ゲームレビュー 「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」
[プラットフォームと購入方法]
Steam版をセール期間中に2,574円で購入。いろいろ付属している『Digital Deluxe』ではない通常版のほう。
[クリアまでにかかった時間]
約28時間。期間は2月13日~(約16時間、難易度NORMALで開始、メインストーリー『焦りの少年・8』まで)
5月31日~6月30日(約12時間、難易度VERY EASYに切り替え、エンディングまで)
VERY EASYで戦闘は多少簡単になるが、ストーリーを進めるのに要求される錬金レベルは変わらない。
途中何度か錬金レベルのレベル上げ作業が必要になってしまう。早めに終わらせる方法はあるのだが(後述)。
[ゲーム難易度]
基本的にはRPGであり、装備の更新とレベルアップで解決していける内容である。
ストーリー上必須の戦闘が少ないせいかレベルが自然に上がりにくい。宝箱からの装備入手も少ない。
何も考えずにプレイしていると急に敵が強く感じるときが来るはず。本作のシステムを有効活用しよう。
敵の弱点属性を突いて膨大なダメージを与え、かつブレイク可能なコアアイテムの強みをまずは知っておきたい。
コアアイテムの強みさえ知っていればラスボスを完封することさえ可能である。
ややネタバレになるが、ラスボスはそれまでとは比較にならないぐらい体力が多く、初見では確実に戸惑う。
ちなみにVERY EASYで討伐時、全員レベル30程度だった。攻撃時に回復効果のある装備があると楽。
[実績・トロフィー難易度]
全49種類。クリア時点で約半分の27種類を解除。残りの半分はやり込み要素と思ってよいだろう。
レベルを最大まで上げるなど、本作に相当な思い入れがないとつらいものもある。ハマれるかどうかが分かれ目。
[良いところ]
・PC版はマウス&キーボード操作に完全対応しており、コントローラーがなくても楽しめる(現行ver.)。
・一見複雑そうに見えるが、何が起きているのか視覚的にわかりやすい錬金術のシステム。
・次の目的地への誘導が明快。丁寧なログとハイライト表示のおかげで、久し振りの再開でも思い出しやすい。
・細分化されたファストトラベル。ダンジョン攻略の途中でも一旦アトリエに戻り、回復してから再開できる。
・古き良きRPGを思わせるノスタルジックな音楽。聞き飽きない。
・すべてに理由がある、伏線が張られたストーリー。思わぬ方向へと広がりを見せる。
[悪いところ]
・ストーリー進行の都合で、ムービー → 移動 → ムービー → 移動…を繰り返す時間が結構ある。
・ムービーシーンの人物の表情やモーションが乏しい。人形劇っぽく、稚拙な印象を与える。
・NPCの至近距離まで近付かないと会話できない。
・何かイベントが進行していると(してるかどうかはプレイヤーには確認不可能)装備の交換ができない。
・マップおよびミニマップ上の自分の位置を示す矢印がどちらを向いているかわかりにくい。
・ややわかりづらい戦闘システム。UIも複雑。各ボタンの機能がつねに画面に表示されてるのが救い。
戦闘はいわゆるアクティブタイムバトルを採用。行動で溜まったポイント(AP)を消費してスキルを放つ。
戦闘を補助するコアアイテムは専用のポイント『コアチャージ(CC)』を消費して使用する。
アイテム自体は消費されないが、ポイントの回復手段が限られる。ダンジョン内の休憩地点では回復しない。
このようなシステムの都合、連戦は難しい。そもそも戦闘を繰り返すようなゲーム設計ではないのかもしれない。
[どちらとも言えない]
・衣服の金属パーツの質感が妙にリアル寄りで、グラフィック上ちょっと浮いている。
・錬金術をおこなうとゲーム内の時間が進む。異様に早く進む。
・『採取地調合』はプレイヤーの導線としてかなり美しくない。時間短縮や救済にもなるが。
・セリフの一部に慣用句の使い方などが間違っている箇所がある。
・セリフに出てくる「鉱石」のアクセントが平板型に統一されていることの違和感。
(現在一般的には頭高型のアクセントになっているが、厳密には「宝石」と同じらしい)
・不漁を錬金術のせいにされるエピソードは、あの解決法でよかったのかいまだ疑問が残る。
[PC版の注意点]
・OSのレジストリを変更してキー配置の入れ替えをしている場合、もとのキーと二重で押される場合がある。
・PCのスペックの問題で解像度を下げざるをえない場合、デフォルト表示(ウインドウ表示)を推奨。
(人物のアンチエイリアスのかかり方が独特で、フルスクリーン表示だと汚く見えてしまう)
[攻略補足情報]
RTAプレイヤーが攻略短縮に利用する『採取地調合』のパスワードがいくつかネット上に公開されている。
具体的には「苦い根っこ」や「異界のコア」、「魔獣の毒袋」を乱獲して「ポイズンキューブ」を調合する。
調合した「ポイズンキューブ」をさらに「苦い根っこ」でリビルドし、経験値を荒稼ぎする。
