ゲームレビュー「アンチャーテッド コレクション」
[プラットフォームと購入方法]
2020年のPlaystation Storeのキャンペーン「Play at Home」で無料配布されたタイトルのひとつ。
[クリアまでにかかった時間]
PS3時代に発売されたシリーズ3作品を収録。1作目「エル・ドラドの秘宝」は約6時間半。
2作目「黄金刀と消えた船団」は約9時間。3作目「砂漠に眠るアトランティス」」は約7時間半。
[ゲーム難易度]
3作とも段階的に選択可能。パズル要素は少なめで、気になるのは戦闘パートのみ。
障害物を盾にして、落ちている銃弾を拾いつつ手榴弾の警告に気を付ける。基本はこの繰り返しとなる。
敵の耐久力が全体的に高めで、即死攻撃や『裏取り』を狙ってくるタイプもいる。周囲の確認を怠らないこと。
状況を早めに好転させるためにもヘッドショットは積極的に狙っていったほうがいい。
[トロフィー難易度]
難易度別のクリア実績、タイムアタック実績あり。加えてアイテムの収集や大量の武器使用実績がある。
「コレクション」ではそれが3作品分になるので、よほどの熱意がないとコンプリートは難しい。
[全体の評価]
・後方互換機能のないPS4で、PS3時代の3作品をまとめてプレイできる点は大いに評価すべき。
・往年のテレビ映画を彷彿とさせる日本語吹き替え。英語音声に切り替えると薄味に感じてしまう。
・チープな印象を与える日本語フォント。タイトル画面で既に浮いており、場面によってはかなり読みづらい。
・薄っぺらい音楽。B級アクション映画の再現と思えば悪くはないか。
・基本的にUI表示のないスッキリした画面なせいか、たまに表示されるボタン入力指示が大きくて無粋に見える。
・退屈でくどい戦闘。当シリーズの体験を劣悪なものにしている最大の原因と言っていい。
・銃弾の消費が激しいのに、落ちている銃弾を手動でひとつひとつ拾わなければならない(自動収集がない)
・倒したとき大袈裟に宙返りする敵も、B級映画の再現と思えば笑って許せるだろう。
・ステルス可能なように見えて、30秒後にはやっぱり銃撃戦に展開する潜入パート。
・時代錯誤なQTE。ラスボス戦でもやっぱり要求される。
・その場面で次に何をさせたいか、どこへ向かわせたいのか、プレイヤーの誘導が甘い。
・幾度となく繰り返される床の崩落、手掛かりの落下、壁の倒壊。多すぎればさすがに鬱陶しくなる。
・画面の手前側に向かって逃走するイベントは没入感を削がれる。きょうび採用してるゲームは少ないのでは。
・本当にコレクション目的のみで配置されている、なんの文脈ももたない遺物。
・達成感のない結末。記憶に残らないストーリー。
フォントの選択から察するに、おそらく『英語音声・日本語字幕』のプレイを想定していないのではないか。
一度でもテストプレイすればすぐにわかる字幕の読みづらさを回避しようとした気配すらない。
また、次の場面へ移るなどの都合で字幕表示がキャンセルされるときがある(重要なセリフではない)。
「エル・ドラドの秘宝」
・戦闘パートが占める割合が非常に大きく、シューティングゲームと思ってプレイしないと厳しい内容。
・人物のモーションが拙い。重量感のないふわふわした移動。ムービーシーンでも粗さが目立つ。
・たまに俯瞰視点に切り替わるカメラ。意味がない場面も多く、操作を変える必要があって煩わしいだけ。
・ジェットスキーに乗って戦うステージは操作性が非常に悪く、さらに即死攻撃まで飛んでくる。
「黄金刀と消えた船団」
・前作の基本的なシステムはそのままに、ステージ構成に変化をつけて印象をだいぶ良くしている。
・市街地のステージが増えたことで情報量の増加、高精細化を実感できる。
・前作にはほぼなかったパズル要素が盛り込まれ、頭を使う楽しさを感じられるようになった。
・正体不明の敵との台本どおりの戦い。退ける手順が決められているので、"撃たされる"虚しさを感じてしまう。
「砂漠に眠るアトランティス」
・くどい銃撃戦の再来。誘導の甘さ。前作で多少改善された部分がふたたび悪化している。
・幼年期のコロンビアや現代編のイギリスの市街地など、ステージのバリエーションがさらに増している。
・近くに落ちている銃弾をまとめて拾えるようになったのは地味な改良ポイント。
・プレイヤー側が銃を持っているにもかかわらず格闘戦を無理強いしてくる大型の敵。純粋なストレス要素。
・美しいイエメンの市街地を台無しにする、飽きるほど繰り返される格闘戦と無意味な追いかけっこ。
・「なんでこんなことさせられてるんだろう?」と、ふと冷静になってしまうような意味不明な状況の数々。
・魅力のない悪役。理不尽に強靭な描かれ方をしているが、ネイトも似たようなものかもしれない。
[総括]
2022年のいま、なぜ「アンチャーテッド コレクション」なのか。実写映画の公開に合わせたわけではない。
積みゲーを消化しようとライブラリーを確認していたとき、たまたま目に留まったのがこれだったのだ。
アンチャーテッドシリーズといえばPlaystationプラットフォームを代表する超有名アクションタイトルである。
当ブログでは以前、Vita版「地図なき冒険の始まり」を取り上げ、酷評したことがあった。
通算4作目でこの出来はありえない。おそらく携帯ゲーム機向けにダウングレードした結果ではないか。
世間で絶賛されているアンチャーテッドはきっとPS3版にあるのだろうと前向きに考えるよう努めていた。
しかし、「アンチャーテッド コレクション」に収録されているシリーズ1作目「エル・ドラドの秘宝」を始めて
