセブン」3期、「転スラ」2期2部など。
「ひぐらしのなく頃に 卒」はいいかげん我々を卒業させてくれるでしょうか…きちんと幕を閉じるといいなぁ。

先述のTBS金曜深夜枠の先鋒は「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X」
毎回オーディオコメンタリー付きという豪華な内容で、本編と並行してWebラジオ感覚で楽しんでいます。
次鋒、前期から引き続き第2クールに突入の「BLUE REFLECTION RAY/澪」も欠かせない存在。

NHK Eテレの日曜19時という異例の枠ではじまった「ラブライブ!スーパースター!!」は、その異例さのせいで
初回は放送時刻を忘れ、第2話で録画予約を忘れるという失態により視聴を断念いたしました…。
初回を見た印象は旧体制への逆戻りという感じで、これなら見なくてもいいかな?と思ったのが正直なところ。
少なくとも、新しいことをやってやろうという意欲に満ちていた「虹ヶ咲」のあとに見るものではないかと。


あとは今期の傾向としては異世界転生モノが多い…だいぶ食傷気味ですが、まだまだこの流れは続くんだなぁ。

今期の異世界転生モノのなかからひとつ挙げるとすれば「現実主義勇者の王国再建記」でしょうか。
企業の経営再建のために国外から指導者を迎えるなんてのはよくある話ですが、それを異世界でやってみたのが
本作でして、ようするに転生者が国王に成り代わって弱貧国を立て直していくというお話。

文明水準や経済に関わる技術設定が地味にしっかりしており、それだけでも異世界モノとしては好感度が高め。
たとえるなら戦闘のない「ログ・ホライズン」を見てるみたいな、そんな視聴感のあるアニメです。
劇中で引用された『Give a reasen』に話題が集中していますが(笑)それ以外でも切り口の異なる作品として
そこそこ期待しつつ視聴し続けております。チート感も薄く、落ち着いて見ていけそう。

チートといえば気になるのが「チート薬師のスローライフ ~異世界に作ろうドラッグストア~」
原作からだいぶ改変されてるのか、主人公が転生してからドラッグストアを開店するまでのくだりが省かれてて
アニメでは街の住人に受け入れられている状態からスタートしています。
また、タイトルに「チート」や「異世界」というワードが踊っているわりにそういう気配が一切ありません。
タイトルを隠した状態で見始めたらおそらく本作が異世界転生モノであることに気付けないのでは。

あくまで推測ですが、異世界チート要素をわざと切り捨てる狙いでこういう作りにしたのではないかと。
監督やシリーズ構成には土日の午前中に放送される作品に多く関わる方々を据え、異世界モノをベースにしつつ
より低年齢層に向けた作品としてアレンジする試みなのでは。

原作を知らない自分の目線から言えば、アニメ版「チート薬師」の方向性はなかなか悪くないと思ってます。
ただ、毒にも薬にもならないという意見も理解できます。ハイティーン向きではなさそう。


どれを挙げるか困ると言いつつ今回もまた長くなりました。なんだかんだで見るものたくさんありますね。

今期は木曜と土曜の本数が集中していますが、再放送枠が多い月曜と火曜で確実に消化し切れるようになってて
録画が積み上がる心配はいまのところありません。こういう編成も意外と悪くない?



主観的な感覚で言えば、ここからどれくらい『好きなアニメ』が増えるかが大事なんです。
『好きなアニメ』になると多少の落ち度があっても楽しく見られるので。視聴体験の向上につながるというか。
なので、嫌われないための最低限の用意はしておいてほしいと思っています(笑)なんて身勝手な!

制作者目線なら「悔しいけどおもしろい」はありそうですが、視聴者目線で「キライだけどおもしろい」という
感想が出ることはまずないと思うし、『好かれる作品作り』もバカにできないのでは。

好きになると「これ絶対おもしろくなる!」という期待も芽生えます(確信ではなく、あくまで期待)。
自分が毎シーズン書いてる寸感はあくまで期待でしかないんですよ。「これがすごい」という紹介文ではなくて
競馬にたとえるなら(?)「自分はこの組み合わせで馬券を買った」と公表するようなもの。
予想が的中しなかったとしてもその馬に期待していた、好きだったという気持ちが変わることはありません。


今回紹介しなかった作品については後日、新たな記事で触れるかもしれません。またメモが溜まってるので。

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