2025年 夏アニメ 完走した感想
■高評価作品
「ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される」
「薫る花は凛と咲く」
「光が死んだ夏」
■"好"評価作品
「雨と君と」
「フードコートで、また明日。」全6話
「ばっどがーる」
■高評価継続作品
「真・侍伝 YAIBA」2クール後半
「アークナイツ【焔燼曙明 RISE FROM EMBER】」3期
「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」4期後半
「TO BE HERO X」2クール後半
□高評価話題作
「瑠璃の宝石」
「Turkey!」
■9月中に放送終了しなかった作品
「サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと」最終回のみ10月に持ち越し
「ウィッチウォッチ」2クール後半(#14~25)世界バレー中継の影響で最終回のみ10月に持ち越し
「渡くんの××が崩壊寸前」2クール
「ガチアクタ」2クール
「ふたりソロキャンプ」2クール
「週刊ラノベアニメ」全20話とのこと、放送できなかった残りの8話はYouTubeで配信予定
◇その他備考
・今期は途中で総集編や再放送を挿む作品がいくつか見られた。確認できただけで5作品?
「水属性の魔法使い」が6週目にまったく関係のない映画「不思議の国でアリスと」の公開直前特番を放送。
ほかに放送できる枠がなかったとは思えないので、おそらく製作上の都合に合わせたのだろう。
・秋に放送予定だった以下の6作品がいずれも品質向上のため放送延期を発表。
「異世界マンチキン」「対ありでした。」「とんがり帽子のアトリエ」
「姫騎士は蛮族の嫁」「こめかみっ!ガールズ」「勇者刑に処す」
・KAI-YOU掲載のレポート記事、アニメの『ノイズ』『加害性』に端を発するネット上の議論沸騰(後述)
今期の最終結果は自分の精神状態、いま求めているものが如実に表れている感じがしますね。
心の平穏とハッピーエンドを求めている。せめてフィクションの世界ぐらいでは穏やかであってほしいという。
その傾向からはずれているのは「光が死んだ夏」くらいでしょうか。
「光が死んだ夏」は表面上は間違いなくホラーなんですけど、さまざまな顔をもつ複雑な作品です。
1クール終盤で出てきたのは居場所について。生まれ落ちた場所に自分の居場所があるとは限らない無情さ。
自分がいるせいで周囲に不幸をもたらすとしたら、居場所だと思えるからこそ守るために離れなければならない。
それが見ていてとても悲しくて、これをただホラーに分類してしまうのはもったいないとも思いました。
序盤で感じたほどもうBLさはない…とも言い切れないか。でも気にするほどではないんじゃないかな?
「ずたぼろ令嬢」は1クールで完結に加えてエピローグまでしっかり描いている、完成度の高い特筆すべき一本。
いわゆるシンデレラストーリーではあるんですけど、それだけで終わらない興味をもたせる部分もあり。
難しい話題のあいだをわちゃわちゃしたコメディでつないだりと、緩急をつけて描かれていたのもよかったです。
見終えてちょっと気になったのはマリーの両親がどのようにして出会い、結婚したか。
本作では悪役の立場にあるふたりなので、1クールでそこまで掘り下げない判断をしたのかもしれませんが。
あと…これは個人的な話、ハッピーエンドの作品を素直に喜んでいいのか?と、変な悩みが浮かんできたり。
創作の世界ぐらいは平和でいいではないか。でも、それはぬるま湯に浸かっているようなものでは?
