ゲームレビュー 「Jusant」
[プラットフォームと購入方法]
Steam版をセール期間中に2,117円で購入。
[クリアまでにかかった時間]
Steam上の表記で7.8時間。
本作は任意の地点でセーブができず、ゲーム再開は最後に通過した『見えないチェックポイント』からとなる。
(画面の右上にセーブ中のアイコンが表示されるので、チェックポイント通過の確認は可能)
この仕様を知らないでいると、前回中断した地点から大幅に戻されて再開する場合がある。
一度に短時間しかプレイできないなどの理由で中断が多いと、それだけクリアまでの時間も長くなってしまう。
[ゲーム難易度]
敵や戦闘といった要素が一切なく、難しいところといえば時間制限のある場面で操作が忙しくなる程度。
どこから上へ登れるのか、正しいルートはどれか見極める観察力も多少は求められる。
そのルートについても、ある程度はヒントが表示されるし追加でヒントを求めることもできる。
[実績・トロフィー難易度]
全21種類。半分はクリアまでの過程で解除される。一部特殊な動作に関わる実績が用意されている。
序盤に基本操作についてのヒントが表示されるが、実績に関わる一部の『相棒』の操作はヒントがない。
フレスコ画など、あきらかに何かが起こりそうな場所では『相棒』の反応を確認するクセをつけておこう。
収集系実績の進捗はクリア後にチャプターセレクトの画面から確認可能。
『相棒』からヒントを得られるのは第2章以降となるので、第1章の収集物は自力で見つけるしかない。
基本的には一本道だが、複数のルートがある場面(第1章最後の塔など)では収集物を見落としやすい。
特に各章のゴール付近は探索を終える前にゴールしてしまいがち。法螺貝を吹く前に探索は済ませておこう。
注意点として、ニューゲームを始めるとチャプターセレクトを利用できなくなってしまう問題が挙げられる。
進捗は引き継がれるが、できれば収集物の穴埋め中はニューゲームには触れないようにしよう。
[良いところ]
・現実どおりに三点支持を守り、ハーケンとロープで確保しながら登っていくクライミングアクション。
・かつて人が暮らしていた形跡に思いをはせる楽しさ。廃墟好きな人にもオススメできそう。
・効果音や環境音へのこだわり。プレイ環境周辺の騒音などに合わせて詳細なセッティングが可能。
[悪いところ]
・ストーリー性が希薄。主人公と『相棒』が何者か、何のために登るのか、理由付けがないまま始まる。
(道中で読める文献からある程度の推測はできるのだが、推測の域を超えるものではない)
・文献の位置や重要な場所を教えてくれるヒント機能はあるが、遠近感が乏しく正確な位置がわかりづらい。
[どちらとも言えない]
・ハシゴを登るときでも基本の三点支持を守らされる。安全第一。
・システムから想像しうる最高難易度に到達する前に終わってしまい、やや物足りなさを感じる。
・プレイ環境によっては影の表現が正常になされず、画面の印象がだいぶ変わってしまう(後述)
第5章の冒頭、フォグの表現がおかしくなって画面がホワイトアウトする場合があるが、ポーズで解決できる。
[寸評]
フランスのDON'T NODといえば「Life is Strange」のシリーズを真っ先に思い出す人が多いであろう。
「Jusant」は2023年に同社がリリースした、パズル的な要素を含んだアクションアドベンチャーゲームである。
本作をひとことで言い表すと、ひたすら壁を登って上を目指す。全編ほぼ移動のみで構成されている。
自分が過去にプレイしたゲームでたとえると、トゥームレイダー新生三部作の壁登りだけを切り出したみたいな
ある意味では理想的な潔さ、純粋に壁登りの魅力を楽しむことができるゲームとなっている。
本作ではタイトル画面の前にコントローラーでのプレイを推奨するメッセージが表示される。
コントローラーの左右のトリガーがそれぞれ右手と左手を担当し、どちらかの手で壁にしっかりと捕まったまま
アナログスティックで次の手掛かりに目を向け、空いた手を伸ばしてトリガーを押し込んでホールド。
いわゆる三点支持の動作が疑似的に再現されており、コントローラーが推奨される理由に納得ができる。
