« メカニカルキーボードの話(キースイッチ交換編) | トップページ | 近況:DMZを薦められる »

2022年12月30日 (金)

2022年 秋アニメ総括

■好評価作品
「Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-」
「後宮の烏」
「ヤマノススメ Next Summit」
「モブサイコ100Ⅲ」

■ピックアップ作品
「万聖街」
「聖剣伝説 Legend of Mana」
「ブルーロック」

■12月中に放送終了しなかった作品
「ゴールデンカムイ」※関係スタッフ急逝のためスケジュール変更
「メガトン級ムサシ」※制作上の都合で3月まで放送が続く予定
「艦これ いつかあの海で」※制作上の都合
「アイドリッシュセブン Third BEAT!」※全30話(途中スピンオフ4話を挿んで2月いっぱいまで放送)
「異世界おじさん」※制作上の都合で最終回延期
…ほか、2クール作品を含めていつもより多くの作品が来期も継続放送


日本のアニメ制作とは切っても切り離せない中国で現在コロナの感染が拡大しており、特に外注の割合が多めな
ところで制作の遅延が生じ、放送延期を発表する作品がちらほら出てきています。
「異世界おじさん」夏期から秋期へ移籍したうえで最終回の放送延期。通算4回目の延期発表になるのだとか。
冬アニメにも影響ありそうですね…なんか、呑気に感想なんか書いてていいのか?って思ってしまいます。


秋アニメで個人的なベスト作品は「Do It Yourself!!」。僅差で「後宮の烏」

テレ東が『次の国民的人気アニメ』を生み出す勢いで、集英社原作の圧倒的なクオリティの作品を放送するなか
そういう空気とは真逆の、どちらかといえば東京MXやTBSの深夜帯に放送していそうな雰囲気をもつ「DIY」
同局・同期の作品として肩を並べている状況にちょっと異質さすら覚えていたんですよね。

人間の代わりにAIがなんでもやってくれるようになったら、人間の居場所はあるのか?
そんな不安に「何もしなくてよくなったら(空いた時間で)何をしようか?」と考えたのが主人公・結愛せるふ。
じつに自然に、そして前向きに。現実においても創作においても聞いたことのない明るい発想でした。
この一言を聞かされた瞬間、自分は「DIY」に心をつかまれたのだと思います。

居場所もDIY精神で作ればいい。シンプルなようで意外とたどり着けなかった発想とメッセージ。
日々進化するAIに驚嘆する2022年のいまだからこそ見る価値がある。それでいて説教くさくない(これ大事)。
見た目は穏やかですが、これもテレ東の明確な勝負の一手だったのかもしれません。

マンガや小説を原作にもたないオリジナルアニメならではの、すっきりと見終えられる潔さもありました。
ただ…どうしても気になるのが第9話のラストに待ち受ける本作唯一と言ってもいいアクシデント。
そもそも、本作にああいうネガティブな展開を求めてる視聴者なんていないのでは?という疑問もあるのですが
どう考えても事故が起きそうな場所に"大事なもの"を置いてたってのが非合理的で納得いかないんですよね。

総合的にすごく好きなんだけど、その不満があるせいでどうしても満点をつけられない。惜しい作品でした。


異質さという意味では「DIY」に勝る存在だった「後宮の烏」。なぜアニプレックス枠でこの作品をやったのか
最終回を見終えたあとでもいまだにわからず。でも個人的には大満足という不思議な作品でした。

閉鎖的な宮中の生活。そこで巻き起こる霊的な事件、独特の文化や習わし。それが回を追うたびに広がっていく。
たまに戦闘シーンが描かれることもありますが基本的に派手さはなく、そのぶんしっかりと話を見せていく。
人間の感情、願いや未練によって巻き起こる物語。そういうのが好きな年齢になったってことかな…?

原作が小説なせいか、アニメの映像とセリフではどうにも理解しにくい部分があったのは否めません。
これは中国、あるいは中国風の世界を舞台にした作品でありがちなのですが、登場人物に呼び名が複数あったり
彼らが住まう場所、階級や役職など耳慣れない単語がいくつもセリフに出てきたりするわけです。
文面でなら把握できてもアニメではそうはいかず、毎回膨大なメモを取りながら慎重に視聴していました。

「虫かぶり姫」にも同じことが言えますね。もう少しわかりやすく映像化されていれば…としばしば思ったり。

今期のアニメキャラで個人的に唯一『描いてみたい』と思ったのが本作の主人公・寿雪でした。
近年の日本のアニメ作品にはいなかった新しいタイプのヒロイン。新鮮な風を呼び込むデザインに見えました。