『ストーリー進行に必須な調合』が可能な錬金レベルまで上げるのに1時間もあれば足りるだろう。
これを知ってるのと知っていないのとではストーリーの停滞がだいぶ違ってくる。
[寸評]
2019年発売の「ライザのアトリエ」をいまさらプレイし始めたのは、2023年放送のアニメ版を見終えたときに
いつか原作のほうもプレイしておきたいと考えたのが先延ばしになり続けた結果である。
RPGにニガテ意識がある自分が国産RPGに手を出すのには、それなりに高い精神的ハードルがあったのだ。
実際、1周クリアするのに5か月も要してしまった。途中、別のゲームに大幅に寄り道していたせいもあるが。
アトリエシリーズをプレイするのは実質初めてと言っていい。正確には初代以来、四半世紀ぶりとなる。
プレイし始めてすぐに感じたのは「国産のゲームってそういえばこんなだったな…」と思わせる質感である。
タイトル画面にメニューが"日の丸配置"されていて、かわいらしいカーソルを動かして選択。
体重があまり感じられない歩き方。魔物と呼ばれる生物が周辺にいて、それと戦うことになっている世界観。
分類上はRPGに属するが、戦闘はわずか、錬金術やそれに必要な素材集めにかかる時間もそう長くはない。
操作している時間よりもムービーを見ている時間のほうがずっと長く、物語を楽しむゲームという印象がある。
しかし本作のムービーシーンはどうにも安っぽい。物語に集中するには物足りなさを感じてしまう。
キャラクターたちが"Aポーズ"のまま突っ立って会話する様子は、素人目に見ても冷める。
昨今はムービーシーンに力を入れている基本無料タイトルも多く、どうしたって比較は避けられないだろう。
「基本無料ではないゲームなのにこうなんだなぁ…」という感想がつい出てしまう。苦しい部分である。
アニメ版ではライザたちが島を出て、自分たちの力で脅威を退ける、物語の1/3ほどまでが描かれていた。
当時はそれで「うまくまとまっている」と感じたが、原作をプレイすると見え方がだいぶ違ってくる。
物語の印象が、物語の規模が大きく変わる。「そんな話になるの!?」という驚きがあった。
アニメ版はあえてあそこで終わらせることで、ひと夏の冒険としてうまく切り出していたことに気付かされる。
エピソードの順序を入れ替え、サイドクエストを取り入れ再構成されていたのだなと、あらためて感心した。
そのなかで見えてくるのが、ボオスというキャラクターの性質の変化である。
ボオスは主人公たちの言動にいちいちケチをつけてくる、いわゆる憎まれ役のような立ち位置で出てくるのだが
アニメでは描かれなかった中盤以降、物語の中心人物と言ってもいいくらいの成長を遂げていく。
彼の言動の端々に見える責任感や仲間思いな側面に、ある意味では主人公たち以上に注目してしまうのだ。
決して主人公たちの影が薄いわけではない。本作の最大の魅力はライザにあると言っていい。
ライザ役・のぐちゆりの声と、全編にわたって満足度を高めてくれる音楽。この二点が特筆と個人的には思う。
シリーズファンによれば、長く続くシリーズのなかで錬金術のシステムは毎回新しいものに更新されてるそうで
武器や防具までなんでも作れてしまうことに違和感こそあったものの、洗練されている印象を受けた。
長年続いているからこその蓄積と、長く楽しんでもらっているからこそ新しいものを提供しようという姿勢。
たまたま「ライザ」だけプレイした門外漢の自分には見えにくい配慮が、きっとほかにもあるのだろう。
ファンの言葉といえば…本作のサブタイトルにある「常闇の女王」について、最後に余談として触れておきたい。
本作に「常闇の女王」なる者は出てこないと、プレイし始める前に言われて困惑した覚えがある。
たしかに"「常闇の女王」は"最後まで出てこなかった。当然アニメ版にも出ていない。誰なんだ「常闇の女王」。
[オススメ度]
アニメ版を見て続きが気になっているのであれば、一度はプレイしてみることをオススメする。驚きがある。
理論上最強の武器を作るなど、数値を突き詰めるのが好きな人には本作のシステムは向いていると思う。

各地を自由に行き来できるようになり、調合に必要な素材をすぐ採りに行けるようになってからが本番というか
そうなってようやく「ライザ」にハマれた実感がありました。ひょっとしたらクリア後のほうが楽しいかも?
しかし、今後はどんなに興味のあるタイトルでも、RPGに手を出すのはやめようと心に強く誓いました。
買っても全然進めない、積極的にプレイしなくなってしまうのがその理由です。ゲーム側ではなく自分のせい。
会話シーンやムービーシーンなど、黙って見ていることしかできない時間が本当にニガテで。
移動中や戦闘中にストーリーが進んでくれたらどれほどよいか…そういうゲームもなかにはありそうですけどね。
ストーリーを摂取しすぎて飽和状態にあるのは間違いないと思います。具体的にいえばアニメ見すぎ。
今夏はこれまで以上に厳しくなりそうだからなぁ…意識的に摂取する量を制限していかないとダメですね。