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2022年9月 5日 (月)

ゲームレビュー 「MotoGP 21」

Motogp21ss04

[プラットフォームと購入方法]
Xbox One版をセール期間中に1,150円で購入。
なお、Xbox One版とXbox Series X|S版が別々に販売されているので購入時に注意が必要である。

[クリアまでにかかった時間]
本作はレーシングゲームであり、明確な終わりがない。なので参考までにキャリアモードに要する時間を掲載。

グランプリはフリープラクティス(FP)と予選(Q1・Q2)、ウォームアップと決勝で構成されている。
それぞれ参加するかどうかは任意で選ぶことができるので、小さな構成でグランプリをこなすことも可能。
たとえば『FP3のみ参加、最速タイムで通過して直接Q2、ウォームアップを飛ばして決勝』など。
また、各段階ではじゅうぶんなラップタイムが出たらスキップして次のセッションへ進むこともできる。
このような時間短縮を駆使すれば、ひとつのグランプリを30分程度で消化するのも難しくはない。

キャリアモードは1シーズン20レースほどで構成されているので、全クラス優勝まで単純計算なら30時間程度。
チームのマネジメントや開発の作業が挟まるのを考慮すると全体で40時間くらいになるだろうか。
ただし自主的に練習をおこなうなどする場合はこの限りではない。むしろそこが一番時間がかかりそう。

ちなみに筆者の場合、キャリアモードの3年目の前半で100時間を突破(Xboxのプロフィールの累計で確認)。


Motogp21ss05

[ゲーム難易度]
初心者向けに各種アシストは用意されているが、どの項目で何が変化するかを学ぶところから始める必要がある。
専門用語なども含め、ある程度『わかっている人向け』なゲームと思ったほうがいい。

同じ二輪の「TT Isle of Man」や「RiMS Racing」とくらべれば丁寧かつ親切に作られている印象はあるのだが
四輪のレーシングゲームに慣れていても最初は難しく感じるはず。二輪独特のライン取りをつかむまでが壁。
最初の数時間はチュートリアルと割り切って、クイックモードでの練習をオススメする。

対COM戦ではCOMのマシンに出力制限をかけて難易度を調整する仕組み。最大で20%の出力ダウンとなる。
違いが見た目にわかりにくいが、最高速度の低下がストレートでは顕著。1周あたり3秒以上の差がつく。
操作やライン取りに慣れたあとなら最低難易度で圧勝するのは容易。
天候や路面状況、サーキットによってオートブレーキの出来の良し悪しはあるが、大きな苦戦はないはず。

[実績・トロフィー難易度]
全50項目のうち、各サーキットでの勝利実績が半分を占めている。これらはクイックレースでも解除可能。
難易度別のクリア実績のようなものはないが各クラスの優勝実績あり。マルチプレイ実績はふたつのみ。
ジュニアチーム関連の実績がもっとも時間がかかると思われる。


Motogp21ss06

[良いところ]
・2021年に参戦した各チームやマシン、ライダーなど5クラス分(MotoEやジュニア含む)を忠実に再現。
・2021年に開催予定だったすべてのサーキット、さらに現在カレンダーにないサーキットまで網羅。
・2021年の実際の公式映像で使われた画面レイアウトや順位表示、アイキャッチを再現。
・記号や図形を組み合わせてヘルメットやゼッケンを自由にデザインできる。オンラインで共有も可能。
・マシンへの不満を口頭でコースマネージャーに伝え、改善を図る画期的なシステム。
・フォトモードの実装。操作性はあまり良いとは言えないが、いわゆる『流し撮り』などを手軽に撮影できる。

[悪いところ]
・難しすぎるチュートリアル。すべてで合格できる腕があればたしかに困ることはないだろう。
・オートブレーキの信頼性が低い。直線での加速まで抑制され、オンオフで周回タイムに大きな差が生じる。
 (特にホールショットで実感しやすく、ポールポジションスタートでも1コーナーで5~6台に抜かれる)
・Moto3より上のクラスになるとオートブレーキでは減速が足りない場合があり、追加でブレーキが必要。
・監督業やマネージメントに徹する独立したモードがない。ライダーとの兼業は手に余るところがある。
・走行中、激しい処理落ちが起きるときがある(Xbox One版)

フレンドのログイン通知など、システム上の動作が影響して処理落ちが起きている模様。
Xbox One版として販売されてはいるが、完全な調整がおこなわれているわけではないことを留意すべき。
また、テクスチャの貼り遅れや低解像度のテクスチャのままゲームが進行する場面もしばしばある。


