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2022年4月 4日 (月)

2022年 冬アニメ総括

コロナだけでも世の中慌ただしいというのに、新たな騒乱が巻き起こり…平和のありがたみをあらためて実感。
同時に、我々にできることのあまりの少なさに無力さも感じます。せめて知る努力だけは怠らないようにせねば。

さて…冬アニメの時期も過ぎまして。すでに春の新作も一部放送がはじまっているのですが、まずは冬の感想を。

全体的な話をすると、放送開始前の期待や初回の印象から大きくブレることのないシーズンでした。
寸感で筆頭に挙げた「時光代理人」の衝撃的なおもしろさは他の追随を許さず。そして残酷なクリフハンガー。
最終回にあんなことされたらホント困る…いや、うれしい悲鳴ではあるのですが。
シリーズ構成の妙。最初から最後までムダなエピソードがひとつもなく、すべてがクライマックスにつながる。
「こんなおもしろい作品がまだまだ出てくるんだ」と、脅威と驚喜が入り混じった感情で最後まで楽しめました。

この感覚、アニメではありませんが「アンナチュラル」を見ていたときのそれに近いかもしれません。
できるだけ多くの人に見てもらいたい。もっと注目されるべき作品であると強く思いました。


次いで挙がるのが「王様ランキング」と「プラチナエンド」。どちらも2クール作品で優れた内容でした。

「王様ランキング」はなんかもう…ケチのつけようのない傑作。対象年齢を限定しない、万人に向けたアニメ。
登場人物それぞれに表の顔と裏の顔、そして秘めた思いがあり、誰かのために命を懸けて戦っている。
あれだけ多く出てくるのにムダな登場人物が一切ないというのもすごいですよね。
みんなきっちり話に絡んできて、積み重ねによって視聴者のなかで醸成され、一堂に会したときの熱さがある。
それを支えるWIT STUDIOの力があったことも忘れてはなりません。主題歌がもたらす相乗効果も、全部。

唯一気になるのはタイトルにもあるランキングの話で。最終回でもまったく触れられなかったランキング要素は
本当に必要だったのか、「王様ランキング」というタイトルでよかったのか?と考えてしまいます。
なんかもっと適切で印象のよいタイトルはなかったものかと。注意を惹くタイトルではあるのですが。

「プラチナエンド」はメトロポリマン脱落以降が特におもしろく、期待を超える内容になっていました。
メトロポリマンがいたころは掛橋側とポリマン側の二極化で進んでいて、ちょっと退屈な印象があったのですが
残った神候補たちの理想や信条、死生観がぶつかり合う2クール目は見ながら考える楽しさがありました。
意外なカタチで神が決まり、さらにもっと意外な結末へ向かっていくわけですが…あの結末は賛否両論ありそう。

個人的な感想を言えば「えぇぇ…」みたいな(笑)どう受け止めればいいか困るような結末。
決しておもしろくないわけではないんですけど、う~ん…最終回の手毬さんがかわいかったから、まあいっか。


トップ3作品は上記で揺らぐことなく、以下は世間で話題になっていた作品が順当にならびます。
「ストーンオーシャン」はもう「ジョジョ」でおもしろくならないわけがないので、確実に上のほうに来ます。
「明日ちゃんのセーラー服」「その着せ替え人形は恋をする」は映像作品としての完成度でいえば確実に先に
挙げなければいけないと理解はしているものの、トップ3を揺るがすまでの存在にはならず。

「鬼滅の刃 遊郭編」も冬アニメといえば冬アニメなんですよね…ずいぶん昔のことのように感じてしまいます。
もはや各期の新作という枠を超えた、国民的行事と化した(笑)別枠扱いの作品ですね。

「平家物語」は同時期に大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放送されていた効果がやはり大きかったと思います。
アニメで見たばかりのエピソードがすぐに実写でも出てくる。こういう体験はなかなかできないんじゃないかと。
ただ、やはり尺不足は否めず。ものすごい早さで名場面が消化されていくので忙しない印象がありました。


尺不足については今冬のアニメ全体に言えるかも。全12話の作品がこんなに多いとは。
全体的に話数が少ないのに、地震による休止などで4月にはみ出してしまった作品もいくつか確認されています。

放送休止といえば、不正アクセスの影響で東映アニメーション関連のアニメの放送延期が相次いでいます。
代表的なのが「デリシャスパーティー プリキュア」で、第5話以降が1か月ほど先送りになってしまいました。
これに関してはもう完全に人災(犯罪?)なので、視聴者を含めた関係各位がかわいそうでなりません。

外的要因ではなく制作上の都合で休止を挿んだのは「東京24区」だけだったはず。CloverWorksなら仕方ない?