続いて上位に来るのは「ヤマノススメ Next Summit」「モブサイコ100Ⅲ」。続きモノとして双方期待以上。

今期の「ヤマノススメ」は背景美術がやや写実に寄りすぎていて、アニメとして見るには違和感もありましたが
登山を描く作品のリアリティで言えば、ある意味で頂点に達した表現と評することもできるでしょう。
特に終盤描かれた富士登山リベンジの風景はアニメ史に残るレベルの富士山だったと思います。
全部やり切ってしまったかのような雰囲気があって、ひょっとしてこれが最後なのかな?と寂しくも思ったり。

一時はキャスト変更も危ぶまれた「モブサイコ100」。勢いを落とすことなく最後まで駆け抜けてくれました。
完結までアニメで描けるというのは本当に幸せなことなんだと、本作の大団円を見て改めて思いました。
過去のシーズンにもさまざまなメッセージが盛り込まれていましたが今期もそのへんは変わりなく。


他に気になったところだと、まず挙がるのはテレビ版「羅小黒戦記」とセットで放送された「万聖街」
中国原作の人外系日常アニメとでも言えばいいか。おそらく主要ターゲットは女性と思われる設定の作品ですが
ポップな画面と優れたデザイン、そして緊張感のない騒動。終わりを迎えるのが惜しくなる居心地のよさ。
4分×6本立てというスピード感のある編成も本作においては功を奏していたと思います。

「聖剣伝説 Legend of Mana」は自分としてはかなり能動的に楽しんでいたアニメのひとつ。
終盤の衝撃的な展開が話題になっています。原作では選択制の主人公を両方登場させたことで、原作とは異なる
『先読みできない展開』を盛り込めたと思えば、良いほうに捉えることもできるのではないかと。
原作未プレイの自分は本作の影響で「原作に手を出してみようかな?」と興味を抱くまでにはなりました。
残念なのは最終回の仕上がり具合…後日ディレクターズカット版が配信されるそうなので楽しみにしています。

サッカーを題材にした作品には近年悪い記憶しかなく(笑)「ブルーロック」も警戒しながら見ていたのですが
思っていたほど悪くないどころか、ポジティブに録画を消化できるくらい楽しめています。
やはり基本的な話、スポーツものは題材となる競技と試合をおもしろく描けているかどうかが大事ですね。


世間的には「ぼっち・ざ・ろっく!」が圧倒的な人気を誇るシーズンという感じでしたが。
個人的にはそうでもなく、何がそんなにアニメオタクのハートをつかんだのか要因がいまだわからずにいます。

言い方はアレですけど、アニメオタクからすればたいして珍しい内容でもなかったと思うんですよね。
いや、見慣れた内容だったからこそウケたのかな。「求めていたものがやっと来た!」みたいな。
アニメオタク以外の層から注目が集まり、見る人が増えたことも話題作となった理由のひとつなのでは。
ふだんアニメの話題なんか取り扱わないニュースソースまで記事にしていたあたりにそんな推測が浮かびました。

話題作といえば「チェンソーマン」も、音楽的な部分でニュースになっていました。

…というより音楽的な部分しか話題になっていなかった感じがします。ほかに感想が全然流れてこないんですよ。
放送開始当初は盛り上がっていたTwitterのフォロワー界隈が週を追うごとに静かになり、1か月後には皆無に。
たまに見かける感想ツイートといえば毎回変わるエンディング曲の話のみ。何が起きているのか不思議でした。

調べてみるとどうも『解釈違いのアニメ化』みたいなことが起きていたようで。
原作未読の自分にはわからない、原作ファンと監督のあいだで生じた大きな隔たりが影響していたようです。

原作を知らない一視聴者としての感想を言えば、B級ハードコアバイオレンスアクション…みたいな印象かな?
ひとつの復讐劇の結末を描くまでの「まあ好きな人もいるんじゃないの?」程度に収まる作品。
少なくとも「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」にならぶような、家族で話題にできるような大衆性はない(笑)
なので、アニメ化にいたるまでの人気を獲得した理由が「鬼滅」や「呪術」ほどには理解できませんでした。


「アキバ冥途戦争」もまあ…今期を代表する話題作のひとつだったかもしれません。
一発ネタみたいな設定をよくもここまで広げたなぁと。ただ、あの最終回はあまり美しくありませんでした。
あれなら最終回のひとつ前、11話の衝撃的なラストで締めたほうがよほどヤクザ映画的だったのではないかと。
変にオチでも意識したのか、日和った印象の蛇足にも感じられる終幕になってしまった。
血を血で洗う時代の空気感を最後まで徹底できなかったことが個人的にはマイナスポイントに見えました。