幸せに終われた作品にみずから水を注すようなことを考えてしまう自分の頭がイヤだな…と、変な心理状態です。
「薫る花は凛と咲く」の結末を見終えたときも、似たようなことが頭に浮かんできていたんですよね。
凛太郎と薫子がうまく結ばれたとしても、千鳥と桔梗、二校の不仲は続くんだよなぁ…と思ってしまって。
本作はあくまでふたりの物語であって、友人たちを含めた6人の外側まで気にする必要はないのかもしれません。
これは薫子が美少女だから成立する話で、見ようによってはストーカー行為では?という話も無視します(笑)
備考欄で挙げた放送延期の話。これを聞いたとき、自分は「6本も減らせて助かる…」と思ってしまいました。
それだけ今期の本数過多が堪えていたのだろうと。見る数を意識的に減らしても減った感じがしませんでしたし。
アニメによる夏バテとでも言いましょうか。来期は『食欲の秋』とはいかなそうです。
以下短評。
・「雨と君と」
主人公が雨の日を好む理由。晴れた日には起きないであろう偶然をもたらすのが「雨と君と」なのかもしれない。
初回を見始めたときに感じた本作への好意が最後まで続く、付き合いやすいポエティックな作品だった。
ただ、視点が小説家である主人公の仕事に寄りすぎて、「君」という特異な存在のおもしろさには欠けていた。
・「ばっどがーる」
自分でも意外なほど、見ているうちにハマっていった作品。「フードコートで~」と近いポジションか。
カロリーが高いCloverWorksアワーのあとにやってくる安心感、清涼剤。絶妙な掛け合いを再現する声の演技。
ジャンプすることも含め(笑)きらら原作アニメに求められるものが詰め込まれた正統なきららアニメだと思う。
・「真・侍伝 YAIBA」
これ地上波で無料で見ていいヤツなの?と、そのクオリティに毎週圧倒され続けた。さすがはWIT STUDIO。
原作も旧アニメも通過しなかった「真」新規の自分でも満足できる。魅力をじゅうぶんに感じられた。
・「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」
長く続くシリーズだとどこかで中だるみしがちだが、本作はホントにずっとおもしろいからすごい。
おもしろくない期間がない。本物の傑作だと思う。今期終盤は誇張抜きで泣きながら展開を見守っていた。
・「TO BE HERO X」
客観的に言えば全然終わっていない、2クールかけた壮大な過去編が終わっただけなのだが満足度はかなり高い。
時系列をきちんと把握していた視聴者だけがわかる構成のうまさ。それだけに付き合う難しさもあった。
ひとつハッキリ言えるのは、本作のストーリー構造でキャラクター商売を狙うのは難しいだろうということ。
それでも"「ONE PIECE」しか見ない人"で固まっていた放送枠の空気を入れ替えた意義はあったと思いたい。
これには反論もあるかと思うが、「ONE PIECE」もだいぶ視聴層の高齢化が進んでいたのでは。
日曜の朝はやはり子供たちのための時間なので、他局の作品と競争するにはもう弱くなっているのかもしれない。
・「Turkey!」
当初は異色の組み合わせがどうなるかと思っていたが、終わってみればなかなか巧みに練られた作品だった。
二投目があるボウリングと二言はない武士の世界の対比。もともとそのテーマがあって書き始めたのだろうか。
タイムスリップによる過去改変を途中までは否定していたが、既に改変されてしまっている事実に気付いてから
改変をかなり好意的に解釈するほうに傾いていくところに賛否両論が残るかもしれない。
・「まったく最近の探偵ときたら」
本作で描かれる35歳男性像はちょっと見積もりがおかしい。55歳ぐらいの設定だったら納得して見られるか。
作者のなかにある探偵のイメージやギャグの古さがにじみ出ているというか…まあ、それはさておき。
本作を通じて強く言えるのは平野綾の価値。まだまだ第一線でヒロインをやれる声優であることがわかった。
しかし、放送中に出演声優の離婚を2件も出すことになってしまうとは。代償が大きすぎた。
・「CITY THE ANIMATION」
おそらく多くの視聴者が、半数ほどのエピソードを「意味がわからない」といった表情で見続けていただろう。
本作がやろうとしていたのは古典的な『意味のないギャグ漫画の様式』への回帰だったのかもしれない。
時代に合わないギャグを、ウケを狙いにいき過ぎてる感じのギャグを、京アニのパワーで全力でやろうとする。
ある種の芸術運動、ギャグのルネサンスとでも言えばいいか。まつりとえりだけはガチ。
・「傷だらけ聖女より報復をこめて」
放送局が限定された、アニメというよりモーションコミックに近い作品。しかも半端なところで終わっている。
本作を見てひとつ収穫だなと思ったのが、画面が整然とした図形ではなく、筆致のわかる絵だったこと。
作者が引いた勢いある線がそのままに動いていて、ある意味では一般的なアニメより魅力的に感じられた。
推しむらくはやはりキリの悪さ。タイトルにある「報復」が描かれるところまでは見たかった。
・「ハイガクラ」
2024年秋の作品だったが7話放送後に中断、今夏あらためて仕切り直しとなった。
初回放送時にわかりにくかった部分にモノローグや字幕を追加、電子番組表に毎回のあらすじやキャスト一覧を
きちんと掲載するなど配慮があり、総合的には今期の平均よりちょっと上に来るぐらいの内容だったのでは。
ただ、それにしても本作独特の設定や劇中における物事の価値は、初見の人にはわかりづらかったと思う。
それでも本作の「自分自身が何者で、何のために存在しているかを探る」というテーマは伝わってきた。
