「The Crew 2」をオススメしない10の理由
昨年9月に購入した「The Crew 2」を年の瀬から再開。成人の日にかけて、最終イベントまでプレイしました。
実績も全34種類中、オンライン関係の3つを除く31種類を解除。ほぼクリアと言っていい状態です。
いつもならここからレビューを書くところなのですが、本作はちょっと…問題がありまして。
ゲームのレビューを書くときは通常、良いところと悪いところをできるだけ均等に書くよう努めています。
しかし、「The Crew 2」に関してはそれが難しいと判断。このようなまとめ方になってしまいました。
あまり良いおこないではないと承知のうえで、初めてのレースゲームに「The Crew 2」を選んでしまった人が
レースゲームというジャンル全体を誤解してしまう可能性もあるので、あえて書かねばと思ったわけです。
以下に挙げる10の理由は、逆さにすれば『優れたレースゲームの条件』と読むこともできます。
それができてるタイトルが既にあったにも関わらず、後発である「The Crew 2」がまるでできていないことが
大きな問題であり、いかに出来の悪いレースゲームだったかを理解してもらえるはずです。
①起動から遊べるようになるまでの手順が多い
ゲーム機のホーム画面から起動、メーカーロゴがいくつか表示されてタイトル画面に切り替わるまでがまず長く
『START YOUR STORY』という気取った表現(ようするにPRESS ANY BUTTON)が見えたらボタンを押すと
ふたたび読み込みを挿んだあとメニューが表示され、ようやくコンティニューできる。
…かと思いきや、ここからさらにハブ画面が表示されるまで待たされ、ハブから全体マップ表示まで待たされる。
実際に走れるようになるまで最低でも4回ボタンを押さねばならず、全体で5分は待たされる。
なのに、10分ほど操作がないだけで強制的にタイトル画面まで戻される。
これはオンラインサーバに常時接続している都合だが「だから受け入れなければいけない」とも言えない仕様だ。
コンシューマー版はまだいいほうで、PC版は毎回起動時にUbisoftの独自アカウントのログインも要求される。
②序盤の誘導が甘い
チュートリアルがないわけではないのだが、終わってすぐに全体マップ画面に放り出されてしまう。
最初にどのカテゴリーのレースを選び、どういった感じでゲームを進めていくのか。次に何をすればいいのか。
まったく指示がないまま「あとはプレイヤーの自由にしてください」と言わんばかりの奔放ぶり。
よく言えば自由度が高い。しかし、初めてレースゲームをプレイする人を想定していない雰囲気がある。
クルマの強化パーツは3位以内でフィニッシュするか、規定時間内にゴールすることで報酬として得られる。
勝てないプレイヤーは強化できず、強化できないから勝てない。『負のループ』から抜け出せない。
レースイベントには難易度選択があるが標準のノーマルが最低。勝てないプレイヤーは本作の"対象外"である。
ちなみに本作の全体マップ画面には任意の路上に瞬間移動する機能(いわゆるファストトラベル)がない。
最寄りのレースイベントまで移動したのち、そこから自力で移動しなければならない。
フォトイベントなどで特定の観光地に向かう際、近隣にレースイベントがない場合は結構な手間がかかる。
また、前回ゲーム終了した地点からの再開ができない。毎回マイアミの自宅から再開させられる。
③メニュー画面が使いづらいし重い
たとえばフリー走行中にステアリング感度を調整したいとき、設定画面に移動するまでの手順が多すぎる。
ハブ画面の切り替えをおこなうたび、いちいち読み込みが挿まり非常にレスポンスが悪い。
普段使うことのない項目に画面の大部分を占有されているハブも多く、インターフェースにかなりの難がある。
操作設定の各項目にはゲージのプラスとマイナスしか表記されておらず、その項目を調整すると何が変わるのか
実際に走ってみるまでわからないし、走ってみても実感が得られない場合がある。
④ステアリングの感度を最低値まで下げても過敏
まっすぐ走るのが難しい。見えてる障害物を避けるのが難しく、吸い寄せられるようにぶつかってしまう。
最初は自分の操作が何か間違ってるのではないかと思ったが、どうやら基本的にオーバーステア気味らしいのだ。