最大3箇所まで任意のポイントにハーケンを打ち込み命綱を確保する、セルフビレイがあるのも特徴のひとつ。
ときにはロープを長く伸ばしてスイングアクション。勢いをつけて壁を蹴り遠くの手掛かりをつかむ場面もある。
人間離れした握力と忍耐力には見えてしまうが、ひとつひとつの動作が"その気にさせてくれる"のだ。
「移動が楽しいゲームは最後まで楽しい」とはこのブログで繰り返しお伝えしてきたことである。
ただし、移動はあくまで手段であり目的ではない。ゲームにおいては目的を達成するのに必要な手段のひとつだ。
誰かに会いに行く、荷物を運ぶ、魔王を倒して囚われの姫を救う。その目的を達成するための手段が移動だ。
そう考えると、本作には手段だけがあって目的が見えず、どこか実験的な、不完全な印象を受けてしまう。
ゲームを開始していきなり砂漠にそびえ立つ巨大な塔を登らされる。理由も、主人公の名前もわからないまま。
本作には登場人物が1人と1匹しかおらず、彼らは言葉を交わさないのでセリフらしいセリフがない。
塔に残された手紙や手記がおもな情報源であり、そこから次第に『人がいなくなった理由』が見えてくる。
人々の暮らしの形跡をたどっていくうちに、この世界に起きたこと、誰かがなすべきことがわかっていく。
「目的が見えてくるまで手段を続ける」という、順番があべこべな状態であることに気付く。
旅とはえてしてそういうものかもしれない。歩いているうちに目標が定まる。人生にも重なるところがある。
すべてはプレイヤーの受け取り方次第。最後までわからないまま終わってしまう人もいるはずだ。
共通の体験を通して何を感じるか、プレイヤーに委ねられているゲームと言えるだろう。
だが、ただ登ることを楽しみに、登ること自体を目的にプレイしてしまってもまったく問題はない。
プレイヤーにできることがほぼ変わらないまま、難しくなっていく壁に応え続けるだけでも楽しいゲームだ。
[オススメ度]
・登山やロッククライミング、ボルダリングの要素があるゲームを探している人。
・「ナウシカ」や「ラピュタ」あたりのジブリ作品、「メイドインアビス」などの冒険物語が好きな人。
・「Journey(風ノ旅ビト)」などの世界観、雰囲気が好きな人。
以上の条件に当てはまる人であれば抵抗なくオススメできる。
ここしばらく『いつかプレイしようと思っていた心残りのゲーム』が続いていましたが、それがようやく終わり
いよいよ『最近発売した注目のタイトル』に着手し始めました。その1本目が今回の「Jusant」です。
発売日はなんと昨年の10月末。当ブログで扱うタイトルでこんなに若いゲームはなかなかありません(笑)
うちの無印Xbox Oneでは買うことすら許されなかった本作。Steamならとりあえず買うこと自体はできるので
あとは起動するかどうか、プレイに支障のないレベルで動いてくれるかが焦点でした。
本作はSteam Deckでの動作が保証されているので、画質設定を最低まで下げればなんとかなるのではないかと
期待しつつ、頭の一方では返金手続きを覚悟しつつ購入したところ、プレイ可能なレベルで動いてくれました。
解像度を1280×720、全画面表示、アンチエイリアスをTSRからAMD FSR 2.0に変えるとだいぶ快適に。
他は任意でいいと思いますが、エフェクト品質(煙などの描写)だけは高めにしておくことをオススメします。
(左の2枚はチャプターセレクト画面と最高品質の表示例、右の2枚は当方の環境の表示状態)
チャプターセレクトの画面と見比べて驚いたのですが、影の表現が全然違います…暗いところが暗くならない。
おそらく「Jusant」の影の表現がレイトレーシング技術ありきで作られているからだと思います。
なので、ハードウェア的に対応していない場合は設定をどう変更しても暗くならないままなのでしょう。
やはり推奨環境でプレイすべき…それでもPC版なら幅広い環境でプレイ可能であることを伝えたかったのです。
余談ですが、主人公の名前は一応設定されてるんですよね。スタッフロールに声優の役名として書かれています。
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