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2024年4月 1日 (月)

2024年 冬アニメ総括

■好評価作品
「ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する」
「百妖譜」
「ゆびさきと恋々」
「休日のわるものさん」

■ピックアップ作品
「悪役令嬢レベル99~私は裏ボスですが魔王ではありません~」
「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。」

■好評価継続作品
「薬屋のひとりごと」2クール後半
「僕の心のヤバイやつ」2期
「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 2nd」
「うる星やつら」分割4クール後半

■3月中に放送終了しなかった作品
「月が導く異世界道中 第二幕」2クール
「うる星やつら」後半2クール(全4クール)
「ダンジョン飯」2クール
「戦国妖狐 世直し姉妹編」最終回が持ち越し
「メタリックルージュ」最終回が持ち越し
「ぶっちぎり!?」最終回が持ち越し
「魔女と野獣」最終回が持ち越し

◇その他備考
・16年間も続いたYahoo!の電子番組表サービス「Yahoo!テレビ.Gガイド」が3月末日で終了
・昨年末まで放送されていた「絆のアリル」のVTuber活動『アリルズプロジェクト』が活動を終了


この3か月間はアニメ・マンガ業界にとっては大きな訃報が続いた、ちょっと重い時期だったと言えます。
とりわけ大きな話題となったのが故・芦原妃名子の「セクシー田中さん」に関する一連の事件
映像化するにあたっての原作の扱い、原作者の意向の尊重など、さまざまな意見が交わされました。

ひとつ言えるのは、「原作どおりにするのが正しい」のではなく「原作者の意向に沿うのが正しい」ということ。
原作者自身が改変を望む場合もあるし、『原作と異なる=悪』とは思わないでほしいのです。

アニメにせよ映画にせよ、原作から媒体が変化する都合で、多かれ少なかれ原作どおりにはいかなくなります。
一番影響するのは尺の問題。限られた時間のなかで何をどの順番で紹介するのがベストか。
ただ原作をなぞって、時間切れになったところで終わる。映像化ってそれではダメなんですよ。
原作の映像化であると同時に、一個の映像作品としての完成度の高さを目指すことも大事ですから。

原作を知らなくても楽しめる、それでいて原作の魅力が伝わる。あらためて考えると難しい仕事だと思います。
決められた尺のなかで、原作の魅力を損なわないようにエピソードの入れ替えやセリフの取捨選択をして。
連載中の作品であればどのシーンで、どんなセリフで終わるのが美しいか。検討すべきことは山ほどあるわけで。

原作者の意向を尊重したうえでよりよい映像化を、よりよい改変を模索していく。
なぜそうする必要があるのか、原作者を納得させるだけの理由があれば視聴者も納得できるのでは。


今期、原作から改変された点が話題になっていたのは「悪役令嬢レベル99」あたりでしょうか。
特に結末は大幅な改変が加えられていたそうで、原作のテイストが好きだった人にはガッカリかもしれませんが
この改変には納得という意見が多かったように思います。原作未読の自分は違和感なく見れました。
コミカライズのほうも原作サイドの了承を得て改変してるそうなので、その流れに乗った感じではないかと。

昨今のいわゆる『なろう系』は編集者の目を通さず作者自身がサイトに掲載するため、客観的な意見にあとから
気付くことも多いと思うんですよね。で、文庫化の際に変更や加筆なんてのもよくある話。
粗削りな初期段階のバージョンから洗練されていくことで、トゲトゲしい個性が失われる可能性はあります。

このへん難しいなぁ…どちらが良いとも言い難い。あとはもう「原作者の意向」次第かもしれません。
変わることに納得できているかどうか。その作品で伝えたかったことが残っているかどうか。作者のみぞ知る。


「僕の心のヤバイやつ」はシリーズ構成の希望で、最終回をあのシーンで終わらせたと聞きました。
物語が続く気配を最後に残すのではなく、アニメなりに物語の終着点を設定してそこまでの流れを美しく描く。
そのおかげか見終えたあとの気持ちよさ、余韻は今期随一でした。

逆に、ある脚本家がシリーズ構成を担当する複数の作品で残念な出来に終わる様子も見ました。
とにかく詰め込む。視聴者が理解できる限度を超え、演出に必要なゆとりまで奪ってしまう。終幕のキレも悪い。

いろいろな話を見聞きして、今後は原作付きアニメやその最終回の見方がちょっと変わりそうな気がしました。


さて…今期の好評価作品として挙げたものはどれも、いい話を書いてるなぁと感じたものです。
見ていて胸に響く出来事、あるいはセリフ、メッセージ性を感じるなどが大きな理由となっています。

だいたいは放送開始ごろの期待どおり。「最弱テイマー」は序盤を過ぎてから右肩上がりに評価を伸ばしました。
「わるものさん」は終盤の桜のエピソードで評価が割れそう。いい話ではあるんだけど脱線気味な印象があり。
あとは「ぽんのみち」がね…パロディ部分の印象をくつがえすくらい日常系の魅力を発揮していきまして。
あのパロディにも内輪の盛り上がりっぽさがあって良いと褒める人もいますが、いやぁ…どうかなぁ?

「結婚指輪物語」「魔都精兵のスレイブ」はサービスシーンだけの魅力に留まらず、結構マジメにおもしろく
描かれていて好感をもてました。「魔法少女にあこがれて」も同じ理由で挙げられると思います。

余談ですが、今期は「結婚指輪物語」を初めとして、指輪が象徴的に描かれる作品が妙に集まっていたような。
男性同士がお揃いの指輪をつける結末が描かれる「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」などは代表格。
単なる偶然だとは思いますが、にしても3月中は指輪をよく見たなという印象があります。

今回「うる星やつら」を挙げたのは、何気に結構いいエピソードが多いなぁと感じたので。
特にあたるの善性が見えるエピソードはいいですね。クズなエピソードとの落差は激しいですが…。

あと、見れば見るほど令和最新版の「うる星やつら」は絵のタッチが魅力的だなと思います。



恐ろしいことに今日からもう春アニメが始まってしまうんですよ…なので悠長なこと書いてるヒマないです。
書きたい欲があまり発揮されないまま書いたため、正直イマイチな内容だと思ってますし。


「テレビ番組はテレビ世代に向けたもの」という印象をこれまで抱いていましたが、放送されてるコンテンツは
既にネット世代のほうを向いていて
、特にアニメやドラマは「ネット配信で短期間にまとめて見るもの」として
作られる時代になっているのかもしれません。

つまり『1週間おき』という従来のブランクがなく、間髪おかずに続けて見ることを想定して作られている。
毎回の冒頭に前回のあらすじを挿入したり、それらしい説明ゼリフで思い出させたりする必要がなくなっている。
一気見する人にとってはそれでもよいのですが、テレビで見る人には従来どおり『1週間おき』なわけで。
最近妙に不親切でわかりづらい作品があるのはそのせいなのかな?と思ったりしています。

ただ、今期に関して言えばそれとは逆に、必要以上にあらすじや回想を盛りまくるアニメがあったもので…。
まあ業界全体が一気に変わることはなく、作品ごとに違いが出るのが普通でしょうか。

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