ハンドル角を1度くらい回したつもりが、クルマは10度かそれ以上に向きを変えている。
低速走行時はオーバーステアがさらに顕著になり、修正しようとカウンターステアを当てると180度向き直る。
コースアウトしたあと、コースに戻ろうとして意味不明な連続Uターンをさせられる場面が何度もあった。
ストリートレースという一番馴染みのありそうなカテゴリーでもステアリングが過敏で難易度を底上げしている。
感度を最低値まで下げてようやく他のレースゲームの標準値に近付くが、それでもなおクセがある。
ジャンプ台で跳んだあと、着地の際にランダムで左右どちらかに勝手にステアリングを切ってしまう場合がある。
なのでたとえ圧勝していても、なんでもない直線でも油断してはならない。
ツーリングカーやハイパーカーなど、ハイエンドなカテゴリーに近付くほど挙動が落ち着いていく傾向がある。
一般的なレースゲームではパーツを上位のものに交換するとレスポンスが向上するが、本作では数値しか伸びず
特にオフロードで露骨なぐにゃぐにゃの足回りはずっとぐにゃぐにゃのままである。
改善したい場合は強化パーツ選択の画面の下に表示されている指示に従い、『プロ設定』を確認してみよう。
[トラクションコントロール]と[ドリフトアシスト]の値を最大値にするだけでだいぶストレスは軽くなる。
ジェットスプリントでは[トリムタブ]を最大値にするとかなり操舵しやすくなる。
⑤HQまで行かないとクルマを買えない
ハブのカタログ画面から全車種を閲覧できるが、クルマを選択すると各HQに強制的に移動させられる。
本作でクルマを買うときはだいたいカテゴリー別で性能比較することになるので、そのほうがいいとも言えるが
実際に比較できるのは金額くらいで、駆動形式やエンジンレイアウトなどの記載がない。
カテゴリー内で車種の当たりハズレが若干あり、誤って買ってしまっても売却することはできない。
結果、攻略情報を調べて評判の良いクルマを買うしかなくなる。いろんな車種を試す楽しみはまったくない。
⑥マトモに機能していないナビゲーション
垂直に立つ山に向かって「直進せよ」と指示してくるなど、ナビゲーションの誘導がひどい。
また、ナビゲーションのラインが地面ではなく宙に浮いているため、どこで曲がればいいのかわかりにくい。
レース中コース脇に配置される矢印が描かれた看板も、左右どちらを指しているのか遠くからでは見分けにくく
ラリーレイドにおいてはその看板すら見当たらず、次のチェックポイントの位置しかわからない場面も。
そうなると頼れるのは画面右下のミニマップのみになるが、これもレース内容によっては非常に見づらい。
レースの進捗はパーセント表記に統一されており、周回タイプのレースでは全体の何周目なのか確認できない。
⑦レース前後の手順が多い
全体マップ画面などからイベントの一覧を見たとき、レース内容がわかりにくい。というよりわからない。
レースイベントのゲートをくぐって説明を受けたあと、ものによっては開始地点まで自力で走らないといけない。
レースの前後に流れるトランジション、時間帯の変化する場合はその変化を戻す演出がいちいち挿まる。
ライブ・エクストリームシリーズのイントロはなぜかスキップできない。
レースの報酬である強化パーツは画面外に落ちることもあり、探して自分で拾いに行かなければならない。
拾い忘れた場合はHQのメールボックスまで取りに行かねばならず、さらに手間が増える。
⑧走っていて全然気持ちよくないコースレイアウト
本作の一番の難点はこれ。レースイベントの総数は多いが、ふたたび走りたくなるコースはないと言っていい。
オープンワールドありきのコースレイアウトであり、走行の障害になるものが無数に配置されている。
個人的に特に印象に残っているのがマイアミ付近にあるツーリングカーのイベント「Year of the Tiger」。
ライブ・エクストリームシリーズは全体的にひどいが、なかでも5戦目は突出した苦痛を提供してくれる。
破壊可能なオブジェクトと破壊不可能な障害物の見分けがつきにくく、特に森林でストレスを抱えることになる。
そういった破壊不可能な障害物が次のチェックポイントまでの走行ラインをふさいでいることも多い。
「このレイアウトだと高確率でスタックするよね?」とダメ出しできる人間が上層部にいなかったのが致命的。
