2023年 冬アニメ総括
■好評価作品
「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」
「REVENGER」
「HIGH CARD」
「テクノロイド オーバーマインド」
■ピックアップ作品
「冰剣の魔術師が世界を統べる」
「クールドジ男子」2クール後半
「虚構推理」2期(2クール目?)
「もういっぽん!」
■3月中に放送終了しなかった作品
「ヴィンランド・サガ」2期(2クール全24話)
「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(最終回)
「ノケモノたちの夜」(最終回)
「最強陰陽師の異世界転生記」(最終回)
※以上は延期などの影響ではなく、スケジュールどおりの放送
「UniteUp!」 4月中旬まで放送継続
「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。2」 4月中旬まで放送継続
「Nier: Automata Ver.1.1a」 第9話以降が未定
「久保さんは僕を許さない」 2023年4月からあらためて放送開始
「魔王学院の不適合者Ⅱ」 2023年7月からあらためて放送開始
「あやかしトライアングル」 2023年7月からあらためて放送開始
アニメの記事の『枕』としてコロナの話を書くのももう何度目だ?という感じですが、今期も予想どおり影響が
色濃く出てしまいまして、こちらで把握しているだけでも8作品が休止や延期を挿む事態となりました。
今期特に気になったのはアニプレックス関連の作品が軒並みダウンしたこと。
同社の看板枠とも言える土曜深夜の3作品がすべて休止という一大事に、あらためて危機感を抱きました。
ただ、それでも恐ろしい数の作品が放送されてるんですよね。個人の時間ではカバーし切れないくらいの本数が。
今期もがんばって結構な本数を見たし、膨大な量のメモが残りました(最終的に約34万文字)。
今後はメモの残し方を変えるべきではないかな?と思っています…もう少し軽めの方法を模索しようかと。
今期の個人的ベスト作品は「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん」です。
当初から物語の構造の巧みさに注目していた本作。その構造が最後まで活かされていた点を大いに評価したいし
原作が完結しているおかげか、1クール全12話できちんと話をまとめていたところもまた素晴らしく。
ストレスになるような不快要素がなく、最後までポジティブに試練に立ち向かう様子も好感につながりました。
唯一の難点は作画が最後まで安定しなかったこと。でも、評価するうえでは些細な問題と言えるでしょう。
アニメ化で実況解説が音声になり、彼らと一緒に応援しながら見ているような感覚を得られたことが視聴体験の
向上に大きく影響したのではないかと思っています。アニメで見ることの意義を感じる作品といいますか。
特に終盤、窮地のリーゼロッテに祈りの言葉が届くシーンは涙腺に来るものがありました。
最終回を見終えてひとつ気になったのは、久遠桐聖があのあとどのような生活を送ったか。
芸能人の人生に戻ったのか、憑依の影響が残ったか。遠藤や小林との交流が残り続けた可能性もあるのでは?
「REVENGER」は時代劇を好む自分が期待したものをしっかりと提供してくれる作品でした。
外連味たっぷりの見応えあるアクション、それとは対照的な憂いや苦悩、社会の裏側に落ち延びたひとりの侍の
はかなげな生き様を、ある種の美学をもって終幕まで描き切ってくれたことにうれしくなりました。
セリフのみで説明される派閥や利害関係でたまにわかりづらさを覚える場面はありました。
そういう設定面を完全に理解できていなくても、本作が伝えようとしたことはじゅうぶん伝わったのでは。
いわゆるアニメオタクにウケるタイプのアニメではありませんが、こういうのをほしがっていた人にはおそらく
満足してもらったうえで、さらに続編を期待させるくらいの内容にはじゅうぶんなっていたはずです。
時代劇への注目度ってそう低くはないと思うのですが、実写でやろうと思うとどうしてもオトナの問題が…ね。
そんな理由があるかはさておき、来期も和風テイストの作品がいくつかある様子。ポスト「鬼滅」の影響?