Motogp21ss07

[どちらとも言えない]
・初回起動時、最初にやらされるのがライダーのカスタマイズなのはちょっと困る。
・音声も含めて丁寧に日本語化されているが、レース前の天候や気温の表示まで翻訳したのは蛇足であった。
・マシンの再現度は非常に高いのに、それ以外のサーキットや人物の表現は前時代的。
・膝が着くほどマシンを傾斜させても意外と転倒しない。
・表示される走行ラインが最適なラインとは限らず、COM車がラインを無視して走る様子を頻繁に見かける。
・2021年に採用されたロングラップペナルティが再現されているが、手動で通過するのは至難の業。

[備考]
・2021年はMotoGP界の『生ける伝説』ことバレンティーノ・ロッシ現役最後のシーズンである。
・2021年にレース中の事故で亡くなったジェイソン・デュパスキエが収録されている最後の版でもある。
コロナ禍のスケジュールを再現している(予定どおり開催された場合のスケジュールも収録)。
・Moto2やMoto3のライダーまで顔写真を表示(翌年発売の「22」ではシルエット表示になっている)。


Motogp21ss08

[総括]
MotoGP(ロードレース世界選手権)は1949年に始まった伝統ある代表的なモータースポーツである。
ゲームのほうも意外と歴史が古く、最初にMotoGPを冠した作品が発売されたのは2000年の9月だったそうだ。
それからナンバリングが進み、開発元や販売元を幾度も変更し現在にいたっている。
現時点での最新作である「22」は、開発がMilestoneに移管した「13」から数えて10作目となる。

MotoGPという競技を追いかけるようになって、いつかはゲームのほうもプレイしなければと思っていたのだが
日本国内では販売されるプラットフォームの偏りなどもあって、なかなか手を出しにくいタイトルだった。
今回ようやくMotoGPファンの視点でMotoGPを冠したゲームのレビューをおこなう機会を得たわけである。

これまでもレーシングゲームはいくつもプレイしてきたが、バイクに乗れるゲームはそう多くはなかった。
というより、本格的な二輪のゲームに挑むのは今回が初めてと言ってよいだろう。


Motogp21ss09

始めた当日はその難しさに「これは大変なゲームを始めてしまったかもしれない…」と、若干の後悔を覚えたが
Moto3でいくつかレースをこなすうちに、どのあたりからマシンを傾ければコーナーのイン側に張り付けるかが
だんだんとわかってきて、各種アシストのオンオフを試す余裕も次第に生まれてきた。
すべてのアシストをオンにした状態では速度のロスが激しく、タイムが伸びないことを早々に理解できた。

タイヤひとつぶん走行ラインがズレるだけで大きなタイムロスになる、非常にシビアなゲームである。
プロのライダーはこんな道幅の狭いコースを時速2~300kmで走りながら微調整しているのか!と驚くしかない。

Forzaシリーズのようなビギナーフレンドリーなレーシングゲームに慣れると、本作はとても厳しく感じられる。
しかし、その難しさがおもしろい。正確なリズムで、正確な角度で。まるで音ゲーのような感覚だ。
気が付けば1時間以上も自分のゴーストを追いかけている。無心のなかで生まれる気持ちよさが最大の魅力だ。


Motogp21ss10

レーシングゲーム特有のストイックな魅力と、MotoGPの競技の再現性については太鼓判を押せる出来である。

だが、プレイヤーが介入することでMotoGPの魅力が損なわれてしまっている点は否めない。
先頭のライダーがゴールラインを通過するまで、結果がどうなるかわからないところがMotoGPの魅力なのだが
プレイヤーがライダーとして介入し、難易度を調節すると結果が思いどおりになってしまってつまらない。
かといって負けるのも楽しくない。ファンとしての自分とプレイヤーとしての自分が衝突、ジレンマが生じる。

このジレンマを払拭するには、どこかでゲームとして割り切る必要があるだろう。
運転を完全にCOM任せにできるモードでもあればよかったのだが、ジュニアチームの運営くらいしかないようだ。
ジュニアチームの解禁までがかなり長く、解禁したあともライダーとの兼業になってしまうのが不満である。

ジュニアチームの決勝は実際のMotoGP観戦にかなり近い。やはりこの緊張感こそMotoGPの醍醐味である。


[オススメ度]
MotoGPに強い関心があり、レーシングゲームが好きならオススメ。どちらかではなく両方であってほしい。
市販車は収録されていないゲームなので、市販車にしか興味がないなら他をあたるほうが賢明。

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