2クール作品で春以降も継続するのは「薔薇王の葬列」と「CUE!」。
「薔薇王の葬列」は率直に言って地味な、特に冬アニメのなかでは目立たない作品であったことは否めません。
しかし登場人物たちの相関関係、血脈、派閥をきちんと確認しながら見ると見応えがあります。
さすがはシェイクスピア、悲劇を描かせたらたいしたもんですよ。本作なりのアレンジもまたいいんですよね。
1クール目の終盤にかけてうなぎ登りにおもしろくなっていく、今期の特筆すべき収穫のひとつでした。

「CUE!」のほうはまあ…なんか本職の声優さんたちのあいだでにわかに話題になっている様子。
声優を題材にした作品というと、これまではどちらかというと現実的なシビアな描写に偏る作品が多かったので
見る前は身構えていたところがあったのですが、本作はとにかくポジティブに描いているのが大きな特徴。
声優という職業、彼らがもたらす効果に希望をもてるような、見ていて苦痛を感じないアニメになっています。

題材がなんであれ、ひたすら現実を反映するだけではアニメ作品としては伸びないでしょうしね。
アニメとして評価してもらうにはまず見始めてもらうこと、そして最後まで見続けてもらうことがホントに大事。


最後まで見続けて、なおダメだった作品もあるんですけどね…「フットサルボーイズ!!!!!」っていうんですけど。
東京五輪前後に作られたたくさんのスポーツものアニメのなかでも下から数えたほうが早いくらいで。
競技の魅力を描こうという気配が1ミリもない、スポーツものという枠を取り除いても飛び抜けて残念な出来。
サッカーとは明確に異なるポジションの呼び方の説明すら最後までなかったですからね…。

野球でいえば9回裏2死満塁みたいな、その競技のおもしろい状況ってありますよね?
それは競技を理解していればこそ設定できるものであり、ひいては競技の魅力を伝えることにもなるわけです。

走って、蹴って、棒立ちのキーパーの脇をボールが通り抜ける。毎試合そんな描写を繰り返すだけ。
点数が多いか少ないかだけで試合の緩急が描かれる。こんなに眠くなるスポーツものも珍しいですよ…。
ストーリーの主軸になっていた『榊が大和にパス出せない問題』も最終回まで引っ張るような話題ではないし。

同じスポーツものという枠でいえば「リーマンズクラブ」のほうが見応えはありました。特に第7話。

バドミントンという競技のなかで心理的にどんな読み合いがあるか。会場の影響に左右されるか。
詳しくない人が見ても「そういうことが起きうる競技なのか」と感心しつつ、興味をもって見ることができる。
競技のおもしろいところ、特殊性をきちんと理解していないと書けないエピソードであると思いました。
特筆すべきはこの回を担当した脚本家がこの第7話しか書いていないこと。

他の回は正直そこまででもなく…第7話を山頂として、ゆったり上がってから下っていってるような印象。
「リーマンズクラブ」は放送開始が他より遅かったため、4月中旬まで放送が続くようです。


エピソード単位の話として、「佐々木と宮野」の第11話にも触れておきましょうか。
本作はいわゆるBLもので。BLはあくまで夢の産物で、現実とは切り離して楽しむべきものと思っていたのですが
それが身近なところに、家族や友人に降りかかってきた場合どう受け止めるか、考えるきっかけを与えるような
特殊なエピソードであると個人的には感じました。それまでの空気感とくらべて異質でしたしね。

半澤先輩の兄のカミングアウトは衝撃的で、聞かされた家族の反応のほうがファンタジーに見えたほど。
この『日常にそういう人がいる』という価値観の転換を踏まえて、佐々木と宮野の関係を見守ることになるのが
最終回へ向かう前の準備としてなかなか興味深いものに映りました。

アニメ化されたBLもので「僕たち付き合ってます」と、きちんと交際を公言するのって珍しいと思いますし。
終盤までのライトな雰囲気からは想像できない、新しいものを見せてくれた作品として紹介しておきます。


さて…アニメの感想をこのような形式で長文で掲載するのは今回が最後となります。最後にする予定です。
書いても読まれない実情については以前からお伝えしていましたが、書くにあたっての下準備の大変さもあるし
その下準備によってアニメを楽しみにくくなっている感じもあり、損失を無視できなくなっていまして。

まったく書かなくなるわけではなく、もうちょっと『どうでもいい感じの』記事にしようかと(笑)
独断と偏見で決めたランキングだけ載せるとか。徹底的に文量を減らして記録化すると、そんなふうになりそう。

アニメの感想を書かなくなったらブログの更新頻度が落ちる…何か新しいことを考えないといけないかな。



ワースト作品については各人思うところあるでしょうけど、最終回まで見続けることができた作品から選ぶなら
個人的には「フットサルボーイズ!!!!!」か、最終回の内容次第では「東京24区」もありえるかも。
当記事掲載時点では第11話まで放送済みで、その11話が特にひどかったので…『特に』というのも問題で。
これまでも失笑してしまうような展開が続き、しかも先述の放送休止もあって。褒めるところがないんですよ。

「見てるとIQ下がる~!」くらいなら楽しくてよいのですが、11話は「見てると頭おかしくなる…!」と真剣に
苦痛を覚えるほどヤケクソ気味なシーン(と演技)が続き、ここに書かずにいられなくなりました。

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