1時間も経たないうちに前向きな考えは消え失せた。そして次に起動したのは1年半後だった。
(つまり、実際にプレイ開始したのは2022年ではなく2020年である)
いくらPS4向けにリマスターされているとはいえ、もとのゲームが発売されてから15年近く経過している。
あちこち粗が見えるのも仕方ないと言えるが、同時期に発売された他の作品とくらべても、グラフィック以外の
あらゆる部分で見劣りを感じてしまう。お世辞にも出来が良いとは言えない。
どこからともなく湧き出てくる敵を延々撃ち倒す戦闘パートは「バーチャコップ」や「ダイナマイト刑事」など
PS3よりもさらに1~2世代前のアーケードゲームを連想させるところがある。
この「アンチャーテッド」も、硬貨を投じてプレイするアーケードゲームだったら許せたかもしれない。
いや、許された時代もあったのだろう。PS3専用タイトルが少ない時期だったから絶賛されたのではないか。
1作目の印象は4年後に発売されたVita版とほぼ変わらず、2作目以降を残して雲行きが怪しくなっていた。
シリーズ2作目「黄金刀と消えた船団」は前作最大の苦痛だった戦闘の割合が減り、パズル要素が増したことで
基本的なシステムは変わっていないのに印象がだいぶ良くなっていた。
それでもなお戦闘は退屈なのだが、中断を挿まないとやってられないほどの苦行ではない。
全体の90%をストレスが占めていたゲームが40%まで抑えることができたと聞けば、評価したくもなるだろう。
この調子でいけば次はもっと改善されているはずだ。続けて3作目を始めるにはじゅうぶんな希望となった。
そんな淡い期待も、3作目「砂漠に眠るアトランティス」をプレイし始めてすぐに消し飛んでしまった。
まるでネイトが踏んだ床のように、つかんだ壁のように、一歩進むたびにボロボロとモチベーションが削られる。
悪い意味で1作目への回帰。もはや当シリーズの個性、あるいは"味"と捉えるしかないのかもしれない。
全般に言えるのは「加減を知らない」「くどい」。まるで父親の自分語りに付き合わされているかのようだ。
銃撃戦に限った話ではない。「ほどよい分量」というものをまったく考えていないように思える。
当時最高峰と言われたグラフィックが時間経過によって特筆すべきものではなくなり、ゲームの本質的な部分が
顕わになった結果、当時のレビューが過大評価にしか見えなくなってしまった。
グラフィックやゲームシステムに左右されない良質なストーリーがあればまだ救いになったかもしれない。
残念ながら当シリーズのストーリーは取り立てて興味を引くものではない。というより記憶に残らない。
宝物を探して各地を破壊してまわり、手に入らないまま終わる。あとから振り返ると本当にそれしかないのだ。
「コレクション」で得られた唯一の収穫は、トゥームレイダーシリーズとの比較を理解できたことだ。
本来『元祖』であるはずのトゥームレイダーシリーズがアンチャーテッドシリーズの模倣であるかのように揶揄
されていた理由が、今回「コレクション」をプレイしてようやく"納得"できたのである。
2作目で雪山、3作目でプレイアブルな幼年期や中南米の都市が登場するなどシチュエーションも含めて、後発の
新生トゥームレイダー三部作に酷似した部分があることを、三部作のファンであっても認めざるをえない。
アンチャーテッドを反面教師として、よりブラッシュアップされた体験ができたと思えば悪い気はしない。
『元祖』の面目躍如か。『映画的な体験』にこだわらず、ゲームとしての遊びごたえを追求した結果だろう。
新生三部作において『インスティンクト』という視覚的なヒントを実装したのは、アンチャーテッドを踏まえた
うえでのひとつの解答であったのだと「コレクション」をプレイしたいまなら考察できる。
戦闘はより刺激的に、パズルは知的に、ストーリーは記憶に残るものに。後発なりの優れた点があったのだ。
「コレクション」のレビューで言うのもなんだが、新生トゥームレイダー三部作をぜひプレイしていただきたい。
[オススメ度]
オススメしない。無料で入手できた場合に限る。
過去にPS3版をプレイしたことがあるなら再評価という観点でプレイしてみるのも一興かもしれない。
プレイヤーとしての自分と、主人公・ネイトの感情がもっともリンクした瞬間がこの場面でした。
アンチによる叩きと受け取られても仕方ない記事になりましたが、これは受けた苦痛に対する正直な返事です。
通路を抜けた先に『これから銃撃戦がはじまりそうな障害物』が配置されているのを見ただけで気分が悪くなる。
1作目の序盤以降ずっとそんな感じでした。戦闘パートのバリエーションが乏しいのに、量だけは多い。
唯一ちょっとだけ気分が持ち直したのは3作目の船の墓場みたいなところ。
侵入するルート選択に自由度があり、ある程度まではステルスキルによる排除が可能な設計になっていました。
ああいう設計にもっと早い段階で気付き、シリーズ全体に配置してくれていたら…と残念でなりません。
新生トゥームレイダー三部作はステルスで優位に立てるよう設計されている戦闘パートが豊富なんです。
頭を使えば使っただけの見返りがある。そういう理由で、戦闘だけ切り取っても優れていると言えるわけです。
…いや、記憶のなかで美化されてるところもあるかな。あらためて三部作をプレイし直すのもありかも?
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