[プラットフォームと購入方法]
2022年12月26日にEpic Gamesストアで無料配布。Director's Cut版ではない。
[クリアまでにかかった時間]
59時間11分38秒。エンディング後のリザルト画面で確認。難易度はNormal。
PC版で追加されたコラボ依頼のプレイ時間なども含まれるが、いわゆる100%クリアの状態ではない。
本作にはクリアに必須ではないエリアがいくつか存在し、クリア時点で2~3箇所が未開通のままだった。
[ゲーム難易度]
PC版は5段階の難易度から選択可能で、ストーリーを楽しみたい人向けのVery Easyが用意されている。
Very Easyでは敵の数や体力が極端に少なくなるため、進行上必須の戦闘を少ない手数で突破できる。
とはいえプレイヤーキャラクターの操作や配送時のルート選択など、プレイするうえで避けられない要素も多く
ゲーム慣れしていない人、アクションゲームがニガテな人だと苦しむ場面がありそう。
オフラインだと他のプレイヤーの落とし物や建築物などを利用できなくなり、結果として難易度が高めになる。
できる限りスムーズにプレイしたいなら必ずオンラインの状態でプレイしよう。
[実績・トロフィー難易度]
Epic Games版には他のプラットフォームと同じく63種類の実績があり、クリア時点で45種類を解除。
大半はクリアまでの過程で解除されるが、配送した荷物の総数など一部やりこみ系の実績も用意されている。
また、難易度Hard以上が条件のもの、隠された収集物のコンプリート実績もある。
個人差はあると思うが、実績のコンプリートを目指す場合は100~120時間くらい必要になると思われる。
[良いところ]
・移動が楽しいから最初から最後まで楽しい。
・自分なりに工夫する楽しさ。荷物の積み方、ルート選択、建設する位置など好みが反映されやすい。
・風景の美しさ。岩が覗く草原も雪深い高山も素晴らしいが、雨だけは設定上どうにも疎ましい存在である。
・姿は見えないがそこにいる気配を感じられる、独特の連帯感があるオンラインの仕組み。
・繰り返し歩いたところから草や岩が取り払われ、徐々に道ができていく個性的なシステム。
・圧巻の人物描写。日本語吹き替えには小島組おなじみの声優が多数参加。
・メッセージ性を感じ取れるストーリー。線で結ぶなど、本作のあらゆる要素にテーマが込められている。
[悪いところ]
・序盤など一部のエピソードで強制される危険地帯の通行。オープンワールドの否定。
・ストレスが溜まる一方の危険地帯と戦闘パート。おそらく積極的に戦わせないための調整だろう。
・四輪車の挙動。ちょっとでも傾斜のある山道を登ろうとすると、タイヤがグリップしなくなり滑り落ちる。
・国道の一部の区間で『リバース・トライク』の回転半径よりもきついカーブがあって走りにくい。
・国道の一部の区間の再建コストが高すぎる。位置も微妙に不便で、再建しないままクリアする人も多そう。
・小島秀夫監督の悪癖とも言えるエピソード09の一連の戦闘。ニヤリとはさせられるが苦笑いでしかない。
・落とし物を配送センターに預ける際、他の宛て先の落とし物も『一緒に預ける』がデフォルトなのは困る。
悪癖は言い過ぎかもしれないが、「こういうとこ小島監督作品っぽいな」と感じるポイントは随所に登場する。
[どちらとも言えない]
・自分の行動が褒められる、感謝される気持ちよさがある一方で、中盤以降はセリフをスキップしがち。
・乗り物に用意されている『ジャンプ』というアクション。不自然ではあるがスタックした際の保険か。
・『カイラル・アーティスト』の存在。それまでドライだった世界に急に現れたウェットな違和感。
・国道の再建とジップラインの登場が良くも悪くも配達の常識を変えてしまう。別の次元のゲームに変わる。
・インフラ整備に夢中になりすぎてメインストーリーが停滞しがち。
・時間経過とともに朽ちていく建築物や乗り物。設定上仕方ないが世話するのも大変。特に乗り物は劣化が早い。
・いつ終わるとも知れないスタッフロール(1回目)の先に待つ丁寧すぎる解説編。少々くどい。
・設定上、配送の目的に合わせてスーツの色を変えるはずなのだが、死に要素になってしまっている。
[寸評]
ゲーム好きを自称している人で小島秀夫の名を知らない人はおそらくいないであろう。
「Death Stranding」は小島秀夫率いるコジマプロダクション制作の、分類上はインディーズタイトルらしい。
ただその制作規模、販売本数、ファンの総数でいえばAAA級に相当するタイトルと言っても過言ではない。
いまさら説明するまでもない、2019年に発売され大きな話題を集めた小島秀夫監督作品である。
本作を一言で説明するなら、アメリカ合衆国再建のためにひたすら荷物を運ぶゲームだ。
