ゲームレビュー 「Deliver Us The Moon」
[プラットフォームと購入方法]
PS4版(Digital Deluxe)をセール期間中に682円で購入。
[クリアまでにかかった時間]
6時間40分。謎解きやミスで停滞していた時間がかなり含まれるため、それがなければ6時間以内に収まったはず。
[ゲーム難易度]
一般的なアクションアドベンチャーを想像してもらえばよいが、不親切さのせいで難易度が高く感じる。
目的地への誘導が乏しく、表記ブレもあって「次はどこに行けば?」と右往左往することがしばしばある。
また、パズル要素についてもヒントらしいヒントがないため気付かないと普通に詰む。
画面の暗さが難易度をさらに高めている。3D酔い体質の人は探し回るうちに気分が悪くなるかも。
プレイヤーが可能なアクションが限られているので、そのなかで動かせそうなものは積極的に動かしていこう。
[実績・トロフィー難易度]
メインストーリーを素直に追ううちに解除されるものが半分、わざとやらないと解除されないものが半分。
ステージセレクト機能があるため、取りこぼしはある程度カバーできる。
1周目からコンプリートを目指しても、あとで取りこぼしを補完しても全体で8時間程度に収まるだろう。
[良いところ]
・ロケットの打ち上げ操作や宇宙ステーションのドッキングから始まる、映画のような宇宙体験。
・無人と化した月面基地を調査する孤独の時間。怪物が出てくるわけでもないのに一定の緊張感がただよう。
・道を切り開くためのパズルの数々。
・人類のために月面で奮闘した人々の物語。そして主人公は何者だったのか。
[悪いところ]
・月面かつ停電という舞台設定なので仕方ないが、攻略に支障を来たすほど画面が暗い。しかも調整不可。
・制限時間が短めに設定されたイベントの数々。時代錯誤なQTEも猶予が短め。
・ロード時間が長く、失敗=即死のイベントに引っ掛かると暗い画面を見つめる時間がさらに延びる。
・最後のミニゲームが後味を台無しに。仕組みを理解していてもイライラする。
[どちらとも言えない]
・場面によってFPS視点とTPS視点が切り替わる。遊びやすさを考えると必要とはいえ、没入感を下げがち。
・あらゆる掲示物がローカライズされているのは直感的にわかりやすくてよいが、雰囲気はぶち壊しである。
・消すと自然回復するフラッシュライトの電池。それなら電池のシステム自体必要なかったのでは?
・終盤の死に覚えゲーっぽいアクションステージ。稼働中の炉心内部が正規ルートなのは設計上問題がある。
[寸評]
本作に興味をもったキッカケは「Deliver Us The Moon」というタイトルにあった。
わりと間違えている人も多いが「Deliver Us To The Moon」ではない。「To」を入れるのは誤りだ。
「To」があるのとないのとでは微妙にニュアンスが異なるのではないか?と、考え始めたのが発端である。
オランダのKeokeN Interactiveが開発した本作は、2030年以降に地球上で問題となった資源枯渇の対策として
月面にMPT(マイクロ波送電システム)を建設しエネルギー供給をまかなう時代を描いている。
2054年に突如送電が遮断され、急速に砂漠化が進んだ2059年の地球から単独で月面の調査に向かうことになる。
生きている登場人物は少ない。月面開発の中心的人物の娘・クレアと、あとは自分だけだ。
灯が消えた月面を進むにつれて、何が起きて送電が遮断されたのかが次第にあきらかになる。
単なる故障でも事故でもない。残された生活のあと、カメラが捉えた真実が暗闇の中から浮かび上がってくる。
酸素が限られているせいもあるが、プレイしていて息が詰まる場面が多い。寒くて静かで、拠り所がない。
さて冒頭の話に戻るが、つまりプレイヤーの仕事は人々を月に届けることではないのだ。
失われた月の光をふたたび地球に届ける。だから「To」を入れない「Deliver Us The Moon」なのだろう。
ゲームとして本作を評価すると、全体の8割は誰にでも楽しめるアドベンチャーとパズルで構成されているのに
残り2割を切ったあたりから急にシビアなアクションを突き付けられるチグハグさがどうにも気になる。
ミスした際のロード時間の長さからしても、繰り返しトライして進むように設計されたとは思えない。
そして最後の最後に待ち受けている、いやがらせみたいなミニゲームが本作の評価を地に落としてしまう。
変にプレイヤーを満足させようとして、余計な要素を終盤に付け加えなければ高評価のまま終われただろうに。
終盤の2割がもたらす印象の悪さが本作全体の印象を塗り替えてしまう。それが非常に残念である。
[オススメ度]
前述のとおりアドベンチャーゲームとして楽しむには終盤微妙な部分がある。それでもいいというならオススメ。
制作にあたってインスピレーションを受けたという映画を合わせて見ておいてもよいかも。
(インタビューで「月に囚われた男」や「2001年宇宙の旅」、「インターステラー」を挙げている)
[攻略情報補足]
データベースに記録されるスキャン可能情報のうち、特に見落としやすいものを以下に記しておく。
・「Pearson宇宙ステーション」冒頭、ドッキングしてすぐ、上の窓から見える大きなアンテナ
・「Copernicusムーンハブ」のASE入手後、居住区の下階の床に敷かれている青いベッド
・「Reinholdクレーター」開始してすぐ、モノレール駅ホームにある宇宙服
・「Tombaugh発電所」の水没した講堂、左右の見えにくい階段から進んだ奥にある部屋のモニター
記事制作のためプレイ動画を確認していた気付いたのだが、本作のTPS視点はキャラが画面左寄りにいるせいか
プレイヤーの注視点が右寄りになり、キャラの左側に表示されているものを見落としやすいようだ。
上の画像のようにスキャン可能なものが青くハイライトされていても素通りしてしまう場面がいくつかあった。
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