2023年 夏アニメ総括
■好評価作品
「わたしの幸せな結婚」
「アンデッドガール・マーダーファルス」
「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」
■ピックアップ作品
「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」
「聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~」
「夢見る男子は現実主義者」
「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」
■好評価継続作品
「TIGER & BUNNY 2」
「贄姫と獣の王」
「ホリミヤ -piece-」
「もののがたり 第二章」
「魔王学院の不適合者Ⅱ ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」
■9月中に放送終了しなかった作品
「Helck」2クール
「ダークギャザリング」2クール
「七つの魔剣が支配する」2クール?
「青のオーケストラ」※8月中の3週間のお休みが影響して10月にはみ出し
「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」※今期唯一の純粋な制作遅れ
◇その他備考
映画館で先行上映されていた「五等分の花嫁」のアニメシリーズ最新作「∽」が9月にテレビ放映。
制作はシャフトで、これで1期・2期・特別編すべて異なるスタジオでの制作となった。
『秋の日はつるべ落とし』などと言いますが、暑い暑いと思っていた夏も過ぎ、あっという間に今年の終わりが
見えてくる時期になってしまいました。この3か月はいつもとくらべて妙に忙しかった気がします。
アニメ実況勢にも愛用者が多かった、X(旧Twitter)の公式閲覧ツール「TweetDeck」が8月中旬に有料化され
外部クライアントの締め出しによるリアルタイム閲覧者の減少にさらに追い打ちをかける事態となりました。
無制限で閲覧できるのはスマートフォン向けの公式アプリのみとなり(公式ブラウザ版は一日あたりの制限あり)
アニメの実況に限らず、あらゆる分野の利用者に影響をおよぼす大きな出来事だったと言えます。
自分もタイムラインを見つめる時間がだいぶ減ってしまって。まあ、ほかのことに集中しやすくはなりましたが
自分から望んだ変化では決してないので、どこか寂しいというか…ひとつの終わりみたいなものを感じました。
今期は寸感から評価が大幅に変わることはなく、そこからさらに掘り出し物がいくつか見つかった感じ。
「わたしの幸せな結婚」は質・内容ともに文句のつけようのない、非常に完成度の高い1クール作品でした。
老若男女どんな層にもオススメできる、恋愛あり異能力バトルありな非・異世界系ファンタジー。
それだけに、最終回直後に発表された2期制作決定には驚かされました。これの2期って何やるの!?って。
振り返れば解決し切れていない問題もないことはありません。途中退場した香耶のその後の生活も気になるし。
ただ、続きがさらに1クール描かれるってことは美世さんの受難が増えてしまいそうで(笑)そこが不安。
特に期待してなかったせいか、意外と当たりだったなと思ったのが「ライザのアトリエ」。
ストーリー的には原作の1/3ぐらいしか消化できていないそうですが、小さな村の若者たちの小さな冒険として
非常にキレイにまとまった話になっており、1クールですっきり気分よく見られるようになっていました。
だから、原作を知らない自分からすると評価が高くなるわけです。知らないから得してるみたいな。
ほかに上位に挙げたいのは続きモノばかりで。「もののがたり」と「贄姫と獣の王」は存在感は薄かったものの
きちんと話を追いかけてきた視聴者にきちんと手応えを与えてくれる、良き2クール作品でした。
「魔王学院の不適合者Ⅱ」は急に歌い出したりするヘンテコな部分(笑)が目立つせいで、ストーリーの部分が
見落とされがちではありますが、マジメに理解しようとすると複雑で難しく、わかればおもしろいんですよ。
精霊を成り立たせる伝承や噂の辻褄の合わせ方とか、うまいこと考えてあるなぁ…と感心しつつ見ていました。
最後はだいたいアノス様がなんとかしちゃうんですけど…その傍若無人ぶりも本作の魅力です。
「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」は分割2クール作品として、のちに評価したほうがよさそうですね。
壮絶な昼ドラ的展開を個人的にも楽しく見ていたのですが、最終回のBパートを見て評価を保留。
新シリーズへの橋渡しが必要なのは仕方ないとしても、本作は「It's MyGO!!!!!」と題されたアニメですから。
あの最終回が"新シリーズの第1話"として放送されていたらこのタイミングで評価してもよかったかも。
1クールのアニメは1クールで美しく終わるべきと自分はつねに考えています。完結しているべきと。
楽しく見てきた本作の評価をできれば下げたくない。なので、いまはまだ評価しないでおこうと思います。
異世界転生モノからは「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」と「聖者無双」をピックアップ。
前者はまず設定がかなりの変化球で、会話ができない無機物であることや、自販機という縛りで立ち回ることを
うまく描けていたし、自販機の目線から見つめる利用者たちの悲喜交々も良いドラマになっていました。
「聖者無双」は1クールの前半、迷宮に潜るまでが何気によくて。すべてのケガ人を救えないところが特に。