「HIGH CARD」は客観的に言えばベタの塊みたいな(笑)異能力バトルではあったと思います。
でも、いまの時代のラインナップからするとそのスタンダードさが逆に魅力に映ると個人的には感じていて。
なにより全編通じて痛快であること。オープニングからエンディングまで、最終回まで一貫した痛快さがあって
そのノリにうまく乗れるかどうかで評価が変わる、評価が上乗せされていく作品だと思いました。
適切な喩えかわかりませんけど、好きな読み切りマンガと出会ったときみたいな気分なんですよね。
他の人がなんと言おうと自分はこの作者がやりたいこととノリが好きだ!みたいな、共感にも似た感覚。
なので、あの最終回で完結してくれてもよかったとすら思ってます。もともと分割2クールの予定だったのかな?
序盤の溶鉱炉事件が衝撃的で、それからすっかり注目してしまった「テクノロイド オーバーマインド」。
アンドロイドやAI、その人格や権利にいたるまで、見た目の印象とは裏腹にしっかりとSFしている作品でした。
作品の背景に一貫して漂う寓話的・神話的な表現とか、表面的になぞっただけではない気配を感じるはず。
その上に建前としてアイドル的な要素をかぶせているだけみたいな(笑)そう思わせる本気度を感じる作品です。
SF好きとしては良い意味で裏切られた反面、本作をアイドルアニメの感覚で見ていた女性視聴者がいたとすれば
どのような感想を抱いたのかもちょっと気になるところ。アイドル的な描写はそう多くはなかったので。
また、本作の10年後の世界が描かれているというソシャゲがどんな内容になっているのかも気になります。
「冰剣の魔術師が世界を統べる」も好評価枠に入れていいくらい優れた作品だったと個人的には感じています。
決して冗談で言ってるわけではないことは、最後までしっかり見続けた人であれば理解してもらえるはず。
当初は「魔法科高校の劣等生」の忠実なクローンだなぁと思いつつ半笑いで見ていたことは否めません。
本作への評価が大きく変化したのはマギクス・シュヴァリエ開幕後、アルバートがアリアーヌに敗れたあたり。
そこから新人戦の決勝にいたるまで、『成長』が本作のテーマになっていることがよく伝わってきました。
いやホント…異世界森崎ぐらいにしか思ってなかった(笑)アルバートの成長劇は本作随一の名シーンですから。
安っぽい印象を与えかねないギャグシーンや終始安定しない作画など、表面的な要素で判断されてしまいがちな
作品ではありましたが、明確なテーマに沿ってストーリーが描かれる良いアニメだったと思います。
あと何気に演出面もカッコよかったりするんですよね。毎回のOP・EDのイントロの使い方とか。
『タイトルで内容をわかりやすく述べる作品ほど、後半に進むにしたがってタイトルの要素を失いがち』という
ジンクスみたいなものがあって、「クールドジ男子」もクールとドジがだいぶ消失しかけていた気がします。
それはさておき、三間と五十嵐の一連のエピソードには作品の枠を超えた完成度の高さを感じました。
運命の巡り合わせのおもしろさ。あと、第16話の傘のエピソードはコントとしての完成度の高さもありましたね。
その後の四季のエピソードも、ものづくりに関わる人が抱える悩みへの本作なりの解答が良くて。
一話あたりの尺が短いし、『男子しか出てこない作品』と言わずいろんな人に見てほしいアニメだと思いました。
今月中旬からは実写ドラマ版の放送も始まります。でもなぁ…アニメでイメージが固まってて見るの難しいかも。
「虚構推理」はそのタイトルに恥じることなく、ありもしないことに考えを巡らせる楽しさが今期も発揮されて
どのエピソードについても「よくもこんな話を思いつくなぁ…」と感心しながら見ていました。
特に遺産相続の話は事件の真相まで含めてホントによくできていて、ひとつの推理ドラマになりそうなほど。
「もういっぽん!」は放送枠に恵まれていたらもっと話題になった作品だったかもしれません。
本作を見ていると、もし自分の人生にも園田未知のような人物がいたら、どんな人生に変わっていただろう?と
しみじみ考えてしまいます。後悔しないために、太陽に引かれるように人生を踏み外していたかもしれない。
そんな感傷的なことを思ってしまうくらい園田は主人公としての魅力に満ち溢れているキャラでした。
また、勝ち負けよりも楽しさを重視する描き方を貫いていたこともスポーツものとしては珍しかったのでは。
原作はもっと先まで続いているそうで、しかもアニメより詳細に描かれている部分もあるとかで、既読者的には
「ハマれたなら原作を読め」とのこと。アニメで続きが描かれる日は来るのかな…?