チェックポイントのゲートも破壊可能な場合とそうでない場合があり、統一感に欠けている。視認性も悪い。
レース中も時間経過で明るさや天候が変化していくが、これらの変化はリトライ時にリセットされない。
そのため(おそらく制作側が想定しているよりも)暗すぎたり霧がかかっていたりと、何も見えない状況のまま
プレイヤーだけが不利なレースを繰り返すことになる。任意の時間帯に変更する機能もない。
ハイパーカーなどの一部のレースがバカみたいに長い。本作を締めくくる最後のイベントでもないのに。
およそレースを想定して設計したとは思えないような、おおまかにチェックポイントを設定してあとは自動的に
ナビゲーションでつないだだけみたいな雑な作りのレイアウトばかり。
フレンド同士のツーリングで走るのなら許せる内容。勝利条件のあるレースでこれはやってられない。
⑨氷の上を走らされているみたいなドリフトの挙動
ドリフトが好きでレースゲームをプレイしている人にとっては一番のガッカリポイントかもしれない。
グリップ力がないタイヤをひたすら空転させて、ストレートでも後輪を振りながら直ドリ状態を維持し続けると
高得点につながる、すなわちわざとらしいドリフトが『良いドリフト』と評価されるタイプのゲームである。
先述のステアリング感度の問題もあり、楽しめるセッティングを見つけるまでが大変。見つかれば楽しいか。
ドリフトとは別に、路面が凍結したサーキットで走るイベントもあり、そちらのほうがドリフト感がある。
古いたとえになってしまうが、「セガラリー2」の雪のステージに近い感覚を楽しめる。
⑩不審な動きを見せるCPU車
基本的にCPU有利に設計されているゲームであり、高速区間の速度で勝つしかない。
プレイヤーがきっちり減速しないと曲がれないカーブを、CPU車は挙動の変化もなくスイスイ通り抜けていく。
かと思えば、「ちょっと前に出過ぎました」と言わんばかりに目の前で謎の減速をするときもある。
最終イベントでライバルが何もないストレートで完全停止しているのに気付いたときはさすがに唖然とした。
CPU車は非紳士的であり、道幅の広いクローズドサーキットであってもぶつけることを躊躇しない。
CPU車と一緒に走らずに済むタイムトライアルやエアレースはすこぶる快適だが、全体の割合でいえば少ない。
複数のカテゴリーを乗り換えつつ走る特殊なレースイベントでは、それまでどんなに距離を離していたとしても
乗り換えの演出中にCPU車との差が変化する場合があり、うかうかしていられない。
また、乗り換え直後に確定で音が消失する。音で走行状況を確認しているプレイヤーには大きなハンデになる。
チェックポイントのゲートはCPU車に対してはかなり甘く、ゲートの外を通過してもお咎めなし。
ボートレースのジャンプ台は減速を招くらしく、よく見るとCPU車はジャンプ台をきっちり避けて航行している。
「The Crew 2」に良いところはまったくないのか?と言われれば、決してそんなことはなく。
広大な北米を幅広い車種で自由に走れるオープンワールドレーシングは唯一無二の存在で、走りがいはあります。
DLCなしで二輪車にも乗れるし。エアレースも他で遊べるタイトルを知らないので個人的には楽しかったです。
ただ、そうした良いところにも少なからず不満を覚える部分があるので褒めにくいんですよね。
132円というこれ以上は下げられないほどのセール価格で購入し、これほどの長文で不満を書けるわけですから
定価で買った方々の心中察して余りあるって話なんですよ…スタジオひとつ畳んでも足りないレベル。
最後に、ライブ・エクストリームシリーズの5戦目の有効な攻略方法をちょっと書いておきます。
性能値が最大になるよう強化パーツを装備して挑みがちですが、数値を上げても期待したほど有利にならないし
上げたぶん速度が上がってミスしやすくなります。なので、無改造で挑むのもひとつの手です。
ちなみに自分が勝ったとき乗っていたのは無改造のPagani Zonda Fでした。
ハイパーカー以降のアルファグランプリとジェットスプリントは性能値が最高になるまで改造してあります。
あと、ハイパーカーのパートで序盤に出てくる連続ヘアピンの部分は大幅にショートカットが可能です。
チェックポイントがざっくりとしか配置されていないので、うまくまたげば後続と5秒は差がつくはずです。