こういうタイプの作品ってだいたい飛び抜けたチート能力を使って"やりすぎてしまう"ことはよくあるのですが
未熟な時期にきちんと無念さを味わい、それをバネにして成長していく過程が描かれていたのが好印象。
それだけに、後半の迷宮は凡庸というか…異世界チープ一直線な感じで残念でした。
寸感で『ちょっと判断しかねている』として紹介した3作品のうち「アンデッドガール・マーダーファルス」は
派手に戦う場面もあれど、基本は痛快推理喜劇であり、求めていたものをたっぷり得られました。
テレビアニメで推理モノをやると尺の都合でどうしても満足度が下がりがちなのですが、ひとつの事件に結構な
話数の使い方をしていたのが贅沢でよかったですね。鴉夜と津軽のやりとりも次第に心地よくなってきました。
ただ、ここで終わるの!?という中途半端さは否めず。そのうち続きを見られる日が来るでしょうか。
「夢見る男子は現実主義者」は、結末はきっとこうなるだろうとわかっていたものの、途中にあった紆余曲折が
さらに本作を判断しにくくする(笑)終始つかみどころのない不思議なアニメでした。
なかでも一ノ瀬兄妹のエピソードはホント意味不明というか、気持ち悪かったなぁ…思い出しても身震いする。
一ノ瀬のエピソードに登場する古書店以外で、学校の外まで舞台が広がることがほとんどないアニメだったため
浜松市のタイアップをまるで活用できていなかったのが…ってか、無理があったんですよ最初から。
残りの「SYNDUALITY Noir」は普通のロボットアニメという印象に加えて、見た目の現代風なデザインに対し
中身はすごくレトロな、意図的に古めかしい演出や表現を盛り込んでいた感じが評価の分かれそうなところ。
笑わせるためにやってるのかマジなのかがわからなくて、ちょっと困惑させられる部分でもあり。
自分が思う『おもしろい』とはちょっと距離のある作品だったかな?と…1クール目の感想はそんな感じですね。
ストーリーについては現時点で書くのもアレなので、覚えていたら2クール目の終わりにでも書こうと思います。
死亡フラグはあちこちで立っていましたが、本作の雰囲気からすると暗い話にはなりそうにないかな?
現時点で第10話以降の放送日程が決まっていない「ゾン100」は、制作状況や内容もアレなのですがそれ以上に
『ガンダムの後番組』という重責を担わせる難しさみたいなものをやっぱり感じてしまいました。
あの時間帯にテレビの前に人を集めて注目させるには、ガンダムくらいの大看板でないと難しいということ。
「ゾン100」が特別不足しているわけではなく、いかにガンダムが特別かがよくわかる入れ替わりだったなぁと。
以下は掲載後の追記です。今回非常に焦って書いてて、なにか忘れてるような…とずっと思っていたんですけど
あとから見返してみて「幻日のヨハネ」についてまったく触れていなかったことに気付きました。
「いろいろ言いたいことがあるので、いつかちゃんとまとめよう」とX(旧Twitter)のほうで公言してただけに
さすがにこのまま言及せずにおくのもなんだし、掲載後ではありますが書き加えることにしました。
反省会みたいな論調になってしまいそうですが…光るところも確実にあった作品なんですよ。
全体の印象としては、「魔女の宅急便」を連想させるような少女の成長物語で間違いないと思います。
スピンオフならではの役割の違い、描けるテーマの違いが感じられて、特に6話まではすごく評価していました。
それが崩れ始めたのが7・8話で。本家ラブライブシリーズの要素が顔を出し始めてしまったんですよね。
シリーズのファンのために、あるいはスポンサーの都合でどうしても9人揃えて歌わせないといけなくなった。
せっかくのスピンオフなのに本家と違うことをしようと徹底できなかったのが本作の問題なのではないかと。
必然性のないものを物語に足さなければならなくなり、スピンオフならではのテーマがブレてしまった。
もうちょっと要素を絞り込めれば、どっちつかずのブレを解消できたかもしれません。
メチャクチャ悪い言い方をすると、まず9人もいらない(笑)あきらかに役割を持て余していたと思います。
ミリオンダラーやスカーレット・デルタのような、みずからファンタジーを放棄する要素は要らなかったわけで
鏡像世界の、原典とは真逆の性格をもつキャラクターを描くうえでも邪魔な存在でした。
異変に対抗できないまでも、ヨハネがほんの少しでも浄化の力を見せていれば戦力としては足りていたはず。
舞台がヌマヅであること、つまりご当地アニメ要素については百歩譲って残しておいてもよいでしょう。
だいぶ苦慮していた気配は見えましたけどね…ファンタジーと両立しつつ脅威も用意しないといけないし。
すべてを隠喩と考えたとき、このアニメの締めに描きたかったテーマはなんなのか。
歌の力(アニメの力)は街を救うきっかけにはなるが、誰かの歌に頼るだけでは街全体を救うことはできない。
街全体がひとつになって、みんなが街の未来を背負っている意識をもって一緒に歌わなければならない。
若者が街に居場所を得て、留まって歌い続けてくれるような何かが地方都市にはまず必要なのではないか。
答えは『場所』ではないのだと、それはヨハネだけでなくヌマヅにも言えるのでは。
いや…そんな警鐘じみた話でもないのかもな。とりあえず7・8話、11・12話以外はよかったと思ってます。
13話のライブは途中で芝居を進めようという試みが見られ、本家にはついぞなかった大きな進歩を感じましたし。
あとシンプルな話、「幻日のヨハネ」版のキャラクターデザインはすごく好きです。
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