2クール作品なので今回は軽く触れる程度にしておきますが、「ヴィンランド・サガ」は2期も非常に好印象。
農奴となったトルフィンの話がこんなにおもしろくなるとは見始めたころは思ってもいませんでした。
つらい場面も多いし、今後の展開を思うと不安にもなります。なんとかうまく…なんとかなりませんかね?
世間的にはどんな作品が盛り上がっていたのやら。今期は突出して話題になっていた作品がなかったような。
強いて言えば「お兄ちゃんはおしまい」ですか。個人的には全体の真ん中くらいに来る感じだったかな?
単なる性癖満載の作品(笑)ではなく、男性が抱える重圧、長男が抱える重圧から解放されたお話として見ると
ひょっとしたら現代社会に向けたメッセージ性のある作品なのではと思えたりもします。
男性として生まれた人が社会のなかで男性として楽しく生きていけるとは限らない。逆もまた然り。
いや…そんな高尚な話でもないのかな。単純に日常系アニメと見ていた人も少なからずいたでしょうし。
深く考えたい人は深く考えることもできるし、深く考えたくない人はただ愛でることもできる。なかなか万能だ?
寸感の時点では上位に挙げかけていた「転生王女と天才令嬢の魔法革命」はレイニの体内の魔石を解決するため
バンパイアという"ありもの"の設定を持ち込んだあたりから、自分のなかでの評価がガクッと落ちました。
決定打となったのは最終回の唐突なキス。まるで脈絡のない、強引なベッドシーンへの誘導。
百合という前提で見ていても、同性への愛情の表現がいきなり具体的にキスとして提示されたことの安っぽさが
どうにも受け入れられず、いっそ結婚式でも挙げてくれたほうがまだ納得できたと思っています。
それでも「転天」はまあまあの評価に。バンパイアの話が出てくるまでは間違いなく上位に位置していたので。
そのほかでは、「大雪海のカイナ」と「アルスの巨獣」にガッカリした人も多かったのでは。
「カイナ」のほうは弐瓶勉ファンが見たいものを見せてくれただけまだマシという評価もあるかもしれません。
「アルスの巨獣」の打ち切り最終回みたいな終わらせ方は近年珍しく、なんとかならなかったのかと…。
全体の構成の面では「カイナ」もあまり褒められたものではなかったと思います。特に『建設者』登場以降。
個人的な今期ワーストはほかにありますが、期待との落差という意味でこの2作品をまず書きたくなりますね。
さて…もう4月に踏み込んでいるので冬アニメの話はこのへんにしておきましょうか。
この期間に思ったこと、書きたいと思ってたことはまだまだあるのですが、長くなるので次の機会にします。
一応言っておきたい。掲載が4月にズレ込んだのは自分のせいじゃないですからね?
長らく追いかけてきた「魔道祖師」の地上波放送が堂々完結。大変満足させてもらいました。
完結したいまだからこそあらためて最初から見直したいという気持ちにもなりましたし、それなら原作を読んで
みるのも悪くないかな?と思っているのですが、いずれにしても結構な時間が必要な話ですからね…。
全体の長さ、シンプルではない物語の構造や人間関係のせいで、気軽にオススメはできない傑作。
でもおもしろさは確約できるし、アニメ作品としての出来がハンパじゃないので興味があればぜひ見てほしい。
ここまでざっと作品を挙げてきて、やはり自分は『男性が活躍する作品』が好きなんだと思いました。
誤解のないようちゃんと書くと、物語の中心から男性が排除されたり、悪役としてしか描かれない作品ではない
ごく自然に男女が登場し、それぞれの役をまっとうする作品であってほしいということ。
性別的な男女の役割の話ではなく、お芝居のうえで男性の活躍が奪われない作品であってほしいということ。
余談ですけど、「魔道祖師」に出てくる女性キャラは少ないながらみんな強くてカッコいいですからね。
とんでもない悪女もいるし、それに匹敵するぐらいの男性の悪役もいる。あえて言うまでもない自然な話です。
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