なぜ令和のいま?と不思議に思っていた「うる星やつら」は、フタを開けてみれば非常に見やすいアニメで。

高橋留美子作品っていつの時代でも何かしらアニメ化されて放送されていますが、個人的には高橋留美子作品を
新しいと感じたことが一度もなくて、いつの時代でもなんか古臭い(笑)印象を抱いていたんですよね。
毎回2本立ての各話完結なので見逃しても問題ないし、変に難しい感情が渦巻いたりしないので見疲れしない。
無駄な力や神経をつかわないから見続けられる。そこが逆に新しく感じるようになりました。

アニメって見続けてもらわないと正しく評価されないし、話題にもなりません。
胸焼けを起こすほどコンテンツが溢れる時代だから、こういうスタイルで生き残りを賭けるのもひとつの手かも。


異世界ものは全体的に低調なシーズンでした。そのなかでは「転生したら剣でした」が比較的好印象。

近年異世界ものを見ていて思うのは、主人公に協力的な人はみな女性、敵対的な人や愚かな人はみな男性という
劇中の役割における男性蔑視がナチュラルに描かれていること。でも、これは仕方のないことなのかも。
異世界もののターゲットが男性だとするとどうしてもそうなってしまうというか。
できる限り男性を画面に映したくなくて、不自然にならない程度に出そうとすると役割が限定されるみたいな。

ただしドワーフは別なんですよ。ドワーフはドワーフという『男性にカウントされない枠』として許されている。
武器屋のオヤジという定番の協力者であり、主人公一行のほかに知的であることが許可される珍しい存在。
同じドワーフ族が基本的に登場しないことも含めて、奇妙な生き物だなぁと思うようになりました。


長くなりましたが今期はこんなとこで…年内に放送が終わらなかった作品が多く、ややスッキリしない印象あり。
アニメとはあまり関係ありませんが、来年はもう少し良い年になってくれるでしょうか…。



振り返ってみると今期はいろいろありましたね。『今年』じゃないんですよ。この3か月がなんかすごくて。
主題歌の制作者から逮捕者がふたりも出たり、女性声優の休業や引退が相次いだりとか。櫻井孝宏とか!
アニメ業界に限って見ても大きな訃報がいくつかありましたし、良いニュースをあまり思い出せません。
「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」の2期が決定したことくらいかな。正当な評価を受けてよかったです。

続編といえば「ウマ娘」の3期の制作発表がありましたが、スタジオ櫂で続投なんですね…。
櫂が悪いとは言わないんですけど、たまに悪いクセを出すところがあるので諸手を挙げては喜べませんでした。
(このへんの話は2期の感想で書いているので、興味があれば掘り返して確認してみてください)


さて…『今年』という単位でアニメを振り返ったらどんな作品が思いつくか、改めて感想を読み直してみました。

「あえてうちで紹介しなくてもいいだろ」って次元の作品(「SPY×FAMILY」や「メイドインアビス」)は除き
2022年の個人的な10選を考えてみました。好みはあると思いますが、どれもオススメできる作品です。

・「時光代理人」
・「プラチナエンド」
・「薔薇王の葬列」
・「ビルディバイド -#FFFFFF-」※できれば前作「-#000000-」と合わせて
・「BIRDIE WING -Golf Girl's Story-」
・「神クズ☆アイドル」
・「連盟空軍航空魔法音楽隊 ルミナスウィッチーズ」
・「ユーレイデコ」
・「Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-」
・「後宮の烏」

「時光代理人」は早く続編を日本に送ってくれ…あんなところで終わったままにしたら国際問題になるぞ。
「BIRDIE WING」はあえてこの時代にゴルフを題材に挑んできた異色さと、ゴルフアニメとは思えない熱さが
いまだに忘れられません。続きの放送が来春に予定されているのでもうずっと期待し続けています。
多少問題あれど「ルミナスウィッチーズ」は戦争が起きているいまだから見る価値のあるアニメとして選抜。

放送のタイミングって結構重要なんだなって思いますね。放送時期が違ったら評価も変わっていたかもしれない。
そのときの社会情勢だったり、直近に放送されていたアニメのラインナップだったり。
コロナ禍だったからヒットした、ポストコロナだから見え方が違ったアニメも確実にありましたからね。

|

« メカニカルキーボードの話(キースイッチ交換編) | トップページ | 近況:DMZを薦められる »

アニメ レビュー&コラム」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« メカニカルキーボードの話(キースイッチ交換編) | トップページ | 近況:DMZを薦められる »