・「帝乃三姉妹は案外、チョロい。」
P.A.WORKS制作のサンデー原作ラブコメということで、非常にマジメで堅実な作りだったことは好感なのだが
マジメゆえにちょっと目立たないところがあるというか。長所が短所にもなりうる作品と言える。
近年ヒットしているラブコメにはどこか賛否両論ありそうな変なところがあり、それが個性にもなっているので
そういったライバルたちと競り合うには物足りなさを感じてしまう。でもマジメなのは悪いことじゃないっス。
・「うたごえはミルフィーユ」
文芸面では評価できる作品。しかし肝心の歌唱シーンに華がないことと、やれる回数が響いてしまったか。
たしかにアカペラ部の部員たちの会話は楽しいが抑揚には欠ける。題材がアカペラであるからこそできる何かを
本作を見ていて感じ取ることができなかった。アカペラというジャンルの評価にも影響しかねない部分だ。
個人的には3~4話の流れが本作の特筆すべき部分だったと思う。それとミルフィーユという言葉の解釈も。
本作は舞台劇として、歌唱まで含めて生で観客に見せるぐらいのほうが効果的だったかもしれない。
・「追放者食堂へようこそ!」
本作を見終えて、アニメの原作をイラストレーターで選ぶのはやめたほうがいいと、あらためて思った。
本当にどうしようもない原作でも人気のあるイラストレーターがつけば売れるし、アニメ化までいけてしまう。
いわゆる『なろう』原作に当たりハズレが大きい原因はそこにあるのではないか?と、考えるきっかけになった。
その部分に限って言えば、得るものがあった作品と言えるだろう。炒飯を見るたび思い出す教訓となった。
さて…炎上期を過ぎたので触れるのもいまさら感はあるのですが、KAI-YOUの記事への私見を述べておきます。
炎上の概要をざっと説明しておくと、アニメイベントに出演した吉田恵里香氏のトークショーのレポート記事で
見出しに『ノイズ』や『加害性』といった強めのワードが使われていたことが発端。
ここで言われる『ノイズ』の具体例は、吉田氏が脚本を担当した「ぼっち・ざ・ろっく!」のワンシーン。
わざと風邪を引こうとして水風呂にはいる際、全裸はいかがなものかと水着着用を進言したとのこと。
テンプレ化した不必要なサービスシーンをなくすことで、より広くリーチさせたいという意向の話だったはずが
アニメにおける性的搾取などの『加害性』にすり替えられてしまった…というようなお話。
(『加害性』というワードは吉田氏の発言にはなく、KAI-YOU側が編集の際に加えたもの)
吉田氏の言う建前の部分はわかるんですよ。これ、ゲームに置き換えるとわかりやすい話で。
Z指定になると広告掲出も販路の拡大も難しくなってしまう。確実に商業的成功を収めたいから表現を変える。
パブリッシャーがZ指定を避けたがる理由と同じなんですよね。そう言ってくれれば誤解は避けられたはず。
しかし視聴者のなかには「なぜ自宅の風呂場なのに水着?」と、別の意味で引っ掛かりを覚えた人もいて。
たしかに、わざと風邪を引く目的ならもっと自然な、別の方法に変えることも可能だったはずです。
ゲームにたとえるなら「ゴア表現を避けるために血液を緑色にしました」って言ってるようなもの。
いっそ流血表現自体をなくしてしまえばよかったのに、なぜ余計に引っ掛かる表現に差し替えてしまったのか。
性的描写にうるさい人の指摘を避けるつもりなら水着以外の表現があっただろうと個人的には思います。
制作段階であきらかにまずいと思ったものを避けるのは道理。ただ、配慮のしすぎもよくありません。
放送や配信の際、あるいは国境を越えるタイミングで適切なレーティングやゾーニングを受けるものですから。
少なくとも脚本家の一存で、他人の創作物でやるべきことではない。決定権をもっていないはずです。
それとも吉田氏は相当な意見力をもっているのでしょうか。"覇権"請負人みたいな?
本件の一番の問題は『ノイズ』云々ではなく、吉田氏のブランディングに作品を利用されていることなのでは。
商業的に成功した作品に後出しジャンケンで、あたかも個人の功績であるかのように付け加えて。
このトークショーもレポート記事も、吉田氏のブランディングのために用意されたと受け取ってしまいそうです。
個人的に、顔を出したがる制作者って信用できないんですよね。作品より自我を主張するタイプといいますか。
でも、結果として今回の炎上がネガティブなブランディングとなってしまったのは間違いないでしょうね。
今後吉田氏が携わる作品をバイアスなしで見るのはまず無理だと思います。本件を知ってる人に限った話ですが。
結局のところ、大衆はわかりやすい部分で評価するんですよ。かわいいかどうかとか、楽曲のキャッチーさとか。
書き手がどんなに高尚な理想を込めていたとしても、視聴者の9割は理解できないか、まず伝わりません。
ヒットした結果、グッズ展開で本編よりも過激な水着を着せられてるのは皮肉な話。
そもそも原作者本人がバニーガールの格好させてるくらいですからね…。
作品がもつ『加害性』の可能性の話をし出すと、たとえば「ずたぼろ令嬢」や「薫る花は凛と咲く」においても
女性は賢く、男性はそれに劣るものとして描写されていることに傷付く人がいてもおかしくないはずです。
異世界転生もので主人公以外の男性がバカな悪役を押し付けられる傾向も、本来なら指摘されるべき問題では?
まあ…99%の人は気付いても指摘まではしないですよ。無粋だから。作り話と理解して楽しんでいるから。
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