主人公・サムを操作して、触れたものの老化を早める『時雨』が降り注ぐ北米大陸を東から西へ横断する。
ときには川を渡るために橋をかけ、山を越えるためにザイルやハシゴを駆使し、荷物を守りながら駆け抜ける。
あまりにも有名な作品なので、プレイしたことがない人でもだいたいどんなゲームか知っているのではないか。
しかし実際にプレイし始めると思っていたのと違う側面が出てくる。しかもその側面が結構な苦痛だったりする。
「みんな知っていて、あえて言わないようにしていたのだな…」と邪推してしまうほどだ。
おもしろい部分は寝る間も惜しんでプレイしてしまうほどおもしろい。そこは間違いないのだが。
おもしろい部分と同じくらい、思わず悪態を吐きたくなるほどストレスが溜まる部分も混在している。
本作をキライにはなりたくないので、苦痛な部分を「早く終わってくれ!」と祈りながらプレイするほどだった。
少なく見積もってもプレイ時間の4割くらいは祈り続けていた覚えがある。
何がそこまで悪さをしたかといえば、本作に込められた小島監督なりのメッセージのせいではないか。
セリフにもたびたび出てくる『棒』と『縄』の例え。『棒』の時代がいかに苦痛をもたらすか味わってもらって
『縄』の時代の尊さ、生きやすさを実感してもらう。つまり、あえての調整なのだろう。
『棒』の時代が過ぎ去ったあとの『縄』の時代、ようするにクリア後の世界はすこぶる快適だ。
やりこみ要素が視野に入ったころに快適になる。本編が終わったあとこそ楽しみの本番なのかもしれない。
クリアするまで続けられた"配達依存症"のプレイヤーなら、クリア後も50時間以上は楽しめるだろう。
ここから先は余談というか妄想みたいな話になるが…当ブログでは「移動が楽しいゲームは楽しい」と繰り返し
書いてきており、「Death Stranding」はそれを体現したような作品であった。
小島監督の前作にあたる「Metal Gear Solid V」の感想で指摘した多くの問題点が、偶然とは思えないレベルで
改善され本作に実装されている点も無視できない。まるでこちらの記事を読んでくれたかのようだ。
冗談はさておき、「MGSV」の反省点についてはある程度把握していたのだろう。
オープンワールドなのに進路を阻む明確な壁があったこと、写真を撮りたくなるような風景がなかったこと。
似たような仕事のために、同じ場所を何度も行き来するのを退屈に思わせないような配慮。
プレイヤーの不利益につながるばかりだったオンライン要素も、本作では利益をもたらす一方になっている。
シリーズこそ違えど、前作の反省点に一定の回答を示しているところはしっかりと評価しておきたい。
それと、デッドマンがヒロインと言われる由縁は最後までプレイして理解できた。彼は間違いなくヒロインだ。
[オススメ度]
いまさら自分がオススメするまでもない作品だが、ある程度のストレスを覚悟のうえでプレイしてみてほしい。
PC版はグラフィック設定を『中』以下にすればポータブルゲーミングPCやミニPCでもプレイ可能である。
なお、配送依頼や落とし物が尽きることはない。プレイし続ける限り新しいものが追加される。
なのですべてをやり遂げたい几帳面な人は気を付けてほしい。カンペキを求めすぎると疲れてしまうだろう。
プレイ時間が60時間を過ぎると国道であっても劣化の通知が来る。建設物の整備もこだわるとキリがない。
小島監督巡回済みの
RTA in Japanの動画がちょっとした話題になった本作。
最短4時間でクリアできるそうで…。
そのなかで「BB(ブリッジベイビー)はRTAの場合ジャマにしかならない」というような話が出てきます。
たしかにBBってストーリー上重要なキャラではあるのですが、ゲームとして見るとBTを可視化させるためだけに
存在するようなものなので、敵の出現パターンまで織り込み済みのRTAにおいては抱え損というか。
あるイベントで一時的にBBを手放したとき、不便さよりも重荷から解放された感覚があったのを覚えています。
転倒や水没などの小さなミスのたびに泣き続けるBBを最初は鬱陶しく、次第に何も感じなくなってしまって。
駐車場のクルマに閉じ込めてパチンコ打ってる親ってこんな心境なのかな?と、邪悪な考えが浮かぶほどでした。
泣かせると面倒なので泣かせないよう立ち回るようになる。丁寧になるというよりは避けるようになる。
BTやミュールの対処と同じであることにあとで気付きました。近付くと面倒なのでできるだけ迂回して通過する。
ストレスを多めに盛ることでプレイヤーの行動を制御しているような印象が終始ありました。
自分がそう感じているだけで、他の人は乱暴なプレイのまま楽しく遊べている可能性も全然あるでしょうね。
自分はステルス可能なゲームなら最後までステルスを貫きたい、危ない橋は渡りたくないと考えるタイプなので。