レースゲームの『線形誘導標』について考える
レースゲームでコース脇に設置されているこれ、『線形誘導標』という堅苦しい名前があるのだとか。
その図柄からシェブロン(山形紋)マーカーなどとも呼ばれるこの標示板。
現実のものと同様、ゲームごとに、あるいは国や地域によってさまざまな色の組み合わせのパターンがあります。
上の画像は「The Crew 2」のもの。特に変わったところのない、見慣れた『黄色い地に黒』のパターンです。
今回こんな記事を書こうと思ったきっかけは「The Crew 2」のこの『線形誘導標』が妙に見づらかったから。
上の画像くらいの距離であれば左右どちらを指しているかハッキリと見分けられます。
しかし、レース中になぜか左右を見間違えることが頻繁にあり、操作ミスの原因にもなっていました。
他のレースゲームではそんな経験をしたことは一切なく。なぜ「The Crew 2」では見間違えてしまうのか。
その理由がずっと気になっていたので、特に見間違えやすいレースを録画して検証してみました。
こちらはハイパーカーのカテゴリーにある『BRONX』というレースイベントの序盤のコーナー。
動画からの切り抜きなので画像が多少濁っていますが、むしろ走行中に見える景色に近い様子かもしれません。
2枚ずつ4セット配置されている『線形誘導標』。左右どちらを指しているのか、わかりにくくないですか?
拡大して見てみると、『線形誘導標』のあいだに背後の建物の窓がはさまってるのが確認できます。
そのせいで「≪ ≪」と見えるべきものが「>≪||>≪」みたいな判別しにくい状態に見えてしまうわけです。
このコーナーでもうひとつ気になるのがチェックポイントのゲートの配置。建物の陰に隠れてしまっています。
結構多いんですよね…「The Crew 2」のチェックポイントって、ブラインドになっていることが。
この『BRONX』だけでも8割近くのチェックポイントが建物の陰など、見えづらいところに配置されています。
一部のカテゴリーでは、チェックポイントのゲートと『線形誘導標』がまったく同じカラーリングの場合があり
どことどこのあいだを通り抜ければいいのか、遠くからでは判別できないことがあります。
同じ『BRONX』のすぐあとのコーナー。建物の窓以外にもドライバー名の表記などに邪魔され見えづらいです。
また、このコーナーでは路面のペイントも誤認させる原因になっていると思います。
どう見ても左に曲がるよう誘導されているのに実際は右コーナーで、しかも右のどこが開いてるのか見えない。
画面右下のミニマップで指示されていても、人間の心理的にはどうしたって躊躇してしまうのではないかと。
このコーナーに初見で突っ込んでいけるのってそれこそCPU車だけなのでは。
「The Crew 2」の『線形誘導標』の欠点のひとつとして、光の影響を受けやすいことが挙げられます。
日光があたる場所では黒いシェブロンの部分が薄くなり、地の黄色と同化した感じに見えてしまう。
日陰では周囲の建物と同様に影が生じるため背景に溶け込んで目立ちにくい。標示板としては致命的な欠陥です。
夜間は『線形誘導標』自体が発光するので日中よりは見やすくなるのですが、別の問題が浮上してきまして…。
発光時は2枚セットの隙間の影が目立ち、シェブロンのあいだに黒い縦棒があるように見えてしまうのです。
背後の建物の窓がはさまっている状況と同様、遠距離から見た際に左右を誤認させてしまう可能性があります。
そして発光時のもうひとつの問題が高速走行中の視認性の悪さ。
発光している黄色い地の部分が膨張して、肝心の黒いシェブロンが沈んで見えづらくなってしまっています。
気を利かせて発光させてはいるものの、その先の問題までは考慮していなかったのでしょう。
ホバークラフトなど一部のカテゴリーのレースイベントではシェブロンの部分が発光するタイプも登場します。
黄色い地でシェブロンも黄色く発光させるのはどうかと思いますが、地が発光するよりは見やすいですね。
レース中に配置される『線形誘導標』とは別に、常設されている『線形誘導標』も存在します。
正方形の標示板2枚を90度の角度でつなぎ合わせてあり、対向車からは矢印の向きが変わって見える仕組みです。
こちらの常設タイプの『線形誘導標』は現実の道路標識のようにヘッドライトを反射する仕様になっています。
2枚ずつ配置されているレース中の『線形誘導標』よりもはるかに見やすい気がするのですが…?

ここで他のレースゲームの『線形誘導標』も見てみましょう。こちらは「Forza Horizon 3」のもの。
黄色と黒の配色が反転しているだけでなく、よく見るとシェブロンの中に無数の光点が配置されています。
前述の常設タイプと同様にヘッドライトを反射する効果もあり、時間帯や天候を問わず見やすくなっています。
夜間の様子がこちら。まるでユーザーインターフェースとして表示されているみたいに浮き上がって見えます。
個人的には「The Crew 2」の『黄色い地に黒』よりも、『黒地に黄色』のほうが見やすいと思います。
背景にどんな建物があっても、時間帯や天候が変わってもシェブロンが見えやすく、左右を見間違えにくい。
そしてシェブロン自体が発光することで目に留まりやすく視認性が高い。言うことなしですね。
余談ですが…Forza Horizonシリーズのグラフィックはやっぱ飛び抜けてキレイですよ。
主役のクルマはもちろんのこと、こういった標示板の類まで高水準で設計されているのがよくわかります。
こちらは「Need for Speed: Heat」のもの。配色は「FH3」に似ていますが、さらにピンクも足されています。
しかもこの『線形誘導標』、進行方向に向かってアニメーションするという凝った作り。
上空にコーナーまでの距離と向きが表示されているのもわかりやすくていいですね。
「NFS: Heat」のさらにすごいところは、夜間の非合法レースでは『線形誘導標』の代わりにガードレール状の
光線がネオンサインのように発光・アニメーションすることでコーナーを見やすくしている点。
非合法レースに『線形誘導標』が配置されてるのはおかしい。ならデザインごと変えてしまおう。
作る側としては結構な手間なはずですが、世界観の表現のためあえて挑戦しているところが素晴らしいです。
先に発売されている他社のレースゲームを参考に、さらに一歩進んだことをやろうという姿勢が窺えます。
(「Need for Speed: Heat」にも90度の角度で組み合わされた常設タイプのものが登場します)
じつのところ、こうして比較してみるまでレースゲームの『線形誘導標』を気にしたことがありませんでした。
気にしたことがないというより気にならなかった。優れたデザインは不満がないから気にならないんですよね。
「The Crew 2」で実害を被って初めて気になるようになり、優れたデザインに気付くことができた。
ひとつ新しい視点をもつことができたので、「The Crew 2」には反面教師的に感謝してもいいかもしれません。
最後に、「The Crew 2」の画像を加工してどちらの配色のほうが見やすいか確認したものを貼っておきます。
やっぱり背景の影響を受けにくい『黒地に黄色』のほうが見やすいと思うのですが、どうでしょうか?
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